水より安い新米の価格
“なんとなんと” 驚きの反響が続々
コンビニや自動販売機で売られている五百ミリのペットボトルに入った水。これと同量の新米の農家手取り(農協仮渡金)は、水よりも安い――新聞「農民」の記事にたくさんの反響が寄せられています。
コンビニで売っている水は百三十七円。一方、ペットボトルいっぱいにつめ込んだお米は、千葉産コシヒカリの仮渡価格六十キロ一万千六百円から計算すると、わずか九十一円にしかなりません。
ペットボトル一本分のお米で、ふっくらおいしいご飯が六杯炊けました。家族三人が一食で食べるのに十分なお米です。それが、水のたった三分の二の値段。市販の水の販売価格のほとんどが、流通経費や容器代だということは百も承知ですが、それにしてもお米の価格は安すぎます。
「アジア民衆キャラバン」で来日したマレーシアのNGO代表、ギルバート・サペさんは「日本の水はなんと高く、日本の米はなんと安いんだ!」と驚きます。日本の米は国際的にみても十分すぎるほど安いのです。
「毎年楽しみにしている新米が、水よりも安いなんて! 日本は『瑞穂の国』なのに、お米の安さを競わせるなんておかしい」とは、新婦人中央常任委員の安達絹恵さん。農家と消費者、そして世界の農民が手を携えて、「農業を守れ!」の声を大きくしていく時です。
仮渡金が空前の安値
ついに輸入米と肩を並べる
今年産米の仮渡価格は空前の安値。とりわけ問題なのは、外米の輸入原価以下の銘柄が続出していることです。
中国米の輸入原価は二〇〇〇年以来、毎年ほぼ千円ずつ上がってきましたが、国産米価格は、昨年の不作による一時的な高騰を除いて、ほぼ一貫して下がり続け、ついに輸入米と肩をならべる水準にまで暴落しています(図1、2〈図はありません〉)。また、一部の銘柄の三等米価格は六千三百円と、輸入原価の三分の二以下のものさえあります。
中国米の生産コストは一俵千円前後(二〇〇一年九月、黒竜江省での聞き取り)。また、ジャポニカ米の中国国内での小売価格は一キロ四十八円で、一俵に換算すると二千八百八十円(日本農業新聞九月十六日)。船賃がかかるとしても、途中で商社などが暴利をむさぼっていると推測されます。
しかし、それにしても年収二〜三万円が一般的な中国農民が作る米の価格と日本の農民が作る米の価格が肩をならべるというのは、きわめて異常です。
減反を強制し、何の対策もないまま裸の競争が
「米改革」の検討過程で、農水省は、減反を撤廃した場合、米価が八千円まで下がり、その後少し回復して一万二千円で落ち着くという試算を公表したことがあります。
また、八月十日に公表された「中間論点整理」は、米の関税がゼロになることも想定して輸入米との裸の競争を強いるとともに、「プロ農家」に限定して、輸入原価と国産米価格との差額を「直接支払い」する構想を打ち出しています。
しかし、今年の米価や仮渡金の水準をみれば、これが単なる「試算」や「構想」ではなく、米を輸入しながらの減反を強制したまま、しかも対策は何も講じないまま、輸入米との裸の競争が現実に突きつけられているといわざるをえません。
農民連ふるさとネットで“顔が見える”米届けよう
「農民連ふるさとネットワーク」は、“作る農家の顔が見える”お米を、米卸を通じて街の米屋さんに届ける“準産直米”の運動を進めています。
「米は国産じゃなければ」というのが九割の国民の願いです。こうした消費者と対話しながら販売する米屋さんは、産地や農家の努力を伝えながら、配達を通して台所と直結し、街づくりのうえでもなくてはならない存在です。
大手量販店中心の「市場原理」「米ビジネス」だけの流通とは違う、もう一つの流れ、「中小の業者を通して産地と消費者をつなぐネットワーク」を一緒に築こうではありませんか。
“水より安い”
米作りを冷遇国際的にも恥
(新聞「農民」読者から)
「新米が水より安い」にびっくりしました。米づくりをこれほど冷遇している日本の農業政策は、国際的にも恥ではないでしょうか。国民の健康を支え、生命を守る食料。米の大切さを国はどう認識しているのでしょうか。私たちが大きな声をあげていかなければなりませんね。
(一関市 千葉禎子さん)
米屋にとって農家との提携は命綱
店頭での対話を重視する米屋にとって、心の通い合う農家と築く提携は命綱です。作り手の顔も心根も思い浮かぶお米は、お客様に安心と信頼を与えます。店先で食と農と生命の根っこを学ぶ人の輪を育てたい。
(東京都台東区金沢米店 砂金健一さん)
(新聞「農民」2004.11.22付)
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