飢餓なくし、食料主権の確立へ
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昨年の十一月二十五日から三日間、バングラデシュの首都、ダッカで「民衆の食糧主権に関するアジア太平洋会議」が開かれました。会議を主催したのは、アジア・太平洋リサーチネットワーク(APRN)と食糧主権に関するアジア太平洋ネットワーク。コーディネーターと通訳は、元APRN理事の伊庭みか子さんです。いま食糧主権をめぐるアジアと世界の運動はどうなっているのか、バングラデシュの農村では、どのような取り組みが行われているのか――。会議に参加し、バングラデシュの新農業運動(ナヤクリシ・アンドロン)を視察した農民連副会長の真嶋良孝さん、全国食健連事務局長の坂口正明さん、茨城・県南農民組合の市川和子さんに語ってもらいました。
会議には、アジア太平洋州の二十四カ国から五百二十人、その他の地域の十三カ国から三十人が参加し、「宣言」と、今後、食糧主権についてアジアと世界の民衆が議論を深めるための草案を採択しました。
坂口 食糧主権をテーマに、世界戦略を視野に入れて、市民レベルでこのような会議を開いたこと、さらにリーダーだけではなく消費者や若い人もたくさん参加していたのはすごいと思いました。二〇〇二年に開かれた食糧サミット六年後会合で確認された食糧主権を広げる運動は、アジアが一番力を入れて実践しています。今回、モンゴルが初参加するなど、幅も広がっていますね。
市川 こういう民衆会議がアジアで開かれたのはすごいことだと思います。学ぶことがたくさんありました。エビ養殖場の廃虚を見て、日本でも農民が生産するのをやめてしまったら、エビ養殖場のように日本は廃虚になってしまいます。
二〇〇六年の会議に向けて、世界中でこの運動を起こすことが、飢餓や地球環境の問題を解決する唯一の道のような気がします。
真嶋 APRNの議長でもあるトニー・トゥーハン氏は基調報告で「国際レベルの運動は、まず地域の運動を大きくしなければならない」と強調したうえで、「民衆が提起する食糧主権は、民衆同士を結びつけ、帝国主義的グローバリゼーションを打倒し、新しい世界秩序を作っていくための手段である」と述べ、「WTOは農業から出ていけ、民衆のための食糧主権を」というスローガンを現実のものにすることの重要性を訴えました。
真嶋 私たちにとって初めての経験でしたが、農民連が主催団体の一つになって、農地改革についての分科会を開きました。私は「戦前はアジアを軍事侵略し、今は大資本が経済侵略をしている日本だが、農地改革については貴重な経験を持っている」として、主に二つの点を強調しました。
一つは、いまフィリピンなどでは地主の抵抗が根強く、地主が私兵を雇って小作農を虐殺するという事態まで起きていますが、日本の農地改革は、地主と小作が直接折衝するのをやめさせ、国が地主から土地を買い上げて小作人に売るという原則を貫いて、こういう事態を防いだことです。
地価も、時価ではなく土地を譲り受けた小作農の経営が成り立つことを眼目にしたため、ときには十アールの水田が鮭三匹分だったと話すと、目を丸くして聞いていました。
もう一つは、農地改革の成果を持続させるために、耕作者だけが農地に関する権利を持つことができるという農地法が今も健在だということと、日本の財界と政府は、こういう農地制度をひっくり返そうとしているということです。
パキスタンの女性ジャーナリストから「日本政府はなぜそんなことをするのか、農民をどこまで追い出すつもりなのか」という質問を受けたり、インドの農民から握手を求められたり、ずいぶん関心をもって聞いてくれているなという手応えを感じました。
市川 私は、女性農民の合同記者会見で、産直運動のことを報告しました。消費者の安全・安心な食べものが欲しいという要望に応えて、農作物を届ける運動を続けていくうちに、お互いに食や健康のことを学んできたこと、食べる人と作る人が結びつき、次第に仲間が増え、今では産直が全国で発展していることを話しました。
女性は男性の下だと言われてきたけれど、食べ物、命を預かるところでは、食べる人も作る人も女性が中心になっていると伝えました。
真嶋 終わった後、記者から「市川さんの話が一番前向きでよかった」と言われましたよ。
バングラデシュ人民共和国 人口約一億三千万人。公用語はベンガル語で、国民のほとんどがイスラム教徒。高温多湿気候で、乾季と雨季がはっきり分かれています。主要産物は米、ジュート、紅茶など。
[2005年1月]
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