「農民」記事データベース20041018-656-07

愛媛

直売所繁盛で町に活気

高齢者、女性が主役「生きる励ましに…」

関連/開店前から行列「百姓百品の店」
  /地域農業振興の力に

 いま中山間地域で、直売所を使って地元の農産物を販売して、農家の女性や高齢者の生きがいを生み出し、農業経営を一変させた取り組みが注目されています。愛媛県内の百姓百品産直組合(西予市)と内子町「からり」もそのひとつです。家族農業で産直に取り組み、笑顔と元気を増やしています。


開店前から行列「百姓百品の店」

売り上げも組合員も増えた

 西予市 旧野村町

 愛媛県の山間部にある小さな町・野村町。今年四月に周辺町村と合併して、今は西予市。ここに農民連に団体加入している百姓百品産直組合があります。

 県都松山市にある「コープえひめ束本店」。その生鮮食料品売り場の一角に「野村町百姓百品産直組合」の常設の店があります。五、六メートル四方の小さな売り場ですが、同町の新鮮な野菜に米、お茶、巻き寿司や餅、漬物といった加工品も並び、まさに百品。

 このコーナーができてから、開店前に行列ができるようになりました。午後二時過ぎには、ほとんどの野菜や加工品は売切れに。品物には、それぞれ生産者の名前が貼られているから、ひいきの農家が作った野菜を探す人も。

 「○○さんの野菜がほしい」「この野菜はどう料理するの?」―専属パートの店員三人にひっきりなしに注文や質問が入ります。それもそのはず、新鮮で味がよくても曲がっていて市場に出せないキュウリが五、六本入って百五円。隣のコープ売り場には、まっすぐなキュウリが一本で九十八円。売り場を提供している生協も、最初戸惑ったそうですが、今では客数や売上げが伸び、結果的には生協側にとってもプラスになっています。

 県都松山市に常設店を開設

 旧野村町は、人口約一万人の典型的な中山間地域。「シルクとミルクの町」といわれた同町も、養蚕の衰退で桑畑から野菜づくりへ。町は、じいちゃん、ばあちゃん、女性たちの出番をつくり、町を活性化させようと、「あまっている野菜を出荷しませんか?」と町民に呼びかけました。

 この取り組みの中心になってきたのが、当時町の営農指導センター長をしていた和気数男さん。今は百姓百品産直組合の組合長です。

 九八年六月には町の補助も受けて、松山市内に百姓百品産直組合の常設店をオープン。新鮮な野菜、漬物、豆腐などが市民の評判を呼び、毎月五百万円の売上げという繁盛ぶり。しかし、屋根だけの店舗で駐車場もなかったことから、三年前にすぐそばの「コープえひめ束本店」に移設しました。

 作り手の顔が見える農業を

 百姓百品産直組合に登録している会員は、約二百七十人。年間売上げは一億円を超えました。ほとんどが六十歳以上の高齢者で、なかにはすし屋さんや米屋さんも。一つの値段は、平均百三十円。一〇%は生協のテナント料、一〇%は産直組合の手数料、残りの八〇%が農家に還元されます。

 毎朝六時過ぎ、Aコープ店の広場に会員が軽トラやバイク、なかには電動車に朝取り野菜や加工品を積んで集まってきます。多いときで二百五十ケース。約二時間かけて旧野村町から松山市まで、最近、町の補助を受けて購入した二トントラックで運びます。

 運転手のひとり佐藤行征さんは、野菜の出荷もしているので、毎日大忙し。今年は台風でハウスが飛ばされ、ホウレンソウが全滅。いまはネギを出荷しています。トマトを出荷しているお年寄りは、「売れ残りなんて、めったにない。産直組合に野菜を出荷できるようになって生きる励みができ、健康です。ありがたい」「自分で決めた値段で、売れたら売れただけ収入になるのもうれしい」と、話していました。

 和気さんは、「農村では、作り手の顔が見える農業、地産地消の農業こそが求められている」と言います。百姓百品産直組合ができてから、しばらく耕作をやめていた農地をまた耕やすなど、荒れた農地が減少してきました。来年四月には、地元の「乙亥ドーム」(体育館や温泉施設などが入った多目的な施設)に、産直店を出店する予定です。百姓百品産直組合では「組合に入って、野菜づくりで地域の活性化を一緒にめざしませんか?みんなで気持ちのよい汗をかいてみましょう」と呼びかけています。

(新聞「農民」2004.10.18付)
ライン

2004年10月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2004, 農民運動全国連合会