「農民」記事データベース20031201-613-01

WTO協定で押しつけられた輸入品

保育園で今どき脱脂粉乳!!

全国44%の園で3〜6歳児に

関連/保育園で今どき脱脂粉乳!!
  /県内産牛乳へ切り替え
  /12・9食と農を守る中央総行動

 みなさん、保育園では今でも脱脂粉乳を飲んでいるって知っていますか? 「えぇ? 戦争直後のことじゃないの?」いいえ。実は現在でも四割以上の保育園で、輸入脱脂粉乳(=スキムミルク)が使われています。輸入先はニュージーランド。「輸入の脱脂粉乳ではなく、地元の牛乳を子どもたちに飲ませたい」という保護者や保育関係者の願いにもかかわらず、どうしてそんな時代錯誤が続いているのか――裏側を調べてみました。


 厚生労働省保育課の調査によると、現在、脱脂粉乳を使っている保育園は、全国の約二万二千カ所中、九千六百カ所。去年一年間に給食用に輸入された脱脂粉乳は、千五百二十トンにものぼります。

 保育園むけ脱脂粉乳の輸入を一手に行っている「(財)児童育成協会児童給食事業部」に、さっそく取材を申し込んでみると…。「インターネットでそちら様のホームページを拝見しましたが、うちとは“合わない”ので、来ていただいても困ります」と取材拒否。“合わない”理由は、「そちらは国産農産物を使って、日本の農業を守れと言うことのようですが、うちはニュージーランドから脱脂粉乳を安く輸入して配分する団体ですから」と言うのです。

 「安く輸入できる」カラクリは、実はWTO協定にありました。保育園給食の脱脂粉乳は、無関税で輸入されてくるのです。WTO協定のなかで、無関税で輸入しなければならないという輸入枠が何品目か日本に押しつけられましたが、成長期まっさかりの子どもたちが飲む保育園向けの脱脂粉乳は、まさにその無関税枠の輸入なのです。

 しかし厚労省は「国として脱脂粉乳を奨励したことはない。栄養価が高いからもっと飲みましょう、と言ったこともない」と言います。ではなぜいまだに脱脂粉乳なのか?

 公立保育園の場合、給食は市町村が実施しているので、脱脂粉乳の使用を決めるのも市町村です。東京都をはじめほとんどの政令指定都市は牛乳(生乳)に切り替わっているので、脱脂粉乳の使用が続いているのは小さな市町村や私立保育園が多いということになります。しかも多くの場合、脱脂粉乳を飲まされるのは三〜六歳の幼児。二歳までは牛乳を飲み、三〜六歳は脱脂粉乳、小学校に上がってまた牛乳に戻るという、深刻な味覚の混乱を引き起こしています。

 これは、国が定める保育単価の基準で、三歳以上の給食費用が減らされてしまうのが原因です。このため自治体によって補助金を上乗せしたり、保護者から給食費を徴収したりして、牛乳給食を実現しているのです。

◆   ◆

 また児童育成協会児童給食事業部の役割も重大です。同事業部の前身は、戦後の援助物資として給食に脱脂粉乳が押しつけられた時代に、その受け入れ団体として発足。無関税輸入に移行してからも給食用脱脂粉乳の輸入を一手に行い、現在に至っています。同協会の副理事長は元経団連専務理事の小山敬太郎氏が務めるほか、理事には経済同友会終身幹事の品川正治氏など、財界関係者がズラリ。厚労省から同協会へ“転職”する役人もいるといいます。

 しかし、脱脂粉乳から牛乳に切り替える自治体は着実に増えており、給食用脱脂粉乳の輸入量は毎年減りつつあります。これまで脱脂粉乳を推奨していた秋田県でも、今年九月、日本共産党の山内梅良議員が「県は地産地消を推進しているのだから、子どもたちにも地元の牛乳を」と求めたところ、知事は「県の姿勢として、地元産の牛乳に切り替えるよう市町村に働きかけていく」と答弁。子どもたちに輸入脱脂粉乳ではなく、自然なままの牛乳を飲ませるためのカギは、私たち国民の世論が握っています。

(新聞「農民」2003.12.1付)
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2003年12月

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