合併拒み地域農業守る長野栄村“脱落者出さない”が農村維持のコツ(2/2)高橋彦芳村長にきく
住民自治を土台に地域農業を守る栄村には、水稲だけでなく、畑作営農集団が二つ、林野経営集団が一つあります。畑作はソバと野沢菜、林野は山菜やキノコを栽培しています。また、村の加工センターを中心にした女性グループがエゴマを作っていたり、助け合ってサツマイモの種イモを契約栽培しているグループやワラビの自然栽培をやっているグループもあります。
集落営農を生かす4つの委員会―村はどういう支援を しているのですか
農業機械の八割を補助財政支援そのものはしていないけれども、基幹作業をする基本的な機械には八割の補助をしています。原則は一台一回です。田植機、トラクター、コンバイン、それに、ソバ用のコンバインにも補助しています。ソバはいま、六町歩くらいになったんですが、まだパイロット事業で開発した七十町歩の農地がほとんど荒れています。桑畑だったんですが、この木をこぐ支援をすれば、もっと増えるんじゃないかと思います。 集落営農は法人にならなくても、ある程度効率を上げていかなければなりません。それと地域農業を守ることを両立させることが大事です。そのうえで私は、集落営農に四つの委員会をつくることを提案しています。
村中のだれでも参加が大切一つは管理委員会で、これは総務的な仕事、組織管理規則を作ったり、代表的行為、会計などをする委員会です。二つめは評価委員会で参加資格の評価や持ち込み農地の評価とともに、作業別能力別に賃金の評価もします。じいさんもばあさんも、トラクターを運転するあんちゃんもみんな同じ賃金というわけにはいかないし、かといってゼロというわけにもいかない。こうしたことも、農業委員会が決めたものに準ずるというのじゃなくて、ちゃんと組織として評価するようにしないといけないと思います。それと生産物の評価。自分で値段をつけられないこともあるけれど、自分で作ったものにしっかりと価値を見出すことが大事です。 三つめは作業委員会で作業計画を立てたり、労働管理をします。「田直し」で整備した田んぼは平均八畝で、六条植えの田植機がどこでも縦横に動けるわけではありません。ですから、大きい田んぼに六条植えを入れて、小さい田んぼは歩行式で植えるといったことや、お年寄りには途中から来てもらって穴植え(補植)をやってもらうということなど、ちゃんと作業計画を立てることが大事です。 四つめの流通委員会は販売先の開拓や価格交渉、消費者との交流や宣伝です。これからは集落営農といえども、物を積極的に売っていくことが大事になるでしょう。 そして、この四つの委員会のどれかに、みんなが入るようにすることが大事です。
担い手育成には若い行動力に期待―栄村の集落営農は携わる農家をできるだけ増やそうとしています。一方、「品目横断的対策」は、大多数の農家を田んぼからしめ出すのがねらい。全然違います。
援農の若い女性が村に残る「品目横断的対策」はとてもじゃないが都府県の中山間地では無理です。成功しないと思います。だから、これには乗りません。ただ、担い手育成はやっていきます。まずは対象者自体の組織を作ろうと思っています。昨年九月、栄村の未来を担う二十代、三十代の若者に、「元気印の若者集団」(仮称)の結成を呼びかけました。いま企画委員会を作って研究を重ねていると聞いています。 若者は探せば百人くらいいるのですが、バラバラでなかなか見えてきません。大衆消費社会は、人間をバラバラにする特徴があります。同じ村、地域に住んでいて、顔は知っているのに、人間的なきずなは強くありません。まずは、このきずなを取り戻すところからやっていこうと思っています。一人ひとりの自由を尊重しながら、何か協力して行動する集団ができることを期待しています。 また、昨年、東京のNPO法人から二人の若い女性の援農派遣を受けました。好評なので続けていこうと思っていますが、そのうちの一人の女性が「どうしても栄村に残りたい」というのです。 私は、住民自治の一つの前提条件として「人間の復興」が必要で、その方法として交流が大事だといってきました。都会の若い女性が栄村に一年間住み、心から村を好いてくれる、こうしたことが「心の肥やし」になるのです。
行政・住民が相補って協働二十一世紀は、行政と住民が相補う協働の時代だと思います。それには顔が見える規模がいいのです。そして、個人の知恵や技を生かして、みんながそれぞれに経営を伸ばしていく。それを支えていくのが地域農政だと思います。
集落の“つぶやき”から年三回発行している栄村農業委員会だより「のぞみ」は、村内の集落営農のとりくみを連載しています。このなかで紹介されていた集落の“つぶやき”を転載します。
若いオペレーターのつぶやき 「稲刈りの最中、耕作者のおばあちゃんいわく『まあ、一服しろや』とオロナミンCを片手にやってきた。正直いってはじめての会話でした。機械を止めて少し話すことにした。すると、おもしろい話題が続々と、とてもあったか味を感じ、楽しいひとときでした。」 組合員の年寄りのひとこと 「おら、できる仕事は、なんでもやるさけ、仲間にしておいてくれ。安心して好きな米つくりができるさけ。」
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(新聞「農民」2006.3.6付)
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[2006年3月]
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