日本の安全対策現場を視察
アメリカのBSE対策のずさんさが浮き彫りになる中で、日本では、生産者、関係機関などの懸命の努力で安全対策がとられています。その現状を確認するため、群馬県内の前橋市家畜市場、県中央食肉衛生検査所、県家畜衛生研究所を訪ねました。
家畜市場牛トレーサビリティきびしく管理を…家畜市場の加藤力理事長は「耳標番号のミスで、百万円の牛二頭を出荷できず、死なせてしまった。市場はBSE対策に二千万円のコンピュータを導入した」と言います。飼料成分表までもつけなければならない厳しいトレーサビリティの実態と、それへの対応の苦労を詳しく語り、「ずさんなアメリカ牛肉の輸入は許せない」と怒って言いました。
食肉検査食肉の安全性検査を時間かけ二重三重に中央食肉衛生検査所では、五十五人の職員のうち所長を含めて四十一人が獣医師の資格を持ち、エライザ法検査を行っています。BSEの全頭検査の開始以来、一日平均八十頭、これまで約四千六百頭の食用牛を検査。基準よりも一〇%高い数値を設定し、一回の検査時間は約六時間、擬陽性が検出されると、さらに四時間の検査を行います。最後は東京の国立検査所に朝八時半までに搬入しなければならないため、ほとんど徹夜の作業。「通常でも夜の七時や八時はザラ」と主任の久保雅敏さんは説明してくれました。鈴木宣夫所長は「無菌検査室での長時間作業は緊張の連続で、ストレスのたまる厳しい職場」と語ります。
死亡牛検査世界トップの体制は現場職員の努力で家畜衛生研究所の正職員は十三人ですが、全員獣医師です。死亡牛検査が昨年四月に開始されて以来、今日までに二千八百三十一頭、一日に八頭から二十九頭の牛をエライザ法検査で調べています。悪性プリオンの一番たまる延髄検体を取り出す作業が、吹きさらしの粗末な解体場で行われていました。白い防護服に三重の手袋、活性炭マスクをつけた三人一組のチームで、ワイヤーでぶら下げた死亡牛の首をリーダーが切断。そこから検体部位を取り出していた一人が、大学を卒業して間もない若い女性獣医だと後でわかり驚きました。 夏は、腐敗した牛の死体に大小のウジがわき、さらに腐体から発散する硫化水素のために、貯蔵コンテナの銅パイプが半年足らずでボロボロになってしまうとのこと。チームリーダーの北爪浩三さんは「自分はともかく、若い職員の身体が心配」と指摘します。
アメリカに対し妥協ない主張を松本尚武所長は「ご覧のような検査現場の努力が、世界のトップの検査体制を支えており、牛肉の安全が守られていることを広くみなさんに知ってもらいたい。アメリカとの交渉では妥協なく食の安全を主張してほしい」と強く訴えていました。
(新聞「農民」2004.2.16付)
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[2004年2月]
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