東電は早く賠償せよ!
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出荷制限の解除には、福島県の場合、(1)計画的避難区域と緊急時避難準備区域内の牛は全頭検査し、(出荷制限が解除された後は)暫定規制値を下回ったもののみ出荷できる、(2)それ以外の地域は農家ごとに1頭以上検査し、(解除後は)規制値を十分下回った農家のみ出荷を認める、という検査体制を県が整えていると認められなければなりません。
では、肝心の「検査体制」はどうなっているのか。――福島県の場合、出荷制限の解除条件として認められるゲルマニウム半導体検出器は、現在のところ、県内にはなんと4台しかありません。8月中に10台に増設される予定ですが、それでも1カ月720頭分の検査体制しかありません。福島県で1カ月に出荷される牛はおよそ1500頭。出荷制限が解除されても、毎月800頭近くの出荷が遅れ、肥育農家の牛舎につながれたままになる計算です。
「肥育農家は、出荷された牛が売れなければ、収入は途絶えたままだ。いつになったら出荷解除になるのか」と、高野さんの苦悩は深まっています。
しかしこの対策は「支援」という名の「貸し付け」にとどまっています。なぜなら「1頭あたり5万円」は牛の出荷時に、「出荷時の価格下落分」は東京電力から賠償金が出た時に、「返還」しなければならないことになっているからです。
高野さんは「この対策では、東電への賠償請求はあくまで農家自身がしなければならない。いつになったら東電は賠償金を払うのか。払われたとしても損害全額が支払われないのではないかと、不安でならない。本当に畜産を守るには、弱い立場の農家に賠償交渉をさせるのではなく、国が牛を正当な価格で買い上げ、その費用を東電に対して賠償請求すべきではないか」と言います。
「1頭あたり5万円」の実質的「貸し付け」も、見通しを明るくするには至りません。少なくとも交雑種(F1)は平均で54〜55万円、和牛なら80万円ほどで売れなければ、畜産農家は経営が維持できないからです。
国は、出荷適期を過ぎて価格の下がってしまった「出荷遅延牛」についてだけは「買い上げ」を言い出しました。今後、こうした対策がどのように実現されていくのか、しっかりと見守る必要があります。
[2011年8月]
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