「農民」記事データベース20100503-923-08

生活保護者に配られた米は
鳥も食べないくず米(1/2)

困窮者につけこむ貧困ビジネス

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 千葉市の任意団体が、生活困窮者に支払われた生活保護費から不当に天引きし、唯一の物的支援である米は、鳥も食べないくず米だった――。住居と雇用の不安につけ込み、生活保護費受給者を食い物にする“貧困ビジネス”の実態をみてみます。
(勝又真史)


農民連食品分析センターが調べたら

ふるい下米、奇形粒が多く鮮度低い

 保護費12万円から10万円も天引き

 東京・上野で路上生活をしていた佐藤英治さん(60)は2007年12月、千葉市の任意団体「シナジーライフ」(大和田正弘代表、以下シナジー)の職員から「ワンルームのマンションを紹介する。そこで生活保護を受けて、暮らしてみないか」と声をかけられ、生保受給の申請をしたうえで、千葉市花見川区のアパートに入居しました。

 区から生保の開始決定を受け、以後09年7月までに毎月支払われる生保費約12万円のうち、約10万円がシナジーに天引きされ、佐藤さんには約2万円しか手渡されませんでした。シナジーからの物的支援は、毎月配られる10キロの米。「とてもこれではまともに暮らせない」と絶望感に襲われました。

 佐藤さんが、無色透明のビニール袋に入れられた米を炊いてみると、「水を多くするとべちゃっとなり、少なくしても芯(しん)が残るような、まずくて仕方のないものだった。とても食べられるような代物ではなかった」と振り返ります。

 09年7月にシナジーは「派遣村実行委員会」や弁護士らの指摘を受け、生保の管理をやめ、米の支給も止めました。

 家の中で米を保管していた佐藤さんは今年の2月11日、生活相談を受けていた中村きみえ・千葉市議(日本共産党)に、その米を見せ、中村市議が、千葉県農民連の小倉毅事務局長に相談。小倉事務局長が農民連食品分析センターに検査を依頼したのです。

 古米臭強く全体的に黒ずむ

 分析センターで、その米を調べてみると……。

 分析を担当した八田純人さんは「米の入った袋の底には、黒い粉末がたまっていました。袋を開くと、強い古米臭がして、全体的に黒ずんでいました」と語ります。

 一部を取り出し、外から見た米の状態(外観)の確認試験を行いました。ほとんどの米は形が崩れ、砕けたもの、白濁したもの、変色したものなどが散見されました。

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ふるい下米や奇形粒がぞろぞろ

 さらに米の表面を光学顕微鏡で観察してみると、米粉デンプンが結晶になったもののほかに、カビの菌糸や胞子と考えられるものが確認されました。

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カビの菌糸や胞子と考えられるもの

 食品衛生法違反の可能性もある

 八田さんは「米はきわめて環境の悪い場所で長期間保管されていたか、収穫からかなりの時間が経過したものと思われます。形が崩れた米を大量に含んでいるので、くず米をさらに精米した可能性が高い」と指摘します。

 鮮度が低下した米は、脂肪酸の増加による独特の古米臭があり、食味を落とすことが多いとされています。分析センターは、次に、脂肪酸の量によって米の鮮度を調べる簡易判定試験を行いました。

 米2グラムに判定液を加え、5分後に液全体の着色具合を確認するものです。鮮度がきわめて良好なものは青緑、鮮度が著しく低下したものは橙(だいだい)色になります。

 検査の結果、はっきりした橙色となり、鮮度がきわめて低下していることが確認されました。

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鮮度が低下していることを示す橙色

 最後に、米粒の形を検査。一般に流通する米は精米後、ふるいにかけ、粒の一部が欠けたり、割れたりして、ふるいの下に落ちた米(ふるい下米)などを除いて、一定の大きさの米が出荷されます。ふるい下米は、鳥のえさやせんべいなどの加工用に使われます。

 米穀公正取引推進協議会の「米穀の品質表示ガイドライン」では、米の品位基準を定め、うるち米として販売する際に、特に品位について条件を付す場合や品位の程度を米袋などに表示している場合を除いては、これに適合するものでなければならないとしています。

 調査は、ガイドラインが定める目が網状の「網目ふるい」と、分析センターが独自に検討している「縦目ふるい」を使って行われました。

 網目ふるいでは、米50グラムを網目の大きさ2・0ミリ、1・7ミリのふるいと受け皿を上から順番に積み重ねました。縦目ふるいでは、目の大きさ1・85ミリ、1・7ミリのものと受け皿を順に積み重ね、2分間振動させて、ふるい分けしました。それぞれのふるいと受け皿に残った米の重量を電子天びんで測定しました。

 検査の結果(表1)、縦目のふるいでは、受け皿に90%が落ちました。米の品位の確認試験(表2)では、着色粒、砕粒がガイドラインの基準の倍もあり、異物含有率も基準を大幅に超えました。全体にカビの発生により、汚染被害を受けており、ほとんどが被害粒と考えられます。

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 全体的に、ガイドラインに適合するものではなく、被害粒が全体を占めることから、これがもし販売されたものであるならば、食品衛生法違反の可能性があります。

(新聞「農民」2010.5.3付)
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2010年5月

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