鳩山内閣 米価下落がねらいなのか?
米価安定なしに生産も
「モデル事業」も もたない
関連/事業にのる人も、のらない人も米価下落は大問題
米モデル事業などのスタートにあたって、農家から不安の声があがっている最大の理由は、米価の下落です。ところが鳩山内閣は、米価下落対策をなにも講じようとしません。
そもそも民主党は「価格支持対策は行わない」ことを原則にしている政党です。2007年、「7000円米価」で大問題になったとき、農民連の運動や世論に押されて自公政権は34万トンを緊急に買い入れ、米価の下落に歯止めをかけましたが、民主党はこれを厳しく批判しました。
「米価が下がって所得が減少しても、戸別所得補償で補てんすればいい」、これが民主党農政です。あるマスコミは「(民主党は)米価が下がって戸別所得補償の価値が理解されることをねらっているのではないか」という大手卸の見方を紹介していますが、これではたまったものではありません。
米モデル事業では、米価が下落すれば「標準的な販売価格」(過去3年の平均相対価格)が大きく変動します。民主党の小平忠正衆院議員(米モデル事業プロジェクトチーム座長)でさえ「これでは自民党時代の品目横断対策のナラシ(収入減少影響緩和)対策よりも不安定だ」と指摘しているように、補償水準をさらに引き下げることになってしまいます。
また、米価が下がれば補償額が増えて財政負担が大きくなり、制度自体が持ちません。
さらに、米の需給がゆるんでいるもとで、米モデル事業の交付金を見越した大手流通資本は買いたたきの動きを強めており、また、売り手側も自ら価格を下げざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
農民連は、来年度からの本格実施にあたって、次のことを要求します。(1)交付金単価は生産費を償う水準に引き上げること(2)転作作物については、野菜、果実、花なども含め再生産可能な助成を行うこと。
そして、米価下落に歯止めをかけ需給と価格を安定させるため、備蓄米買い入れなどの緊急対策を講ずるよう強く要求します。
制度の仕組みと手続きの確認を
【米モデル事業】
この事業は減反達成が条件で、水稲共済加入者(未加入者でも出荷・販売契約が確認できればOK)に10アールあたり1万5000円(定額部分)が交付されます。交付対象面積は、主食用米の作付面積から10アール(自家飯米用・縁故用)を差し引いた面積です。また、今年の米価(来年1月までの相対取引価格)が過去3年の平均米価を下回った場合、その差額が交付(変動部分)されます。
交付金を受け取るためには、生産数量の目標を守る必要があるため、地域水田農業推進協議会(市町村、JAなどで構成)から「作付確認」を受けなければなりません。これまで減反に参加してこなかった農家は、協議会から生産数量目標の配分を受けます。
【自給力向上事業】
この事業は、水田で麦や大豆、米粉用米、飼料用米などを生産する農家に交付金を交付するもの。生産調整目標を達成していない農家でも対象となります。収穫して出荷することが必要で「捨て作り」には交付されません。また、これまでの対策にくらべて交付金が減額する地域には、「激変緩和措置」により交付単価が調整されます。
主食用以外の米を作り、交付金を受け取るためには、米粉用・飼料用・加工用米などの実需者と販売契約を締結しなければなりません。また、用途以外に販売した場合には、食糧法や米トレーサビリティ法で罰せられます。
(新聞「農民」2010.4.26付)
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