「農民」記事データベース20080616-832-01

国際フォーラム

地球温暖化・食糧危機
待ったなし

関連/参加者の感想
  /「国際フォーラム」の報告から

 全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は六月一日、東京都文京区の全労連会館で、国際フォーラム「温暖化・食糧問題と食糧主権」を開き、全国から会場いっぱいの二百三十人が参加。農・林・水産、環境、消費者、公害被害者など、様々な立場から、地球温暖化と食糧問題について考え、七月のG8洞爺湖サミット対抗行動に向けて、草の根から運動を強めようと決意を固めあいました。


G8洞爺湖サミットへ向け
草の根から運動強めよう

 食料自給率向上の意義を強調

 全農協労連の老田弘道委員長が「地球温暖化や食料危機を食い止めることは待ったなしの課題。きょうのフォーラムをG8行動成功のためのスタートにしよう」と開会あいさつしました。

 三人のパネリストが発言。独立行政法人・国立環境研究所特別客員研究員の西岡秀三氏が「地球温暖化の実態と、解決に向けた課題」、国際的な農民組織、ビア・カンペシーナ国際代表のヘンリー・サラギ氏が「地球を温暖化から救う、持続可能な農業をめざす食糧主権運動」のテーマでそれぞれ報告しました。(西岡、ヘンリー両氏の報告大要は3面)

 「世界的な食糧危機と食料自給率向上の意義」について講演した農民連副会長の真嶋良孝氏は(1)地球温暖化・異常気象による収穫減(2)中国やインド、ロシアなどの経済発展と食糧消費の大幅な増加(3)バイオ(アグロ)燃料ブーム(4)投機マネーの暗躍―が新しい飢餓を生み出していると指摘。「G8行動には、世界のたたかう仲間たちがやってくる。地域レベル・国レベル・世界レベルの連帯と運動を大いに強め、農業と食糧からWTO(世界貿易機関)を追い出し、これに代わる農業政策と貿易のルールとしての食糧主権を確立しよう」と訴えました。

各分野から温暖化の実態と
多彩な取組みを報告

 環境にやさしい産直の魅力も…

 参加者のフロア発言では、各団体の多彩な取り組みとG8行動に向けた決意が報告されました。新日本婦人の会(新婦人)の玉 田恵副会長は、農民連とともに進める「食と地球をまもる産直ボックス」について発言。安全・安心、価格も手ごろで環境にもやさしい産直の魅力を前面 に、各地で「産直ボックス」に取り組んでいる様子を紹介しました。

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フロアからの発言で多彩な取り組みを交流

 今なお水俣病の被害で苦しむ患者らでつくる「ノーモア・ミナマタ国賠等訴訟原告団」が、国、熊本県、加害企業チッソを相手に、最終的な解決までたたかい抜く決意を表明。全国キャラバンで「ノーモア水俣、ストップ温暖化の旗を掲げ、洞爺湖をめざします」とのべました。

 漁業も林業も影響は深刻化

 各分野の温暖化による影響も報告されました。水産分野からは、「21世紀の水産を考える会」の檜山暁子さんが発言。海水温が上がると、水の循環が止まり、魚が住みにくい環境になるなど、漁業分野でも温暖化への影響が深刻になっている実態を報告しました。

 日本の森と自然を守る全国連絡会の笠原義人代表は、外材依存率が八割にのぼる林業の現状を告発。林業が衰退すれば、農山村の過疎化が進み、森林の荒廃もさらに進行すると指摘。二酸化炭素の吸収量も減り、温暖化を促す結果になると警鐘を鳴らしました。

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「食料と環境問題は喫緊の課題」と認識を新たにする参加者

 全大阪消費者団体連絡会の飯田秀男事務局長は、相変わらず輸入食品に頼る流通業界を「中国製ギョーザ事件から何も学んでいない」と批判。食料やエネルギーを投機の対象にしない国際ルールづくりを、G8サミットの重要なテーマにすべきだと強調し、G8行動に向けて、生産者と消費者との連携にとどまらず、労働運動との共同の必要性を呼びかけました。


参加者の感想

勉強してわかった とても励まされた

新婦人東京都本部産直担当の根本かおるさん
 温暖化の具体的な数値や、どう解決していくのかなどがわかって勉強になりました。食の安全や農家との共同という面から取り組んできた私たちの産直が、さまざまなことを守って、私たちの生活に戻ってくることがわかり、とても励まされた思いです。大好きな「食べる」ことが地球を守る運動になるのは、とてもうれしいこと。これからも産直、がんばります。

今後どう運動していくか考えないと

日本の伝統食を考える会の中筋恵子さん
 このフォーラムを受けて、今後、具体的にどう運動していくかを話し合う機会が必要です。私たちも「これでいいのか、日本の食」というシンポジウムを予定しています。今日のフォーラムでは、地球温暖化が今までになく切実な、現実の問題として迫ってきました。食べることを討論するうえでも、きちんと考えなければと思いました。

大企業だけが栄える状況変えてこそ

全労働省労働組合の高村佳那子さん
 「安心な国産の食糧を食べたい。だけど得られない」など、食の安全がグローバリゼーションによって脅かされています。低賃金の非正規雇用労働者の多くは、ケンタッキーやマクドナルドなど添加物たっぷりの安いものしか買えません。貧困ビジネスが栄える構図、巨大企業だけが栄える状況を、多くの団体、消費者が連携して変えていかなければと思いました。

(新聞「農民」2008.6.16付)
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2008年6月

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