小泉内閣がねらう 庶民大増税 ■下■立正大学法学部教授・税理士 浦野広明
相続税の大増税〜農地の納税猶予特例の見直しも「方針」は、「従来より広い範囲に適切な税負担を求める必要がある」と言います。また「答申」は、「より広い範囲に課税」する必要があるとして、次の増税案を示しています。 (1)課税最低限である基礎控除額(五千万円+一千万円×法定相続の数)の引き下げ、(2)小規模宅地の評価減の縮減(生存権的財産への課税強化)、(3)死亡保険金・死亡退職金の非課税額(五百万円×法定相続人の額)の縮減、(4)農地の納税猶予特例の見直し、(5)相続税の補完税である贈与税の減税。 「方針」「答申」は、巨大資産家の相続税負担を大幅に軽減する一方で、現行制度のもとで相続税が課されない大多数の庶民に相続税の負担をさせようとしています。
退職金にも大増税!退職金には所得税と住民税が課されます。 退職所得の金額は、(退職金の額マイナス退職所得控除額)×1/2で求めます。退職所得控除額は、勤続二十年目までは一年につき四十万円、二十一年目からは一年につき七十万円です。 「方針」は、「勤続年数に応じて一律に控除額が算出され、また勤続年数が短期間でも所得の二分の一のみにされるなど合理的とは言えない。退職金の課税のあり方を見直す必要がある」と述べています。 「税調」がいうように長期勤続の「優遇」である1/2課税を廃止したら、税負担(所得税・住民税)は大幅に増えます。退職所得控除が縮小されればもっと増税になります。
法人課税〜農民連などの任意団体にも徴税攻勢「答申」「方針」は、法人課税(会社だけでなく任意団体を含む)について、次のような重大な指摘をしています。 (1)中小企業、公益法人等、協同組合等の低税率の廃止、(2)公益法人等、人格のない社団等(農民連などの民主団体)の収益事業課税を廃止し原則課税、(3)赤字法人の税務調査厳密化と新たな課税、(4)法人事業税の一律導入(外形標準課税)。 外形標準課税は、〔利潤+給与総額+支払利子+賃貸料〕を課税対象としますから、赤字でも課されます。
増税は強権的な税務行政に直結する空前の庶民大増税は、強大な課税権力が弱い立場の納税者を押さえつけることなしにはできません(納税者の権利など眼中にない)。 「方針」は、税務行政について次のように述べています。(1)いっそうの機械化の推進(コンピューターによる納税者の資料収集等による監視)、(2)納税者に立証責任を負わす(現行では、税務の争いにおいては、課税庁が課税処分の理由を立証する義務がある)、(3)現在の更正処分の除斥期間(通常三年)や徴収権の消滅時効(五年)をもっと延長する、(4)長期にわたる財産移転の記録、確認、名寄せ・突合等をする。 国会の国民不在は、ひどいものです。与野党なれあいで、重要な法案をほとんど審議もせずに通してしまいます。選挙で思い切って政治地図をぬり替えないと、たいていの無法がまかり通るのが今の日本の政治状況です。 このとんでもない「税調」方針の中味を広範な国民に知らせて、国民的な反対の声があがる状況を作り出さなければなりません。多くの人に税金問題で立ち上がってもらうために、働きかけを強めましょう。 (おわり)
(新聞「農民」2002.10.21付)
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[2002年10月]
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