小泉内閣がねらう 庶民大増税 ■上■
農民連の顧問税理士の浦野広明さんに「小泉内閣がねらう庶民大増税」について寄稿してもらいました。
小泉税制改革の方向小泉税制改革は、私たちが今までに経験していない、想像を絶する庶民大増税の内容です。 日本では、国税に関する法律の大半が内閣によって提出され、無修正で成立する現実が横たわっています。増税法案が国会に出てからジタバタしても間に合いません。 小泉税制改革の方向は、政府税制調査会(内閣総理大臣の諮問機関。以下「税調」)の中期答申(二〇〇〇年七月。以下「答申」)と基本方針(二〇〇二年六月。以下「方針」)が詳しく述べています。「税調」が発表する文書を実質的な税制改定案ととらえて、悪法を成立させないように、素早く対応しましょう。
消費税は大増税、さらに五百万〜一千万円台も課税事業者に!「方針」は、「税率を引き上げ、消費税の役割を高めていく必要がある」と言います。また「答申」では、「EC諸国においては、標準税率が一五%以上二五%以下と定められている」と強調しています。本音は、EC並みの税率アップです。 さらに「方針」は、中小業者の「免税点」(課税売上高三千万円以下)を大幅に縮小(五百万〜一千万円)すべきであると言います。これでは、多くの農家が課税業者となり、所得に関係なく消費税を納めなくてはならなくなります。簡易課税は「制度の廃止を含めた抜本的見直しを行うべきである」としています。 「方針」は、消費税の申告回数についても言及しています。「更に申告納付の回数を増やす方向で検討すべきである」と述べており、国税庁の幹部も雑誌などで繰り返し、「毎月納付とすることで、滞納を未然に防止できる」と語っています。 また「方針」は、「地方消費税の充実確保を図っていく」としていますが、地方税法の改定による税率アップの企ても無視できません。
所得控除に大ナタ現行の所得控除(表1)は、税額の計算にあたって課税標準(各種の所得金額)から一定の金額を控除するものです。
「方針」は、所得控除のうちの人的控除(表1の(8)〜(16))は、「基本的には、家族に関する控除を基礎控除、配偶者控除、扶養控除にすべき」とし、人的控除のさらなる見直しについて、「本人の基礎控除のみとする」という考え方もあると述べています。 人的控除のなかの老年者控除(所得税で五十万円、住民税で四十八万円)は、六十五歳以上で合計所得が一千万円以下の人に適用されます。「方針」は、この老年者控除について、「大幅に縮減する方向で検討する必要がある」と述べています。 社会保険料控除はどうでしょう。社会保険料控除は、本人や配偶者、親族の社会保険料(健康保険、国民健康保険、介護保険、雇用保険、国民年金、厚生年金など)を全額控除するものです。「方針」は、これの「対象範囲を吟味しなければならない」と、縮減をにおわしています。 生命保険料・損害保険料控除は、「廃止を含めて見直す」としています。 これでは、所得控除で残るのは、通常の人の場合、基礎控除だけ。課税所得が大幅に増え、とんでもない大増税になります。
最低税率適用範囲の縮小で低所得者はとんでもない増税に現行の所得税の最低税率は一〇%です(課税所得金額が三百三十万円以下に適用、表2)。住民税の最低税率は五%です(課税所得金額が二百万円以下に適用、表3)。
「方針」は、「所得税について見ると、現在、納税者(民間給与所得者)の約八割が最低税率(一〇%)の適用」、「個人住民税については、納税義務者の約六割が最低税率(五%)のみの適用」になっているとし、「最低税率の幅を縮小することが今後の選択肢」だと述べています。 適用範囲の縮小は、例えば、所得税の最低税率一〇%の適用者を百万円以下にし、百万円超は二〇%にしようということです。低所得者には、とんでもない増税をもたらします。 (つづく)
(新聞「農民」2002.10.7付)
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[2002年10月]
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