「農民」記事データベース20120514-1020-06

アメリカいいなりの
輸入規制緩和許さぬ

BSE対策見直し考えるシンポ開く

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TPP阻止で国民の健康守れ

 生活クラブ生協やパルシステム生協連、全国農業協同組合連合会などで構成している「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク」が、4月25日、東京都内で「BSE(牛海綿状脳症)対策の見直しを考えるシンポジウム」を開きました。

 日本政府は昨年12月、牛肉の輸入条件の緩和を含むBSE対策の見直しを食品安全委員会に唐突に諮問し、現在、同委員会で検討中です。

 異論続出

 シンポでは、食品安全委員会の委員で、前時事通信社解説委員の野村一正さんが、同委員会でのBSE対策の検討状況を講演。野村さんは「食品流通が国際化しリスクが高まる一方で、分析技術の向上で厳密に結果が出るようになり、厳密に危険性(リスク)をゼロにしようとすると食べられるものがなくなってしまう。リスクの有無ではなく、どの程度のリスクなら許容できるかという“リスク分析”が世界の潮流となっており、食品安全委員会もこのリスク分析の手法に則って審査している」と述べました。

 こうした日本の食品行政のあり方に対し、生協など消費者からは「BSEについては、まだ科学的にも未解明な部分も多く、予防原則(※)に基づいて対策を取るべき」「食品安全委員会の審査では、委員が直接アメリカの畜産の現状を調査することもせず、アメリカの出してきた報告書を一方的に信用するしかない仕組みになっている」などの異論が続出しました。

 アメリカのBSE対策の不十分さを指摘する声もパネルディスカッションでは相次ぎました。パルシステム生協連の原英二さんは、「(1)アメリカでは、全と畜牛の0・13%しかBSE検査していない。(2)日本では全月齢で除去されている頭部やせき髄、せき柱などの『特定危険部位』の除去についても、アメリカでは腸の一部しか除去していない。(3)BSEの感染源といわれている肉骨粉の給餌(じ)も、豚やニワトリには禁止されていない。しかも本当に牛に与えていないかという調査も抜き打ち検査ではなく、守っているという報告もきわめて疑わしい」などの問題点をあげました。

 平準化押し付け

 また原さんは、「TPPは食の安全でも世界に平準化を押し付けるもので、消費者として絶対に認められない。何でもかんでも“アメリカ言いなり”でいいのか。政治的圧力で食料政策をゆがめず、国民の健康を守ってほしい」と述べ、TPP参加阻止を訴えました。

 (※)予防原則=重大な結果や取り返しのつかない影響の恐れがある場合には、科学的に因果関係が十分証明されていなくても、規制などの予防措置をとるべき、との考え方。

(新聞「農民」2012.5.14付)
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2012年5月

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