「農民」記事データベース20030324-579-07

日本の農業、食料守る世論大きく

大規模稲作農家の座談会(下)

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 消費者が求めるのは、作る人の顔が見えるもの

 横山 「大綱」は「消費者重視、市場重視の考えに立った需要に合った米づくり」と言って、農家と消費者・国民を対立させている。消費者はとにかく安いものを欲しがっているのに、農家はそれを作らないと。

 しかし、消費者が本当に求めているのはそうではない。国産のもの、安全なもの、作る人の顔が見えるものだ。そのうえで安ければこしたことはないということ。八割、九割の国民は「外国産はいやだ」といっている。

 安部 まったくその通りだ。私は、七百袋の米を消費者に直接販売しているが、時々「輸入農産物から残留農薬検出」といった新聞「農民」の特集を入れてやるんですよ。すると、かなりの反応があって、「こういうことをもっと知らせてほしい」という声が返ってくる。そういう消費者はたくさんいるし、どんどん増やしていく運動が大事だと思う。

 大島 私も、かつては「もう少し安くならないか」とよく言われたが、最近は「こんなに安くちゃ、農家はたいへんですね」という声が返ってくるようになってきたと実感する。これは、偽装表示事件などの影響もあると思うが、消費者も身近に農業がないと、将来たいへんなことになるということが分かってきたからだと思う。

 業者も外米にソッポを向き始めた

 横山 最近は業務用の世界でも、国産か外国産かが問題になるようになってきた。お客がお店の人に、「どこ産ですか?」と聞く。お店も納入業者に「国産を持ってこい」という。業者は、痛くもない腹を探られるのがいやだから、輸入米の購入を手控える。昨年、ミニマム・アクセス米のSBS入札で売れ残りが出る異変が起きたのはそのためだ。

 消費者も、業者も、外国産米にソッポを向き始めた。それなのに国は、輸入は義務だと言い張っている。食糧庁の需給計画に載る輸入米は加工用原料の十万トンだけだが、本当はその他に、飼料用備蓄で二十五万トン、海外援助用備蓄で六十万トン抱えている。裏帳簿に八十五万トンもあるわけだ。政府も始末に困っているのが実情だ。

  WTO協定では、輸出国は、余るときは無理やり押し付け、不足になれば輸出しなくてもいい。まったく都合のいい、身勝手な論理だ。

 白石 日本の農業と食料を守る世論をもっと大きくしていくことが重要だ。そのためには、個人の努力も大事だが、農民連が運動の到達点を土台にして発信していけば、消費者の受けるインパクトも大きい。

  フランスの農民デモみたいに、道路に農産物をばら撒くようなデモンストレーションも必要ではないか。今だったら消費者の理解を得られるかもしれない。

 安部 国産の米を欲しいという消費者はたくさんいるが、どうやったら混じりっけのない本物の米を買えるのか知らない消費者もたくさんいる。全国の農民連がいっせいに運動すれば、ものすごく大きな力になる。

 横山 それを米屋さんとタイアップしてやっていこうというのが、準産直米の運動だ。米屋さんもどこの誰が作ったか分からない米を売っていたのでは、生協やスーパーとの価格競争に負ける。こういう提携を全国でいっせいに広げたい。

 大いにものを作り、地域から政治を変えよう

 白石 消費者が求めるのは米だけじゃない。入口は米でも、大豆も、小麦も、野菜も、みんな国産で安全なものがほしいとなる。その時に問題は、供給する力があるかどうかだ。

 安部 農協にはもはやその気力が乏しい感じだ。今年も、地元の農協の幹部職員が大量にやめる。職員の首を切って活動が小さくなり、販売量が減って、またリストラする悪循環だ。農政運動でも、“もの作り”でも、がんばっているのは農民連だ。

 横山 最近、農民連のホームページを見て、共感し、「農民連に入りたい」とメールをよこした農家もいる。そのくらい農民連が果たしている社会的役割は大きい。それに見合う大きな組織にしていくことが大事だ。

 白石 北海道ではとくに一次産業が地域経済の柱だ。ちょっと視野を広げて見ると、地元の農産物を使って特徴を出している商店など、地域の農業との関わりを抜きにできない人たちがたくさんいる。そういう人たちとの共同を広げ、地方から政治を変えていくことも急がれる課題だ。

 大島 「大綱」によって、米が市場原理に投げ込まれるという危機感が地域で高まっている。「担い手」の育成に力を入れるようなポーズを見せてはいるが、それが偽りであることを大規模農家は見抜いている。それから市町村合併も百姓つぶし、地域つぶしだという認識が広がっている。これらは、今度の地方選挙に必ず影響するだろう。

 白石 いっせい地方選挙は、米つぶし「大綱」を葬り去り、ミニマム・アクセス米の縮小・廃止をかちとる絶好のチャンスだ。そういう訴えを広げて、仲間を増やしていこう。

(おわり)

(新聞「農民」2003.3.24付)
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2003年3月

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