憲法学習農民連全国委員会での講演(上)日本共産党前参院議員 小泉 親司さん
9条改悪への危険な動きアメリカ・財界ぐるみの策動最近、沖縄にいる米軍の海兵隊が三千人も来るかもしれないということで、北海道の矢臼別演習場の調査に行きました。周辺の別海町などの町長さんと話をすると、半分は基地の話、半分は酪農の話で、「海兵隊が来て演習場が拡張されれば、北海道の酪農はつぶれる。農業つぶしは許せない」と、おおいに盛り上がりました。日本の農業をまもるためにも、戦争のきな臭さ、軍靴の響きが強まるなかで、改憲阻止の世論を広げるとともに、戦争する国にしない運動をおおいに進めていただきたいと思います。
自民より際立つ民主の改憲姿勢憲法をめぐる情勢は、戦後史のなかで最も危険な段階に入ったといえます。これまでの内閣、たとえば改憲を主張した中曽根内閣でも口に出せなかったことを、小泉内閣は露骨に言っています。きわだった改憲姿勢です。同時に自民党は二〇〇五年十一月に結党五十年を迎えますが、それまでに改憲案を提案しようとしています。もう一方の民主党は、小泉内閣・自民党と競うように改憲姿勢を示し、二〇〇六年までに改憲案を出すと言っています。国会の憲法調査会での議論では、「九条は古くなった」と、むしろ民主党の方が自民党よりも際立っています。 こういう動きはどこから来ているかというと、一つはアメリカです。イラクの状況にみられるように、日本をアメリカと一緒に戦争できる国にさせる、そのために九条が邪魔だと九条つぶしの圧力をかけてきています。 もうひとつは財界です。夏の経団連セミナーでは国家基本問題委員会をつくり、憲法改正のあり方も含めて検討するとし、改憲の方向を打ち出しました。二大政党づくりと相まって、アメリカ・財界ぐるみで改憲をしようという動きが強まっています。
国民4人に3人9条改悪に反対しかし私たちは、こうした改憲に向けた危険な動きとともに、これを阻止する可能性と条件にもしっかり目を向けることがとても大事です。九条をめぐる世論調査をみると、たとえば「論座」(九月号)という雑誌では、改憲すべきかどうかとの問いに、憲法全体では賛成・反対が拮抗していますが、九条では改正が二四%、反対が七六%です。これは、九条改悪には反対だ、という強い世論を示しています。私たちはこのことをしっかりつかまえておく必要があると思います。 もう一つは、日本の憲法は硬性憲法だということです。どういう意味かというと改正しにくい憲法だということです。憲法を変えるには九十六条に基づいて、国会で三分の二以上でこれを議決する、そのうえで国民投票で過半数を占めなければなりません。これはけっこう高いハードルです。
改憲派にとって高いハードルもたとえば九条を改正するといっても、自衛隊を国軍とするのかどうか、戦争放棄をなくすのかどうかなど、改憲しようという人たちのなかにもさまざまな議論があってどう改正するのかまとまった案はいっさいありません。国会では、自民・民主あわせれば三分の二を超えていますが、仮に改憲案が出てきたとしても通る保障はまったくありません。そして国民投票で過半数をとれるのかどうか。国民投票は今までやったことがありません。「R25」というリクルート社の雑誌の中に「憲法に必要な国民の過半数ってなに?」とあって、仮に「国民の過半数」を「有効投票数の過半数」にしてしまうと、投票率が六〇%の場合、わずか国民の三割程度の賛成で憲法改正を決定してしまうことになる、これでは九十六条の解釈上おかしいじゃないか、と指摘しています。 また雑誌「世界」では、憲法を改正するのであれば「国民」の解釈を二十歳以上にするのはおかしい、九条を変えられて戦場へ行くのは若者なんだからもっと年齢を下げるべきではないか、こんな議論をしています。国民投票をめぐってもこんなに高いハードルがあるということです。 いま改憲論者たちは、このハードルを低くしようと、国会の憲法調査会を憲法常任委員会にして改憲案を出せるようにする、また国民投票法案を国会に提出しようとする動きがあります。当面、こうした動きにも注意を払っていただきたいと思います。 私たちはこういう条件と可能性に着目して、いまの憲法をいかに政治や暮らしに生かすのか、憲法のすぐれた点を国民に訴えていくことが非常に大事になっています。 (つづく)
(新聞「農民」2004.11.1付)
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[2004年11月]
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