農山村の再生可能エネルギーの宝庫(2/3)
全国代表者会議での和田武さんの講演(要旨)
デンマークは20%が風力発電
所有者の8割が地域住民
こうした政策の結果、デンマークでは現在、20%を風力でまかなっていますが、その風力発電機の所有者は、8割が地域住民です。デンマークは世界で最初に風力発電に取り組んだ国ですが、1960〜70年代の石油ショックを受けて、地域の住民たち、とくに農民たちの中に「かつて風力を使っていた国だから、風力を発電に使おう」という機運がもちあがり、農業機械のメーカーに風車の製作を依頼して、自分たちの風車を建てたことから始まりました。そして余った電力は電力網に接続して、“買い取れ”という要求を出し、運動した結果、こういう制度が可能になったのです。
ドイツでは、農村地域を中心に、地球温暖化防止、再生可能エネルギーの普及に積極的に取り組む地域が、国土の半分以上を占めています。ドイツにも、再生可能エネルギーの買い取り制度があり、水力、バイオマス、地熱、風力、太陽光など、どの取り組みをしても売電収入で必要経費がまかなえるよう、20年間の買い取りがそれぞれの価格で保障されています。法律で保障された制度なので、多額の初期投資も金融機関が貸してくれます。
この買い取り制度の導入によって、ドイツの再生可能エネルギー市場は大きく成長し、再生可能エネルギーの量は100万キロワットの原発10基分と同程度になり、去年1年間で、太陽光発電だけでも原発1基分以上を導入しています。(図(4))
ドイツは再生可能エネルギーが伸びて、CO2の排出量も大きく削減され、37万人の雇用の創出にもつながっています。よく「再生可能エネルギーのようなコストの高い発電は、経済を停滞させる」、「国民負担が増える」と言われますが、ドイツではそんな事態は起こっていません。むしろ健全に経済が発展しています。
地域住民が主体の普及こそ
新たな発展で農村が豊かに
再生可能エネルギーは、地域住民や市民が普及の主体になるべきです。日本では風力発電は、低周波や騒音など地域住民との間でトラブルになりやすい発電ですが、ドイツやデンマークではこういう問題は起こっていません。地域の住民が自ら企画し、自ら建設するので、自分たちの問題になるような建設はしないからです。
再生可能エネルギーの普及を促進するには、地域住民が参加する仕組みにするのが非常に重要で、地域住民が持つべきものを企業が持つのでは、普及を停滞させることにつながりかねません。
市民が主体の再生可能エネルギーは、地域を破壊せず、豊かにします。とくに日本の農山村地域はあらゆる種類の再生可能エネルギーの資源に恵まれ、その活用が農村地域の新たな発展につながります。いまドイツの農村は食糧だけでなくエネルギーの供給地として新たな発展を遂げています。バイオマスが生産でき、さまざまな資源があり、それを支える農民や地域住民がいる。過疎化をなんとかしたい、後継者を育てたいという思いもある。人々の情熱も、一つの資源です。
普及すすめば原発不要に
地域住民の“やる気”が国を変える
いま、日本でも再生可能エネルギーの買い取り制度である「再生可能エネルギー促進法」の導入が提案されています。この買い取り制度を導入させることが、再生可能エネルギーの普及には非常に重要です。財源は、たとえば防衛予算の7分の1ほどの予算でできますし、もし電気料金として国民が負担するとしても、2020年までに1世帯当たり月平均で190円程度でできます。これで再生可能エネルギーが大きく伸び、原発が不要になり、より活気ある農村地域に発展できるのであれば、決して高くな
いのではないでしょうか。
私たちが社会の主体者として、やる気になるかどうか――これが重要です。ドイツやデンマークを見ても、取り組みの主体者が、制度拡充の要求運動もして、社会全体を動かしてきました。市民が変われば地域が変わり、地域が変われば国が変わります。私たちが変わらなければ、国も変わりません。今こそ私たちが行動する時です。
(新聞「農民」2011.7.18付)
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