「農民」記事データベース20080107-810-08

「アグロ燃料」拡大が農業圧迫

地球温暖化防ぎ、食糧主権実現の道を

多国籍企業 森林を破壊、土地取上げ

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  /農業や生態系に重大影響

 地球と人類にとって死活的に重要な課題になっている地球温暖化防止対策を話し合う国連の気候変動枠組条約締約国会議(COP13)が十二月三日から十四日まで、インドネシア・バリ島で開かれました。
 これに並行して、ビア・カンペシーナや「地球の友」、インドネシア気候変動市民社会フォーラムなどが一日から十二日まで対抗フォーラムやデモを繰り広げ、農民連から真嶋良孝副会長と杵塚歩青年部副部長が参加しました。真嶋がリポートします。


国連の地球温暖化対策会議に対抗
して開かれた国際フォーラムに参加して

バリ島からのリポート 真嶋良孝

 激増する「燃料」プランテーション

 バリの最高気温は四〇度前後。私たちの活動拠点になったのは、国連の会議が開かれている高級リゾート地ヌサ・ドゥアの一角に作られた「地球冷却のための連帯村」。野外ステージと二張のテントで、朝から夜まで、文字通り熱い討論が行われました。

 ビア・カンペシーナが主催した討論会で中心テーマになったのは「アグロ燃料」。通常「バイオ燃料」といわれますが、生物一般をさす「バイオ」よりも、モノカルチャー化された農業から生産される燃料を意味する「アグロ燃料」のほうが正確だということで、この言葉が使われました。

 インドネシア農民組合のインドラ・サゴ氏は、農民と先住民の土地を奪い、生態系を破壊し、さらに水を浪費して、政府が油ヤシのプランテーションを現在の六百万ヘクタールから二〇二〇年には千八百万ヘクタールに拡大しようとしていることを告発。

 マレーシアのボルネオ先住民・農民運動の代表も、油ヤシのプランテーションの拡大によって、土壌流出や乾燥、異常高温などの被害が続出していることを指摘し「神が創造したものを守る義務が私たちにはある」と発言。アフリカ・モザンビークの代表は、飢餓に苦しむアフリカに「ヤトロファ」という燃料用作物が持ち込まれ、多国籍企業のために土地が奪われようとしていると告発。

 アメリカに次ぐアグロ燃料生産国であるブラジルの土地なし農民運動(MST)の代表は、多国籍アグリビジネスが農民を土地から追い出し、アマゾンを破壊し、さらにこれに反対する農民を虐殺さえしていると糾弾しました。

 漁民や森林保護運動にとりくんでいる活動家からもきびしい告発が相次ぎました。インドネシア・ジャワ島の漁民は、地球温暖化によって漁獲量が急減していることを切々と訴え、森林保護運動家は、樹木の繊維を分解しやすくして燃料を生産するために「遺伝子組み換え樹木」を作ることが検討されていると指摘。

 温暖化ガス排出の半分は貿易から

 カリフォルニア大学講師でもあるピーター・ロゼット氏は、温暖化ガスの半分以上は貿易による輸送から排出されていると指摘。食糧主権を実現し、各国の農業生産を守ることこそが地球の冷却化に役立つと強調しました。

 国連の会議を監視しているNGO活動家からは、先進国の温暖化ガス排出目標の明示やアグロ燃料推進の五年間凍結を主張するなど、比較的民衆の側に立って交渉しているEU諸国とは逆に、日本政府がアメリカ政府とともに数値目標の設定そのものに反対していることに対し「日米両政府は京都議定書を葬りさろうとしている」という強い批判の声があがりました。

 日本の「三つの異常」を告発

 七日午後に開かれた「アグロ燃料と気候変動」分科会で、私は侵略戦争と憲法九条の問題にも触れながら、日本の三つの異常を批判しました。

 (1)日本はカロリーの六一%、穀物の七三%を輸入に依存している。これは日本が大量の石油を浪費して農産物を輸入していることを意味する。しかも政府と財界は、完全自由化を進め、さらに輸入依存を深めようとしているが、これは地球温暖化防止にも食糧主権にも逆行する。

 (2)アグロ燃料では多国籍企業の暗躍が目立つが、日本の多国籍企業も、インドネシアやブラジルなどでプランテーション作りを進めている。

 (3)日本の温暖化ガス排出量削減目標は二〇一二年までに六%であるが、逆に八%増えている。しかも、排出量の半分は日本の大企業三十五社が占め、財界は削減にまったく後ろ向きである。

 (4)日本でたたかう私たちの責任は重大だ。〇八年G8サミットが日本で開かれるが、国際連帯を強め、地球の存続と食糧主権実現のためにがんばりたい。

 会場からは「具体的な指摘で、とてもよかった」「冒頭で侵略戦争と憲法九条のことを言ったのは重要なことだ」という声が聞かれました。

◇  ◇  ◇

 帰国後、経団連の御手洗会長が鴨下環境相に対し、温暖化ガス排出削減を「不合理な総量規制」と非難し、「環境問題を経済成長の阻害要因にするな」と要求したというニュースを読みました(十二月十一日、各紙)。

 バリで国連会議が開かれている真っ最中に、こういうことを言ってはばからない! ひさしぶりに「エコノミック・アニマル」という言葉を思い起こしましたが、七月に予定しているG8サミット対抗行動を成功させ、今年を地球と食糧を守る運動を飛躍的に強める年にしたいと思います。

(新聞「農民」2008.1.7付)
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2008年1月

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