「農民」記事データベース20041018-656-05

今年の米価、こんなに下落 なぜ…

ホント?! 新米が水より安い

収穫の秋 農家の苦労は報われない!

 米どころ東北でも、稲刈りが最終盤を迎えています。たわわに実った黄金色の稲穂が、白亜色のお米に変わる瞬間、本来は喜びに満ちあふれるはずですが、農家の気持ちは晴れません。今年の新米価格が“水よりも安く”暴落しているからです。「そんな、まさか!」と思うかもしれませんが、これは正真正銘、日本の農家が汗水流して作ったお米の話です。


 ごはん6杯分より安いとは

 五百ミリペットボトルに入った水がコンビニや自動販売機で売られています。これと同量の新米の農家手取り(農協仮渡価格)と市販の水、どちらが高いと思いますか?

 コンビニで売っている水は百三十七円。一方、ペットボトルいっぱいにつめ込んだお米は、千葉産コシヒカリの仮渡価格六十キロ一万千六百円から計算すると、わずか九十一円にしかなりません。

 ペットボトル一本分のお米で、ご飯が六杯炊けました。家族三人が一食で食べるのに十分なお米です。それが、水のたった三分の二の値段。市販の水の販売価格のほとんどが、流通経費や容器代だということは百も承知ですが、それにしてもお米の価格は安すぎます。

 こんな米価では、農家は、お米一俵(60キロ)に千円札を四枚もはりつけて出荷しているようなもの。これで、どうして日本の農業と農村が存立しえるでしょうか。

 農民連の真嶋良孝副会長が、この“水よりも安いお米”のことを、七月に「アジア民衆キャラバン」で来日したマレーシアのNGO代表、ギルバート・サペさんに話したところ、「日本の水はなんと高く、日本の米はなんと安いんだ!」と驚いたそうです。賃金や物価を勘案すれば、日本の米は国際的にみても十分すぎるほど安いのです。


「市場競争」導入で買いたたき

 政府はこれまで、まがりなりにも国民の主食・米の需給と価格の安定に責任を負ってきました。ところが昨年六月、食糧法を大改悪。「再生産を確保する」水準で価格を決めていた政府米の買い入れを市場価格を基準にした入札にするなど、米価下落の歯止めを一切とっぱらってしまいました。

 さらに、「需要に応じた売れる米づくりを促進する」(「米改革」)として、米流通を完全に自由化。お米を市場競争にまきこんで、買いたたける仕組みをつくりました。

 その結果、米価は大暴落。農家は米づくりをやめざるをえなくなるかもしれません。そうなれば、国民が食べるお米が足りなくなる事態に…。

 しかし、これこそ「亡国(穀)農政」を進める小泉内閣のねらい。国産米が足りなくなれば、政府の倉庫に山積された百万トンを超えるミニマム・アクセス米を放出できるし、WTO交渉の場でもアメリカなどの市場開放要求を受け入れることができると踏んでいるのです。

 国産米を食べ続けたいという国民の思いを草の根から結集して、政府にぶつける時です。

新婦人中央常任委員 安達絹恵さん

 毎年おいしい新米を食べるのを楽しみにしています。それがペットボトルの水より安いなんて! “作り続けてほしい、私たちがいるから”と切に思います。日本は「瑞穂の国」なのに、お米の安さを競わせるなんておかしい。政府によって米は守られていると思っている人たちが、まだ多いと思う。そういう人たちに本当のことを知らせていかなければと思います。

(新聞「農民」2004.10.18付)
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2004年10月

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