生物多様性守るため
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調査期間は3月から6月まで。輸入された遺伝子組み換え(GM)セイヨウナタネが陸揚げ時か運搬時にこぼれ落ち、発芽して自生している実態を調べました。調査場所は、千葉、東京、横浜、清水、名古屋、三重・四日市、神戸、兵庫・宇野と水島、福岡の10港。分析センターのスタッフが現地に入り、ナタネの陸揚げが予想される場所や運搬路を中心にセイヨウナタネと判断できる個体を採取しました。
採取したものの判定は、検体をすりつぶして試験紙で行う簡易試験と、遺伝子の塩基配列を調べるPCR法による確認試験を組み合わせて行いました。
また、今年も簡易試験では遺伝子組み換えでない(陰性)と判定されたにもかかわらず、PCR法で遺伝子組み換え(陽性)という結果がでたものが名古屋で1、水島1、福岡3の合計5個体ありました。これらは現在、確認試験中ですが、組み換え遺伝子はもっているものの、配列が何らかの理由で変化してしまい、除草剤に耐性をもつたんぱく質をつくらなくなった“かくれGM個体”である可能性があります。
最近の調査では、簡易試験で陰性、PCR法で陽性という結果がでる個体、また両耐性をもつ個体も確認されており、自生現象が年々変化していることを実感します。こうした動向を踏まえれば、調査の継続は引き続き重要です。
もっと抜本的な対策をとるために、遺伝子組み換え作物の種子や、その種子を利用して作られた製品の運搬経路の情報公開と集中管理などを行う組織を確立し、さらにそのための新しい取り決めや法整備が必要です。
セイヨウナタネ(以下ナタネ)は近縁のアブラナ科栽培植物と自然交雑しやすく、除草剤耐性の遺伝子組み換え(GM)ナタネも同様です。
GMナタネは、非GMナタネをはじめ、カブ・ハクサイ類の栽培種や野生種とは容易に自然交雑します。
カラシナ類とも自然交雑し、ブロッコリーなどキャベツ類との間でもごくまれに自然交雑します。さらに、セイヨウノダイコン、ノハラガラシ、アレチガラシなど近縁雑草との間でも、自然交雑し得るのです。
ナタネと自然交雑しない植物でも、自然交雑しやすい植物が橋渡し植物になり、橋渡し植物とナタネとの雑種植物が自然交雑して、間接的に交雑することもあります。しかも、異種間の自然交雑や雑種植物の継代の難易は、植物の内的・外的条件で大きく異なります。
GM推進者は、種間雑種が生じても適応力が弱く絶えるからと不問にしますが、状況次第でGMナタネの遺伝子が近縁植物に移入する可能性は大きく、こぼれ落ちGMナタネが農作物に及ぼす影響は看過できません。
その点で、GM汚染から国内の全生物を守るべき日本のカルタヘナ法は欺まんに満ち、GM生物が及ぼす影響評価の対象をカルタヘナ議定書よりも狭め、野生動植物に限定しました。国として守るべき対象植物は日本古来の野草に限られ、現在自生していても海外からの導入植物はすべて対象外なのです。
遺伝子組み換えナタネの自生調査が始まって6年目を迎え、新たな事態が発生しています。
2008年以降、数は少ないもののグリホサートとグルホシネートの両方に耐性をもつ多重耐性、つまりスタックGMがみられるようになりました。
これはグリホサート耐性とグルホシネート耐性のGMナタネが混在して自生しているために、お互いの交雑によって両耐性を持つに至ったと考えられます。
また、簡易試験では陰性で、PCR法では陽性というものも発見されるようになりました。これは、国内での世代交代が進んだ結果、遺伝子に突然変異や化学的な修飾が起こり、遺伝子はあるものの除草剤耐性たんぱく質を作らない性質をもつようになったと思われます。これは見かけ上、「非GM」とされ、遺伝子汚染がより見えにくくなってしまう危険性があります。
GMナタネとブロッコリーのような雑種は、初めの個体は繁殖力が弱く、結実の度合いも低いものですが、その種子が発芽し、成長してもとの親(セイヨウカラシナ、在来ナタネ、ブロッコリー)と再び交配するようなことが起これば、組み換え遺伝子は安定化し、急速に周辺への遺伝子汚染を拡散させるおそれがあります。
さらにGMアブラナ科雑草が見つかった問題では、アブラナ科雑草が、自然界に多数存在する雑草であることから、雑草の遺伝子汚染が一気に広がる可能性があり、生物多様性にとっては大きな脅威になります。
[2010年8月]
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