参院選挙徹底検証第2弾!しっかり見抜こう どれがホンモノ!ニセモノ?(2/2)各党の選挙公約を比べてみると…
財界が主役―そのねらうものは関税引き下げ、株式会社の農業参入、価格保障全廃など露骨に「食料・農業・農村基本計画」の見直し「食料・農業・農村基本計画」見直しの中間論点整理が、参院選後の七月末にも出されます。食料自給率四五%目標の棚上げ・放棄、農産物の価格保障の全廃、株式会社の農業参入の解禁など、危険な内容がめじろ押し。参院選でも大いに暴露し、批判していく必要があります。
参院選終わるのを待って…「基本計画」見直しの舞台は、農水省の食料・農業・農村政策審議会の企画部会。一月三十日にスタートし、これまで十回開いてきました。しかし、食料自給率の論議は、初回のわずかなやりとりだけ。その内容は、農水省が「現行基本計画は食料自給率が唯一の指標になっており…施策の具体的な指針たりえない」などと、自給率向上を放棄してきた責任を棚上げしたのに対して、消費者委員が「食料の自給率をもっと真剣に考えていかなければならない」と反論。ところが論議はこれで打ち切られ、秋以降に先送りされてしまいました。参院選を前にできるだけ国民を刺激するのを避けるねらいです。 国民の最大の願いである自給率向上の論議を党利党略で先のばしして、あわよくば目標そのものを葬りさる――これが、小泉内閣が進める国民無視の「財界農政」です。 この企画部会の部会長は、生源寺眞一東大大学院教授。「米改革」の素案をつくった生産調整研究会の座長を務めた人物です。さらに生源寺氏は財界のシンクタンク「日本経済調査協議会」(日経調)の「農政の抜本改革―基本指針と具体像」(5月16日公表)と題する報告書のとりまとめに主査として深く関わってきました。
財界と政府が二人三脚で財界の提言と農政の基本方向を同一人物がまとめるという異常事態――ここに、「基本計画」見直しの本質が集約されています。日本経団連の奥田碵会長は昨年十月、小泉首相の「農業鎖国」発言を引き継いで「『家族的営農』という何千年も前からのビジネスモデルを根本的に改革する必要がある。…株式会社の参入を含む経営主体の多様化などを通じて、農業を現代的な産業として再編成していく必要がある」と放言。今まさにこうした方向が、財界・政府の二人三脚で「基本計画」に盛り込まれようとしています。 財界の求める方向は、(1)WTOやFTA(自由貿易協定)による関税の引き下げ・撤廃、(2)価格保障の廃止と対象を限定した直接支払い(所得補償制度)の導入、(3)株式会社の農業参入の解禁。 自由化と価格保障の廃止によって、国内産農産物の価格が輸入価格の水準まで下がれば、米価は一俵(60キロ)三〜四千円。日本の農業・農村は計り知れないダメージを受け、食料自給率は今よりもっと下がることは確実です。だから、自給率論議を先送りしたのです。 そして、小泉首相は、アメリカ・シーアイランドで開かれたサミットで、七月末の大枠合意をめざすWTO交渉の進展を強く促す声明に合意。同交渉には、関税に上限を設ける提案もされており、日本の農家は、米の関税が維持されるかどうかが最大の関心事で、JAグループも「上限関税阻止」を掲げて集会を開いたばかりです。 財界に執心して、国民の願いを無視し、抜き差しならない交渉を予断するような小泉首相は、資質が欠けていると言わざるをえません。
「価格保障」で三つのゴマカシ農水省は「WTOの規律に従う必要がある」として、価格保障の廃止と直接支払いの導入を企画部会に提案しています。削減対象の価格保障をやめて、対象外の直接支払いにするというもの。しかし、これにはいくつものゴマカシがあります。一つめは、アメリカもEUも価格保障を存続させており、廃止しようとしているのは日本だけだということ。アメリカは一昨年、九六年にいったん廃止した価格保障(不足払い)を復活。EUも水準を引き下げたとはいえ存続させ、その分を直接支払いで補いました。 二つめは、確かにWTO協定上価格保障は削減対象ですが、日本はウルグアイラウンドで約束した水準を大幅に超えて削減しており、価格保障を今よりも充実させる余地は十分あるということ。 三つめは、直接支払いが削減対象外なのは、生産や価格とリンクしないか、あるいは生産制限の実施などが条件。そして、農水省が直接支払いを導入する最大の眼目は、対象を限定し、生き残る農家をしぼり込むことであり、大多数の農家は、価格保障廃止の“痛み”だけ押し付けられるということです。 「痛みに耐えて明日がある」というゴマカシが通用したのは、今や昔。年金でも雇用でも、そして農業でも、小泉内閣の大ウソが明らかになりつつあります。
「農地取得」全国展開へ動き急さらに、「構造改革特区」で認めたリースによる株式会社の農地取得を全国展開させる動きも急です。農水省は企画部会への提出資料に「特区の特例措置は…評価の結果、弊害が生じないと認められる場合、全国展開することとされている」とわざわざ書き込み、この方向に進む可能性をにおわせました。全国展開の可否は、小泉首相が本部長を務める特区推進本部の評価委員会が判断しますが、農水省は現在、そのための調査結果を作成中。結果は六月二十五日の評価委員会に示され、判断は八月にも下される可能性があります。 そもそも「特区」構想は、日本経団連の奥田会長らが経済財政諮問会議で言い出したこと。相当の不耕作地がある区域に限定するとして認めた農地法の無法地帯を、全国展開する道理はまったくありません。
国民的共同を強めて農政の転換を財界がもっぱら自らの利益のために農政をあやつり、農業破壊を進めているのが現状です。これに対抗する国民の共同を強めるとともに、参院選で農政の転換をはかる必要があります。
(新聞「農民」2004.6.21付)
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[2004年6月]
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