「農民」記事データベース20090209-863-01

たび重なる自然災害

りんご農家大苦境

被害果…“売れない”“買いたたき”“安い輸入果汁”

関連/雑誌「農民」59号できました

 本紙ですでに報道した青森県津軽地方をはじめ、全国のりんご産地では昨年、自然災害が多発しました。気候変動の影響も指摘されているほか、輸入果汁と競合して加工の道も閉ざされるなど、りんご農家の苦境は深まるばかりです。


 降霜、降雹(ひょう)などたび重なる自然災害を受けた津軽地方。被害果は、味はよくても市場で買いたたかれてしまうことから、津軽農民組合は、消費者に直接届ける「ほほえみ産直」に活路を求めてきました。

 全国に支援を訴えた甲斐(かい)あって、多数の注文が寄せられましたが、市場では「600円の木箱に入れて、中身は300円」と価格が暴落しているうえ、加工用のりんごも、すでに“買い止め”です。組合員農家の倉庫にはまだ1万ケース(10キロ換算)を超す在庫が残り、「このままでは山川市場(山や川に捨てる)になる」「(りんごの)死に場所を探さなければならない」など、不安がひろがりました。

 長野県でも、加工用の果実が売れなくなっています。長野市のりんご農家、山下始胤(もとつぐ)さんは、「年が明けてから、加工業者が引き取ってくれない」といいます。一部の地域で“つる割れ”(軸の部分に亀裂ができる)の被害が多発し、加工仕向けの果実が増えているうえ、中国などから安いりんご果汁が大量に流入し、市場が飽和状態になっているからです。

全国的連帯で食べて支える

 とにかく食べてもらいたい

 津軽農民組合は、「手取りは減っても、とにかく食べてもらいたい」と、1月に入って値下げを断行。これまでに注文してくれた全国の個人や団体に重ねて購入を呼びかける一方、20日から開かれた農民連の大会でも、「いま一度みなさんのお力をお借りしたい」と訴えました。

 この訴えに応え、富山県食健連は、さっそく130ケースを発注。このうち100ケースは、昨年末のシンポジウム(2面で紹介)でパネリストを務めた五島辰夫さん(砺波商工会議所副会頭)が、自ら経営するスーパーマーケット「ヴァローレ砺波店」に並べました。五島さんは「農業はどうしても天候に左右されます。販売する者にも生産者を守る責任があります」と語り、継続的な販売も計画しています。

 農民連ふるさとネットワークは、「支援のお願い」の手紙をつくり、準産直米を扱っている米屋さん、給食の食材を納入している学校などに送りました。意気に感じた栄養士さんたちからすぐに注文が寄せられたほか、自前のチラシを作ってお客さんからの注文を集めている米屋さんもいます。

 こうした支援に支えられ、津軽農民組合は連日400〜500ケースを出荷できるようになりました。ほほえみ産直部の小山恵司部長は、「予想を超えるご支援をいただき、心から感謝しています。会員をさらに増やし、農家を元気づけたい」と、ひきつづき奮闘中です。
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「生産者を守るのも販売する者の責任」と語る五島社長 富山県のスーパー「ヴァローレ砺波店」に並んだ「ほほえみりんご」。(1月30日)

危機打開へ“農民連の出番”

 輸入果汁にストップを

 長野県農民連も、被害の少ない果実は生で食べてもらおうと、県内の労組や新日本婦人の会に訴えているほか、埼玉県などに出向いて支援を要請することにしています。しかし山下さんは、「助け合って今日の危機を乗り越えることも大切だが、輸入果汁に歯止めをかける必要がある」と指摘します。「加工業者も『農民連にたたかってほしい』と期待しています。私たちの出番です」。


雑誌「農民」59号できました

画像 雑誌「農民」59号ができあがりました。

 農民連ふるさとネットワーク事務局次長・横山昭三さんの「最悪の食品偽装事件・汚染米」は、昨年11月の全国代表者会議で講演した内容にその後の情勢を加筆したもので、事件の本質や農民連・食健連の運動の成果など、大変わかりやすくまとめられています。

 また、農民連副会長・真嶋良孝さんの「データで見る―食糧危機の打開とWTOは両立しない」では、豊富なデータをもとに、多国籍企業が金にあかせてアフリカなどの飢餓国の農地を囲い込んでいる実態などをなまなましく告発。食糧主権にもとづく貿易ルールの確立を求める動きが国内外で広がっていることを紹介しています。

 地球温暖化防止では、はじめて資料をカラーで掲載。農業への温暖化の影響や、どうしたら温暖化を止められるか、農業環境技術研究所の長谷川利拡さんの話や、昨年12月にポーランドで開かれたCOP14に参加した弁護士の早川光俊さんの講演などを掲載しています。

 ほかに、G8サミット対抗行動やビア・カンペシーナ国際総会の報告など、盛りだくさんの内容です。

 定価は1000円。注文は都道府県連か農民連本部 TEL 03(3590)6759まで。

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(新聞「農民」2009.2.9付)
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2009年2月

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