「農民」記事データベース20120130-1006-02

たたかってこそ情勢打開
組織づくりでも大飛躍を
(2/2)

農民連が全国委員会開く

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 TPPは単なる「自由貿易」協定ではない

 「TPPのメリットを示せ」という要求に対し、政府は、10年間でGDP(国内総生産)が2・7兆円、年間わずか2700億円増えるにすぎないという試算を公表しました。日本のGDPは500兆円ですから、年収500万円の家計にたとえれば、わずか2700円の増収にすぎません。

 その一方で、食料自給率が13%に激減して日本農業が壊滅したり、国民皆医療保険制度を突き崩したり、食の安全の規制を緩和するなど、TPPは経済活動と国民生活の全般にわたって打撃を加え、国内市場をアメリカに明け渡して貧困と格差を極限にまで拡大するものです。

 そういう点でTPPは、単なる自由貿易協定ではなく、“壊国”“売国”“亡国”の協定と言わなければなりません。

 とりわけ被害が大きいのは農業・食糧

 日本は、これまでのFTA・EPAで、貿易品目約9000のうち940品目(うち農水産物では850品目)、およそ10%を関税撤廃・削減の例外としています。TPPは原則100%自由化ですが、仮に1%の例外を認めさせたとしても85品目ですから、米や小麦も守れません。「日本の農産物は高品質だから生き残れる」という気楽な議論もありますが、小麦粉や砂糖、でん粉にそれほどの品質差はありません。だからこそ、価格差を関税で守っているのであって、撤廃されれば、農水省の試算のように全滅してしまうでしょう。あるいはどれかが守れたとしても、畑作の輪作体系は崩壊してしまいます。

 また、新潟県知事のように「他の作物には気の毒だが、米だけは例外に」という議論がありますが、アメリカのロン・カーク通商代表は「アメリカは韓国にアメリカ産米を押し込むべく圧力をかけ続けている。TPPでは交渉参加国に『すべてをテーブルに出すこと』を要求している」と語っているように、「米例外」論は幻想にすぎません。

 アメリカのねらいは、すでに自給率が異常に低く、日本が輸入を増やす余地がほとんどない小麦や大豆ではなく、あくまで米であり、BSEで輸入が激減した牛肉です。

 国保・健保も瓦解のおそれ――
 アメリカ型「命の沙汰も金次第」

 米韓FTAの事例からみて、深刻なのは医療制度の自由化です。米韓FTA交渉では、経済自由区域で健康保険適用の例外を認め、営利病院を許可しました。すでに仁川(インチョン)にはアメリカ系の営利病院が建てられ、全室個室、健保医療費の6〜7倍の医療費になっています。

画像 アメリカには国民皆保険がなく、民間の保険会社が医療をコントロールしています。こういう状況の下、(表2)のように、日本では盲腸手術で1週間入院した場合、3割負担で8〜10万円かかりますが、アメリカでは1日入院で100〜240万円! 医療費が高くて入院できず、病院の隣にあるホテルに泊まって通院しているそうで、これがアメリカでは普通のことだそうです。

 日本をこのような「命の沙汰も金次第」の社会にしていいのでしょうか。

 空洞化対策はウソッパチ、
 空洞化をさらに進めるTPP

画像 「韓国に負けるな!」「TPPに入って空洞化を防ぐ」――菅前首相は、2010年10月、こういう財界の圧力に屈してTPP参加を言い出しました。しかし、(図1)からもわかるように、これは取って付けた言い訳であり、ウソッパチです。

 TPPに入れば、空洞化はもっと進みます。輸出を2倍に増やしたいアメリカはさらに円高を進め、ユーロ危機も円高をさらに進める要因になっています。

 加えてTPPは、日本大企業の海外進出をさらに促進するシステムを内蔵しています。つまり、ISD(外国投資家の提訴権)条項にもとづく投資規制の排除により、日本の多国籍企業の横暴を保障するものでもあります。

 たとえばタイでは、外国人を1人雇った場合にタイ人を4人雇えというルールがあって、タイに進出している日本企業にとって、このルールがじゃまでしょうがない、こういう規制を撤廃させるテコにTPPが使われる可能性があります。

 経団連は、昨年12月13日に発表した「アジア太平洋地域における経済統合の推進を求める」のなかで、露骨に規制の撤廃を要求しています。経団連の米倉弘昌会長は「海外で稼ぎ、国内に持ち込め」(産経新聞1月5日付)と言っていますが、これは空洞化促進の開き直りでしかありません。

(ISD条項とは、多国籍企業が期待した利益を得られなかった場合に、相手国がFTAに違反していなくても多国籍企業が国際機関に対してその国を提訴することができ、その国の主権と民主主義を侵害することを認めるものです)

 自由貿易信仰は「原発安全神話のTPP版」

 高まるTPP批判に対し、“既得権益を守りたい者が反対している”という非難や、なかには「国を開いて『内向き・下向き・後ろ向き』といわれる閉塞状況を打ち破らないと、この国に明日はない」(日本経済新聞、昨年11月8日付)などといって、TPPに参加しなければ日本が滅びるかのような異様な論説も目立っています。

 しかし、評論家の内橋克人氏は「TPP推進派に寄り添うメディア、学究者らに共通の錯覚」として「自由貿易信仰」をあげ、「原発安全神話のTPP版」と指弾しています。

 いまの「自由貿易」ルールは、多国籍企業の利益を保証するためのものにすぎません。現在、多国籍企業上位500社の売上高が世界総生産に占めるシェアは43%であり、多国籍企業の企業内貿易だけで3分の1を占め、企業内貿易と多国籍企業同士の貿易の合計は世界貿易の3分の2を占めています。

画像 日本はこの傾向がさらに顕著で、日本の大企業約1000社の海外子会社は2万を超えており、「海外事業活動基本調査」(経済産業省)によると、日本の大企業(製造業)の輸出額のうち、海外子会社向け輸出が70%前後になっており、アジアが日本企業の最大のもうけの場になっています(図2)。

 すでに「アジアの成長をとりこんでいる」といってもいい状態ですが、さらにTPP締結を求める財界・大企業のねらいは、親会社から海外子会社への輸出に課せられる関税をゼロにしろということです。

 いま、声高に叫ばれている「自由貿易」とは、多くの人々が素朴に信じている「自由貿易」ではなく、「多国籍企業の、多国籍企業による、多国籍企業のための自由貿易」であり、「鶏小屋の中のキツネの自由」にほかなりません。

 たたかいはこれからだ
 運動の到達点に確信をもって

 TPPに反対する運動は、農民連・食健連だけにとどまらず、広範な団体が取り組んでいます。こうした地域全体の運動の到達点をつかみ、農協や漁協、森林組合をはじめ、医師会や生協、商工会などを訪問・懇談し、さらに共同を広げることが求められています。地域に無数の「共闘会議」や「TPPに反対する会」をたちあげていきましょう。

 そして、たたかいの重要な柱は、学習と宣伝です。新聞「農民」やリーフレットなどを活用・普及し、学習大運動を展開しましょう。

 解散・総選挙をはらんだ情勢の下で、すべての地方議会で意見書を採択させ、地元選出の国会議員に働きかけましょう。

 そして、TPPにかかわる国の農民や国民、韓米FTAに反対する韓国のたたかいにも連帯して、たたかっていきましょう。

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(新聞「農民」2012.1.30付)
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2012年1月

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