「農民」記事データベース20070205-766-10

WTO・FTAから食糧主権へ(1/2)

FTA・EPAをめぐる問題を中心に

真嶋副会長の補足報告

関連/WTO・FTAから食糧主権へ(1/2)
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 大会で真嶋良孝副会長が「WTO・FTAから食糧主権へ」と題して行った補足報告から、FTA・EPAをめぐる問題を中心に紹介します。(全文は雑誌『農民』で続報します)


 “WTOはタコの頭でFTAはタコの足だ”

日米の財界が一体になってEPA推進圧力 WTO交渉が昨年七月に決裂し、インドの商工大臣は「WTO交渉は死んだわけではないが、集中治療室と火葬場の中間にいる」とコメントしました。WTOがこういう状態になって、いまFTA・EPAを推進する傾向が強まっています。

 ビア・カンペシーナはWTOとFTA・EPAをヨーロッパで“悪魔の魚”と呼ばれるタコになぞらえて、「新自由主義経済のなかでWTOはタコの頭であり、FTAはタコの足である」と指摘し、両方に対するたたかいを呼びかけました。WTOというタコの頭は脳死状態ですが、足(FTA・EPA)はグロテスクにうごめいているというのが現状です。

 FTA・EPAをめぐる緊急事態について、雑誌『農民』五十七号で指摘した問題とともに、日米財界が集中的に議論している日米EPAの問題を加えて報告します。

 日本でFTA・EPAを推進しているのは、財界と、これにハイジャックされたとしか言いようがない「経済財政諮問会議」です。そしてその背景にあるのは、日米財界の共通する要求です。

 この間の動きを表に整理しました。一昨年十一月に開かれた第四十二回日米財界人会議は、初めて「日米EPAの促進」を決議しました。また昨年六月には経団連のアメリカ委員会が、在日アメリカ大使館の経済担当公使を呼んで講演させています。その内容は非常に頭にくるものです。

 「多くの日本人が安全で信頼できる食糧供給の必要性を、国内での食糧生産と同一視している」と非難し、そのうえで「しかし日本が国内需要を満たすだけの十分な食糧を生産できないことをわれわれ全員が理解している。日本は食糧安全保障問題に単独で取り組む必要はない。アメリカの農業従事者が、日本の消費者に信頼でき、安全な食糧を提供したいと思っているからだ」と述べています。

 要するに、日本は自給率向上なんてバカなことはやめて、アメリカにもっと食料を依存しろということです。しかし、あのずさんなBSE対策を見ても、いかにデタラメな話か分かるでしょう。

 その一方で彼らにとっての日米EPAの目的ははっきりしていて、「ビジネスの利益」だと明言しています。こういう話が日米財界の間で議論されており、経済財政諮問会議の民間議員が「日米・日中EPAの検討」を求めていることをまず指摘したいと思います。

 「ユーフォリア」状態の「御手洗ビジョン」

 今年一月、経団連は「希望の国、日本」と題する「御手洗ビジョン」を発表しました。憲法改悪をはじめ、残業代ゼロなど労働法制の改悪、愛国心教育、消費税増税などと並んで、WTO・FTAの推進をうたっています。

 WTO・FTAについて詳しく見ると、十年後にはWTOドーハ・ラウンドが終わって次のラウンドが始まっており、FTA・EPAについてはASEAN+6のEPAと日米EPAも成立していて、企業の自由な活動が保証され、徹底的な最適地生産が進んでいると想定しています。これは言い換えれば、日本国内の産業をさらに空洞化させ、途上国の低賃金の労働者を「自由に」食い散らしているということに他なりません。

 この経団連のビジョンは言いたい放題、もはや空想、夢想に近いと思います。その背後にあるのは何かということについて、「しんぶん赤旗」一月八日付は「ユーフォリア」という言葉で論評しています。

 資本は本来もうけを追求するものですが、そのもうけが最高水準に達すると何が何だか分からなくなる、そういう状態が「ユーフォリア」(夢幻境)と言うのだそうです。「御手洗ビジョン」はまさに「ユーフォリア」状態です。そして「『ユーフォリア』に落ち込んだ資本は決して自ら目覚めることはない。目を覚まさせることができるのは国民のたたかいだ」と述べています。そういう規模のたたかいをやろうということを強調したいと思います。

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(新聞「農民」2007.2.5付)
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2007年2月

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