合併の押し付けはごめん小さくても輝く自治体へ
小泉内閣による強制合併の嵐が吹き荒れるなか、「小さくても輝く自治体フォーラム」が二月二十二〜二十三日、長野県栄村で開かれました。会場のまわりは、人の背丈ほどの積雪。ここを会場に選んだのは、雪深い山あいの町村でも立派に地方自治の精神を体現しているというメッセージを込めてです。
フォーラムに46町村長が参加長野県栄村で開催食料・自然・文化支える町村の思い込め全国に約二千五百ある町村は、国土の七割を占め、農林漁業によって国民の生存と生活を支え、自然環境と文化の基礎を支えています。ところが小泉内閣は、三千ある市町村を千に減らすことを打ち出し、アメとムチを使い分けて町村を無理やり統合し、“市”につくりかえようとしています。 フォーラムは、こうした合併の強制に強く反対し、“顔が見える”小規模自治体の個性あふれる住民自治を発展させようと開かれたもの。五人の町村長の呼びかけにこたえて、北は北海道から南は鹿児島の奄美大島まで、全国各地から四十六人の町村長が参加。百十人の議員を含む六百二十人が集いました。
「顔が見える」小さな自治体を県も支援フォーラムでは、田中康夫・長野県知事が記念講演。「住民が、県政は自分の身内の問題、市町村政は家庭の問題ととらえられるような県政をやりたい」と述べた田中知事は、「人の顔が見え、集落のきずながあり、地域の人たちによって運営されるのがこれからの行政。県は、『自律』をめざす小さな自治体を応援していく」と語りました。 続いて、呼びかけ人の首長のうち、公務で参加できなかった北海道ニセコ町の逢坂誠二町長を除く四氏が意見を交換。 国は「合併しないと地方交付税が減らされる」「行政権限を取り上げる」とムチ打って、町村を合併に追い立てています。これに「真正面から反対する」と述べた群馬県上野村の黒澤丈夫村長は、「そもそも地方の税源である交付税の配分方法を国が勝手に決めることが許されるのか」と訴えました。 また、国がちらつかせる合併特例債というアメについて、福島県矢祭町の根本良一町長は「毒アメ」と指摘。そのうえで「昭和の合併は中学校を、明治の合併は小学校を、それぞれ義務教育にするという大きな説得力があった。しかし『平成の大合併』は“お金がないから”。説得力が薄い」と語りました。
“農業立村”こそ町村の生きる道フォーラムでは、合併の強制に反対するとともに、人口は少なくても、住民とともに輝く自治体のとりくみを交流。とくに“農業立村”への熱い思いを、各地の町村長が次々と語りました。 「米麦やきのこを作る法人経営、それも女性だけの法人が積極的に町づくりに関わっている」と述べた福岡県大木町の前町長、石川隆文さんは、 ふるさとの自然と環境、水を守るため、先人が築いたきれいな掘割を維持しようととりくんでいることを紹介。「こういう住民参加の試みは、小さい自治体だからこそできる」と報告しました。 “実践的な住民自治”を掲げ、補助事業に頼らない「田直し」事業や、在宅介護を中心にした「ゲタ履きヘルパー」などが注目を集める長野県栄村。同村は今年、介護保険料を千九百六十七円から千九百五十円に引き下げます。全国的には値上げラッシュのなかで、高橋彦芳村長は「住民の生きざまを見ていれば引き下げしかない」と言います。そのうえで、「行政サービスは国が画一的に決めるものではなく、町村が創造するもの」と語りました。 また、全国的にもめずらしい村立農業高校がある北海道真狩村の筒井末美村長は「全国一の食用ユリをはじめ、基幹産業である農業を守っていけば小さくても生きていける」と力強く発言。大島つむぎの発祥地である鹿児島県龍郷町の川畑宏友町長は「肉牛、サトウキビの農業、そして伝統産業である大島つむぎの振興に全力をあげる」と述べました。 フォーラムは最後に、「自然と農林業を支える小規模自治体を守ることは、全国民の課題であり、政府の責務」などとする「雪国からのアピール」を確認しました。
(新聞「農民」2003.3.10付)
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[2003年3月]
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