低米価・大幅減収・怒りの行動
米つくって、メシくえねぇ(2/2)
会津
長引く低米価で、米農家が苦境に立たされています。政府はこのほど、三十四万トンを買い入れ、百万トンの備蓄水準を確保するなどを柱とする緊急対策を発表しました。対策をどうみるのか、三人に聞きました。
政府の緊急対策どうみる
日本米穀小売商業組合連合会・長谷部喜通理事長 緊急対策には、政府米の買い入れやくず米対策を取り入れるなど、農民連が主張してきたことが反映されています。農水省前で抗議行動を行い、政府や全農と交渉を重ねた成果と言えます。
農民連の主張が反映
自民の人気取りの感も
同時に、今回の対策では、多少の価格の底上げになるかもしれませんが、中長期的に考えられたものでなく、自民党の人気取りのためという感は否めません。積み増した百万トンの備蓄米はいずれ売らなければならず、今後の流通に支障をきたさなければよいが、と危ぐしています。
さらに輸入米(SBS米)が主食用に流れれば、再び米価を押し下げる要因になりかねません。また生産調整を言うのなら、麦や大豆などの転作作物への助成をもっと手厚くすべきです。
くず米が主食用に回り、ディスカウントストアで格安で売られているのも、結局は、米の流通を野放しにして、安売り競争に任せていることが最大の原因です。卸業者や米屋などの流通業者も安売り競争にまきこまれることになります。
消費者のすべてが安売り米を求めているわけではありません。価格が高くても、安心・安全なおいしい米を買い求める消費者も多くいます。生産者も、消費者のニーズをよく研究し、よりよい米作りに努力すべきです。
流通業者も、生産者と手を携えて、消費者にアピールできる米作りを考える。こうして三者の信頼関係を築き、さらに親せき関係に発展させることが、米の価格維持に必要だと考えます。
くず米除外措置を評価
抜本的解決には程遠い
茨城県・JAやさと組合長・田村和夫さん 米価は最低限、農家の生活を保障する価格でなければなりません。農民連が、米価の問題でいち早く対策を掲げ、行動を起こした成果が、政府の「緊急対策」にも反映されています。
一方で、政府の「対策」は、抜本的な解決にはほど遠い内容です。これでは選挙目当てのばらまきと言われても仕方がありません。
くず米について、主食用から除外する販売・集荷体制確立の措置を盛り込んだことは評価できます。しかし低米価の大きな要因になっている輸入米に手をつけていないのは大きな問題です。
私たち農協も、米価暴落にもっともっと大声をあげるべきです。日本の農業、なかでも国民の主食の米を守るという点で、農協の原点にもう一度立ち返ってほしいと思います。
日本では、古来から米文化が営々と積み重ねられてきた歴史があり、日本の文化そのものです。それにもかかわらずこんな低米価では、米の作り手がいなくなってしまいます。食料自給率も下がる一方です。
末端の安い米上昇も…
求められる長期的展望
かない米店(東京都武蔵野市)・西東京米穀店経営研究会(西東京米研)幹事長・金井一浩さん いまの低米価では、農家の経営が成り立つのか不安を覚えます。このままでは、米作りをやめてしまうなど、下落のひずみがでてくるでしょう。そうなれば、耕作放棄地が増え、地域や環境の面からも悪影響です。
今回の対策で政府米を買い入れるということですが、その効果は今のところ、末端の安い米の値段が上がっているだけです。一時しのぎでない、長期的な展望が必要です。
私はいま、栃木県の米農家さん、川崎市の米屋さん、新潟県の肥料屋さんと四人で、農家に良い環境で米を作ってもらおうと、「契約栽培ぷろぢぇくと」(お米トラスト)に取り組んでいます。栃木県塩谷町の田んぼで優良品種米を数種類混ぜて植え、自然交配させることで、おいしい特別米を作るのです。
栽培したお米を適正な価格で消費者に購入してもらうことで、安全で、おいしくて、環境にも優しいお米を栽培でき、持続可能な日本の農業を支えることにつながるのです。農家、米屋、消費者の三者が手を携えて米作りを支えていくことが求められています。
(新聞「農民」2007.12.3付)
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