「農民」記事データベース20110718-981-08

農山村の再生可能エネルギーの宝庫(1/3)

全国代表者会議での和田武さんの講演(要旨)

画像 全国代表者会議で、再生可能エネルギーの研究者で、日本環境学会会長の和田武さん(元立命館大学教授)が、「原発ゼロと、農山村の資源を生かした自然エネルギーへの転換」をテーマに講演しました。その要旨を紹介します。
(編集部の責任でまとめました)

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 再生可能エネルギー資源は無限
  資源に十分恵まれている日本

 再生可能エネルギーには、太陽光、水力、風力、バイオマスなど種類がたくさんありますが、原子力とはまったく違う特徴を持っています。

画像 一つには、資源が無限にあることです。太陽光が降り注ぐ限り、枯渇しません。しかも資源は無料、もしくは安価です。再生可能エネルギーの世界の資源量を見ると(図(1))、現在の技術でも利用可能な太陽エネルギーは、全世界の使用量の3倍以上あります。風力や地熱だけでも、世界のエネルギーをすべてまかなえる量があります。

 再生可能エネルギーはどこにでもありますが、そのかわり資源は薄く、広く、少量ずつしか存在しません。石油の油田のように集中せず、少量ずつ分散して存在するという特徴を考えると、発電などの再生可能エネルギーの生産拠点は、小規模・分散型で、たくさん造らなければならない。これが重要です。そしてこうした生産手段は、地域の住民が、主体となって所有するのが適しているのです。

 日本は、国内のエネルギー消費量を十分まかなえるほど、非常に再生可能エネルギーの資源に恵まれた国なのですが、ほとんど使っていません。

画像 それはなぜでしょうか。原発の推進派は、「再生可能エネルギーは不安定で、量も少ないから使い物にならない」「世界では原子力が伸びている」と言いますが、事実はそうではありません。この10年間、実際に伸びているのは再生可能エネルギーなのです。エネルギーの種類ごとの年間伸び率を見ると(図(2))、太陽光発電は42・3%、風力発電は25・1%も伸びる一方、原子力発電は1・7%で、エネルギー全体の伸び率1・8%より低いのです。

 日本、ドイツ、デンマークの再生可能エネルギーの発電量を見ると(図(3))、日本は増えておらず、しかも大部分がダムによる水力発電です。ドイツでももともとは水力が中心でしたが、今は風力とバイオマスが主力です。デンマークは国の最高地点が173メートルしかないので、水力はできません。何もないからこそ、一生懸命に風力とバイオマスを増やしてきたのです。このように資源を持っていなくても、政策をきちんととれば、再生可能エネルギーを普及させることができるのです。

 電力買い取り制度の導入を
  経費回収できる仕組み必要

 ドイツやデンマークでは、再生可能エネルギーの電力を、電力会社に高く買わせるという「再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度」が採用されています。この制度では、再生可能エネルギーの設備の所有者が、必要経費はすべてまかなえるように売電価格や期間が設定されています。

 買い取りの財源は社会全体でまかなうということで、電気料金を少し上げています。日本では電気料金のなかに、原発推進の財源を含んでいますが、ドイツでは再生可能エネルギーを増やす財源を電気料金の中に含めているわけです。

(新聞「農民」2011.7.18付)
ライン

2011年7月

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