支援牧草の運送代助成へ
農民連の申請 受理準備進む
関連/ゲルマニウム半導体検出器 今秋の導入にむけ準備
福島第一原発の事故により牧草や粗飼料を与えられなくなった畜産農家への支援として、国産粗飼料の運搬費用を助成する「国産粗飼料流通円滑化事業」の申請受け付けが始まり、農民連でも申請準備が進んでいます。
農民連はこれまで被災地への支援活動として、北海道から福島県内の酪農家に牧草を送る「救援牧草」に取り組んできましたが、その大きなネックとなっているのがトラック1台で20万円もする運搬費用でした。農民連は農水省への要請のたびに農民連の牧草支援の取り組みを紹介し、「運賃だけでも早急に助成してもらいたい。また農民連の牧草支援の取り組みなども助成対象と認めるべきだ」と、くりかえし要求してきました。
今回、こうした粘り強い運動がみのり、従来、交付金の交付団体となってきた農協などに加えて、「全国的規模の生産者団体」も事業実施者として認められることになり、農民連の牧草支援の運賃助成にも道が開かれることになりました。
ところが事業の実施が決定した後に、飼料用稲ワラと牛肉のセシウム汚染の問題が浮上。その緊急対策として、被災粗飼料への運搬費用の助成は国による負担はやめて利子補給にとどめるなど、後退した内容の対策に切り替えるという方針転換が行われました。その結果、農民連が強く要求してきた運搬費用の助成事業は、「事業の枠はあっても、予算は大幅削減」となり、事実上、申請を受け付けないという事態になろうとしていました。
しかしそこであきらめないのが農民連です。「放射能汚染の被害で、与えるべき牧草をすべて失った畜産農家にとって、北海道から送られた牧草は命綱にも等しい貴重なもので、運搬費用の助成は何としても実施するべきだ」と粘り強く要求し、この事業の申請受け付けが受理される見通しとなったのです。
福島の酪農家申請へ相談会農民連
こうした経緯を経て、8月29日に急きょ、福島県農民連の事務所に、北海道からの支援牧草を受け取った酪農家5人が集まり、相談会が行われました。そして「こうなったらまずは申請してみるというものだ。書類作成やら、添付書類やら、手続きが多少たいへんでも、申請しなければ始まらない」と決意を固めあいました。
|
北海道の鷲見悟さん(左)から福島県の佐々木健三さん(右)に届けられた救援牧草 |
支援牧草の受け取り農家で、農民連会長も務めた佐々木健三さんは、「農民連が結成されて22年。農民連が国の助成金の交付団体になるなど初めてのこと。もし本当に助成金交付の運びになったら、これは画期的なことだ」と語り、酪農家一同、期待に胸をふくらませています。
農民連食品分析センターでは、8月29日付の新聞「農民」(986号)で紹介したように、多くの方々の募金に支えられて「シンチレーション検出器」を導入し、放射性ヨウ素・セシウムの分析を開始しました。
米の収穫期を迎え、農民連会員をはじめ多くの方々から期待が寄せられています。
食品分析センターでは、さらに低濃度まで測定できる「ゲルマニウム半導体検出器」を今秋までには導入しようと、その準備を急ピッチで進めています。
(新聞「農民」2011.9.12付)
|