「農民」記事データベース20110207-959-11

東京都知事賞を受賞

ごはん大好き 給食大好き

戸越ひまわり保育園 東京・品川

「ごはん大好き!」「給食おいしいヨ!」――和食にこだわった保育園給食に取り組む東京・品川区の戸越ひまわり保育園が、優れた給食施設に贈られる「東京都特定給食施設等栄養改善知事賞」を受賞し、関係者を大きく励ましています。喜びにわく戸越ひまわり保育園を訪ねました。
(満川暁代)


和食献立で食育に取り組む

国産食材つかって農家を応援

 食育の軸は国産食材の給食作り

 「おなか、すいたー!」――散歩から戻ってきた子どもたちを、できたての給食のおいしいにおいが迎えます。この日の献立は、五分つきご飯とブリの照り焼き、れんこんのきんぴら、春雨のひじき和(あ)え、サツマイモのみそ汁。ていねいに「いただきます」を言った後は、どの子も夢中で食事をほおばります。そのまなざしの真剣なこと。「小さい体なのに本当によく食べるでしょう。残飯どころか、おかわりする子が多いんですよ」と、園長の神代(かじろ)由美子(ゆみこ)さんは少し誇らしげに話します。

 戸越ひまわり保育園は、社会福祉法人戸越ひまわり福祉会が運営。0〜2歳までの乳幼児40人が通う、小さな認可保育園です。同園の給食のこだわりは、なんといっても「和食」ということ。創立以来27年間、ずっと国産の食材を使った安全、安心でおいしい給食・食育を、保育の軸にすえてきた同園ですが、さらに踏み込んで「和食」献立に移行したのは、3年前からです。

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2歳児クラスの給食時間。「れんこんのきんぴらがうまい!」

 「和食」献立への2つの熱い思い

 そこには、二つの熱い思いがありました。神代さんは言います。

 「一つは、日本人の体に合った食べ物は、なんといっても和食だということ。“三つ子の魂百まで”ということわざもあります。和食のすばらしさを、離乳食を食べ始める時から、食文化も含めてしっかり伝えていきたい。もう一つは、お米を主食にしっかりと位置づけることで、日本の農家と生産者を食べ支えたい、という思いからです」

 栄養士、調理員、保育士をはじめ職員みんながこうした思いで一致するまでには、地道な学習の積み重ねがありました。お母さんたちと同じ年ごろの若い栄養士、蒲田(かまだ)結衣(ゆい)さんは、「毎月※1、職場学習会を開いて学んだことが力になっています。食料自給率の低さや輸入食品の安全性、さらには日本の農業・農家の危機など、給食だけでなく食糧と農業全体について学んでいます」と言います。

 和食献立への移行には、蒲田さんの綿密な準備が力を発揮しました。「初めは、よく考えてみると和食の定義があいまいだったんです。全国の郷土食を調べたり、ソースやマヨネーズをやめて日本の調味料に限定したり、子どもたちの家での食生活をよく調べたりしているうちに、だんだんと私たちの目指す給食の姿が見えてきました」と蒲田さん。

 調理がたいへんと思われがちな和食ですが、蒲田さんは「そんなことありません。それよりも確かな食材をきちんと調理することで素材の良さが生かされ、子どもたちが喜んで残さず食べてくれるので、やりがいがあります」と言います。卵や小麦粉など使用がほとんどなくなったため、アレルギー対応食もずっとやりやすくなりました。

 親や地域への食育も高い評価

 同園の和食献立を中心にした食育の取り組みには、保護者や地域からも絶大な信頼が寄せられています。今回の都知事賞の受賞理由でも、こうした保護者や地域への食育の取り組みが高く評価されました。

 保護者に向けた給食だよりでは、日本の食文化やレシピを紹介。お迎えの保護者に給食を試食してもらう「お迎え試食会」も毎年※2行い、「とてもおいしくて、子どもたちが大好きなのがよくわかりました。私も毎日食べさせてもらいたーい!」「家でも日本のお米や野菜を使って、安全な食材からよい食事を作っていきたいと思います」などの感想が寄せられています。


【訂正】 2月14日号にて、以下の訂正がありました。
  2月7日付8面の「和食献立で食育に取り組む品川・戸越ひまわり保育園」の記事で、「毎週、職場学習会を開いて学んだことが〜」という部分の「毎週」を「毎月」※1に、「『お迎え試食会』も毎月行い〜」という部分の「毎月」を「毎年」※2に、お詫びして訂正します。
 2011年2月21日、訂正しました。

(新聞「農民」2011.2.7付)
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2011年2月

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