愛媛直売所繁盛で町に活気高齢者、女性が主役「生きる励ましに…」
いま中山間地域で、直売所を使って地元の農産物を販売して、農家の女性や高齢者の生きがいを生み出し、農業経営を一変させた取り組みが注目されています。愛媛県内の百姓百品産直組合(西予市)と内子町「からり」もそのひとつです。家族農業で産直に取り組み、笑顔と元気を増やしています。
開店前から行列「百姓百品の店」売り上げも組合員も増えた西予市 旧野村町愛媛県の山間部にある小さな町・野村町。今年四月に周辺町村と合併して、今は西予市。ここに農民連に団体加入している百姓百品産直組合があります。県都松山市にある「コープえひめ束本店」。その生鮮食料品売り場の一角に「野村町百姓百品産直組合」の常設の店があります。五、六メートル四方の小さな売り場ですが、同町の新鮮な野菜に米、お茶、巻き寿司や餅、漬物といった加工品も並び、まさに百品。 このコーナーができてから、開店前に行列ができるようになりました。午後二時過ぎには、ほとんどの野菜や加工品は売切れに。品物には、それぞれ生産者の名前が貼られているから、ひいきの農家が作った野菜を探す人も。 「○○さんの野菜がほしい」「この野菜はどう料理するの?」―専属パートの店員三人にひっきりなしに注文や質問が入ります。それもそのはず、新鮮で味がよくても曲がっていて市場に出せないキュウリが五、六本入って百五円。隣のコープ売り場には、まっすぐなキュウリが一本で九十八円。売り場を提供している生協も、最初戸惑ったそうですが、今では客数や売上げが伸び、結果的には生協側にとってもプラスになっています。
県都松山市に常設店を開設旧野村町は、人口約一万人の典型的な中山間地域。「シルクとミルクの町」といわれた同町も、養蚕の衰退で桑畑から野菜づくりへ。町は、じいちゃん、ばあちゃん、女性たちの出番をつくり、町を活性化させようと、「あまっている野菜を出荷しませんか?」と町民に呼びかけました。この取り組みの中心になってきたのが、当時町の営農指導センター長をしていた和気数男さん。今は百姓百品産直組合の組合長です。 九八年六月には町の補助も受けて、松山市内に百姓百品産直組合の常設店をオープン。新鮮な野菜、漬物、豆腐などが市民の評判を呼び、毎月五百万円の売上げという繁盛ぶり。しかし、屋根だけの店舗で駐車場もなかったことから、三年前にすぐそばの「コープえひめ束本店」に移設しました。
作り手の顔が見える農業を百姓百品産直組合に登録している会員は、約二百七十人。年間売上げは一億円を超えました。ほとんどが六十歳以上の高齢者で、なかにはすし屋さんや米屋さんも。一つの値段は、平均百三十円。一〇%は生協のテナント料、一〇%は産直組合の手数料、残りの八〇%が農家に還元されます。毎朝六時過ぎ、Aコープ店の広場に会員が軽トラやバイク、なかには電動車に朝取り野菜や加工品を積んで集まってきます。多いときで二百五十ケース。約二時間かけて旧野村町から松山市まで、最近、町の補助を受けて購入した二トントラックで運びます。 運転手のひとり佐藤行征さんは、野菜の出荷もしているので、毎日大忙し。今年は台風でハウスが飛ばされ、ホウレンソウが全滅。いまはネギを出荷しています。トマトを出荷しているお年寄りは、「売れ残りなんて、めったにない。産直組合に野菜を出荷できるようになって生きる励みができ、健康です。ありがたい」「自分で決めた値段で、売れたら売れただけ収入になるのもうれしい」と、話していました。 和気さんは、「農村では、作り手の顔が見える農業、地産地消の農業こそが求められている」と言います。百姓百品産直組合ができてから、しばらく耕作をやめていた農地をまた耕やすなど、荒れた農地が減少してきました。来年四月には、地元の「乙亥ドーム」(体育館や温泉施設などが入った多目的な施設)に、産直店を出店する予定です。百姓百品産直組合では「組合に入って、野菜づくりで地域の活性化を一緒にめざしませんか?みんなで気持ちのよい汗をかいてみましょう」と呼びかけています。
(新聞「農民」2004.10.18付)
|
[2004年10月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2004, 農民運動全国連合会