「農民」記事データベース20070108-762-08

新春対談

いま、大いに語ろう
平和 憲法 教育 農業(2/3)

暉峻 衆三さん
農林水産九条の会呼びかけ人代表
三上  満さん
教育評論家・元全労連議長

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磨けば光る子らの力を信じて

 教育の柱をばらばらに

 三上 憲法、そして九条は、あれだけの戦争をした後にわれわれがつくったんだという、大きなとらえ方が必要ですね。それから日本だけのものではありません。全教の委員長をしていたときに、フィリピンの国会議員から「憲法九条が国民投票にかけられるとしたら、真の投票者はアジア諸国民でなければならない」というメッセージをいただきました。これは本当にいい言葉です。

 暉峻 この前も国際原子力機関のエルバラダイ事務局長が日本に来て、「被爆国である日本がもっと語れ」と言っていました。僕も今回はじめて、自民党の改憲案と対比して勉強してみましたよ。

 三上 教育基本法を改めて読み直してみると、「学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって」という四つの柱を定めています(第二条)。ところが、改悪案では全部ばらばらにされて、気まま勝手にはめ込まれています。しかし、この二条が今の学校に実現していれば、いじめなんか起こるわけがない。

 暉峻 教師の役割は、子どもが持っている可能性、これを表に引き出して光らせていく、その手助けをする、そこにあると思います。どういう子どもでも光るものを持っていて、それを発揮できる条件を持っているというのが、僕の教師生活の体験ですね。

 人間性こわす競争原理

 三上 「これができるようになった」とか、「友だちが何かできるようになってうれしかった」とか、そういう気持ちを子どもたちは持っています。その部分をうんと光らせるのが教育なのに、安倍政権の教育再生プランはむしろ曇らせて、競争に勝たないと喜びが湧かないような人間にしてしまう。勝ち組・負け組の社会にうまく適合するような教育をしようとしていますが、ほんとうに許せませんね。

 暉峻 いま、なんでも競争原理ですよね。

 三上 国会での議論のなかで、「農村の自治的な共同体が失われ、ぎすぎすした人間関係が広がっているのも教育基本法のせいだ」なんて、とんでもない議論がやられていてビックリしました。

 それから、競争や成果主義に走らされているおとなたちも立て直していく必要がありますね。お父さんが疲れて職場から帰ってきて、子どもが「ボク、友だちを助けてあげたんだよ」と言うと、「いま疲れてんだ。そんなことじゃなく、自分のことを考えろ」じゃねえ。「よくやったね」と励ましてあげるおとな自身の成長も必要じゃないですか。

 じつは私は、暉峻さんがいた東京教育大のすぐ近くの文京区立第一中学校にかなり長い間いたんですよ。

 暉峻 そうですか。じゃあ、あのあたりで一緒だったんだ。

 三上 いっぱしの子どもたちがいっぱいいました。今では中小企業の社長さんや弁護士になったり、みんな立派に成人しています。子どもを信頼しなければダメだなってつくづく思いますね。

 暉峻 ところが今やられている教育は、管理でしょう。あしき競争のなかに陥れられていますね。

 三上 全国一斉の学力テストを実施して結果を公表し、自由に学校を選べるようにする。東京ではたいへんなことが起こっています。人気校は教室が足りなくなって特別教室も転用したり、不人気校は生徒が集まらなくて統廃合。しかもこれにバウチャー制(バウチャー=利用券の受給者が学校を選択して教育サービスを受ける制度)を導入しようというのでしょう。めちゃくちゃですよ。

 暉峻 教育基本法の改悪案が与党の横暴で強行されてしまいました。まったく許せませんね。

 三上 教育を担っているのは、教師と学校、父母、地域ですから、しっかりと力を合わせて元の教育基本法を呼び戻し、子どもへの信頼に満ちた教育を大きく再生していくことです。さらに政府は、三十五ぐらいの法「改正」をねらっています。相手を勢いづかせないようなたたかいを今からやっていかないといけません。

(新聞「農民」2007.1.1・8付)
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2007年1月

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