特集 米価破壊の実態を追う
低価格米の正体が見えた!
くず米、古米、奇形米がゾロゾロ…(2/2)
農民連食品分析センターの調査で判明
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元凶は政府の低米価政策
備蓄米が価格引き下げに一役
超古米を市場にたれ流し
農水省は三月、政府備蓄米の販売量を抑制すると発表しました。前月までに政府米を売り過ぎたためです。
〇六年産の作柄は、作況九六の不作。それにもかかわらず、米価は下がり続けました。原因の一つは、政府の超古米の売却です。低価格米の不足を背景に、昨年七月から今年二月まで、〇三、〇四年産の古米を一万一千円台で二十二万トンも市場に垂れ流し、相場を押し下げてきました。
備蓄ルールは、百万トン備蓄し、古米にして販売。年度ごとに売れただけ購入するしくみ。しかし、政府の〇六年産米の購入計画三十万トンに対して、三月末の時点で十八万トンしか集まりませんでした。購入が計画通りすすまないのは、入札で市場よりも安く買いたたかくから。また、政府備蓄米に回しても販売実績にカウントされません。
備蓄米不足で右往左往
一方、備蓄米の販売は二十二万トンと四万トンも売り超してしまい、あわてた農水省は、突然売却を抑制。年度途中から価格改定ができない業者は、「下物」の調達におおわらわで、低価格米がいっせいに値上がりする騒ぎになっています。その後、購入も上乗せのめどが立ち、一定の売却を予定していますが、「下物不足」は解消されません。
収穫時期に安い米を垂れ流し、米価下落で稲作農民を苦しめ、無計画な販売で米業者にも迷惑をかけ、消費者には知らない間に古米を食べさせる――。これでは食糧法の定める“需給と価格の安定”どころか“需給の混乱と低米価安定”のための備蓄政策といわれても仕方ありません。
自ら決めた百万トンの備蓄水準も現在七十六万トン(国民の消費量の一カ月分程度)しかありません。
備蓄米購入も当たり前の価格にすれば三十万トン以上はすぐでも集まります。それを実行しない政府の責任は重大です。
JAが「コシヒカリ作るな」
「コシヒカリの生産を抑制し、こしいぶきやその他の銘柄米(業務用米)の生産を拡大しましょう」――。JAグループ新潟が、こんなチラシを作製し、農家に呼びかけています。業務用米とは、外食産業向けなどの低価格な米を指します。
価格競争の激化で低価格米の需要が集中しています。そのため、新潟のコシヒカリや秋田のあきたこまちなどが売れ残り、大量に政府備蓄米に回る異常さです。
JAは、低価格米への需要増と、コシヒカリへの作付け集中というミスマッチ(不適合)が生じたとして、コシヒカリの作付比率を八二%から七〇%に落とし、他品種への誘導に乗り出しているのです。
コシヒカリの本場といわれる新潟県。一キロ五百円の米でもお茶わん一杯三十三円程度。これが高くて売れないとするなら、国の政策そのものが間違っています。
政府は米の輸出に血道をあげ、「真珠のような日本の米」と持ち上げておきながら、一方で米価引き下げ政策。米の輸出は失政の目くらまし、いっそうの輸入の呼び水にすぎません。
価格保障の復活こそ
最低賃金並み 生産費償う価格に
いま稲作農民の日給は二千六百四十七円(時給三百三十円)で、生活保護水準以下といわれる地域最低賃金(五千三百四十四円)の半分にまで下がっています。
私たちの要求は、せめて水よりは高い米価にしてほしいということであり、稲作農民の「日給」を、せめて地域最低賃金並みにしてほしいということです。かりに現在の最賃が保障されれば、米価は生産費をぎりぎり償う一俵(六十キロ)一万八千円弱になり、日給八千円という要求にもとづけば約二万円になります。
農民連は、価格保障の復活を要求します。具体的には、暴落が始まった過去五年間の全国平均生産費(一万七千五百四十円)を基準価格とし、農家の手取り価格(指標価格マイナス出荷経費、〇六年産の平均は一万三千八百八十四円)がこれを下回った場合に、販売農家に対し、差額を全額国費負担で「不足払い」することを要求します。
自治体からも、稲作農家に勤労者並みの労賃と再生産を確保するための米価を求める声が上がり、千葉県横芝光町では、農業委員会が全会一致で「二万円米価を保障する制度確立を求める決議」を採択しています。
もっと大胆に下げよ
経済財政諮問会議で議論
本間正義氏
「米価一万一千円でもまだ高い」。そんな議論が、政府御用学者や財界出身の委員で占められる経済財政諮問会議で行われています。
農水省が同会議に提出した資料は、米の関税を全廃した場合、生産量が現在の一〇%にまで落ち込むと試算しています。また、農水省は米価を「二〇一五年までに一万一千円(六十キロ)までもっていく」と主張。
一方、同会議は、赤字分を兼業収入で補っている兼業農家に矛先を向け、「農家が赤字でもつくるのであれば、逆に米価を下げていい。もっと大胆な価格引下げの方針を」(本間正義・東京大学教授)と、さらなる引き下げを迫っています。その結論が「一万一千円という数値が余りにも高いというのは共通認識だ」というのです。
(新聞「農民」2007.4.23付)
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