全国研究・交流集会への報告(2/3)農民連事務局長 笹渡義夫
〔3〕「米改革」のねらいは、小泉「改革」による米・農業への大企業支配と、輸入自由 化の総仕上げ農民の苦悩の原因は、自民党政府がWTO協定を受け入れ、これを絶対視した農政を進めてきたことにあります。 「米改革」のねらいは、世界的に食料不足が進行しているなかで、大企業が農業、それも主食である米をビジネスチャンスにしようとするねらいにそって規制緩和し、川上から川下まで大企業の支配を強めることにその中心的ねらいがあります。 これは、長年にわたる大企業の野望であり、従来の米政策の破綻を逆手にとり、小泉「改革」に乗じて、一気に完遂しようというものです。特に重大なのは、かねてからの大企業の強い願望であった農地の取得を、いよいよ農地法の大改悪によって実現しようとする動きです。 「米改革」のもうひとつのねらいは、米の輸入自由化の総仕上げです。アメリカが最近、WTO交渉でミニマムアクセスの拡大とコメの関税率の引き下げを日本に強く迫ることを明らかにしました。「米改悪」の方向が進められれば、国産米だけで国民に主食を供給することができず、さらに輸入せざるをえなくなります。「生産調整研究会」がMA米の影響について「心理的なもの」といって、その弊害を認めず、事実上、タブー視したのもそのためです。 こうした「米改革」の影響は米だけにとどまりません。今でさえ輸入と価格暴落に苦しむ野菜や果樹、畜産にも及び、世界最低の食料自給率はさらに低下して、国民は「国内産農産物がほしい」と思っても、輸入食料に依存するしかなくなるでしょう。 「米改革」は、WTOと小泉改革による「戦後農政の総決算」というべきものです。 それだけに、農民にいっさいの幻想を許さないほど冷酷なものです。こういう「政策」の名に値しない、究極の米・農業つぶしは破綻せざるをえません。
〔4〕農民の多数者結集への本格的挑戦を三つのたたかいに総力を
(1)「日本の米と田んぼを守れ」の国民合意を広げるたたかいを全国いっせいに
(1)食の安全と米・農業を守る運動を両輪にして「米と田んぼを守るたたかい」は、農業を根こそぎ破壊する攻撃を許さないたたかいであり、農民連の真価発揮のときです。「今、たたかわずしていつたたかうか」。全国一斉に行動を起こしましょう。 BSEや輸入農産物の残留農薬問題などで、食に対する国民の不安は高まり、安全よりも儲けを優先している食品企業に不信を募らせています。こうした世論に働きかけて、安全・安心・信頼できる農産物の安定供給と、日本の農業を守ることを太く結びつけて小泉政治を包囲する運動を広げましょう。 米の輸入自由化を阻止するたたかいを上回る規模の運動を積み上げて、農民や国民の立場に立った真の米政策を実現しましょう。 イ、すべての都道府県と地域で食健連の運動を強化し、「二〇〇二グリーンウエーブ」(十〜十一月)を「米を守るたたかい」を軸に大波をおこしましょう。 ロ、都道府県や地域で幅広い共同による集会やシンポジウムを計画しましょう。国民署名、九月地方議会請願運動、宣伝行動などを具体化しましょう。 ハ、米を守る中心的な資材としての新聞「農民」号外を、全農民、全国民規模で大量配布し、広範な団体に活用を呼びかけましょう。
(2)「農村を守るたたかい」――農民の怒りに依拠して農村での共同を広げよう「米改革」は、経営を守るために懸命に創意工夫して努力する農民や、農村の「共同」に対する攻撃です。これまで政府と与党が農協中央を利用して悪政を推進してきましたが、今度は、農協の存在を否定したり、大企業の流通支配のなかに取り込もうとしています。 この間の単位農協や県中央会との懇談では、政府への激しい怒りが示され、農民連への共感がかつてないものがあります。宮城県では七つの単位農協が千人規模の集会を開くなど、たたかいが広がっています。こうしたたたかいを全国に広げるために、農協を励まし、大きな視点で共同を広げる努力を強めましょう。 イ、すべての単位農協や都道府県中央会に足を運んで「農民連の見解と提案」をもって懇談し、意見を聞きながら、一致点を大切にして共同を広げましょう。農業委員会との懇談・対話も広げ、建議を政府に集中させましょう。 ロ、「米改革」は自治体農政にとっても重大な矛盾と困難をもたらします。自治体が住民と一緒になって国に声をあげることが重要です。懇談・申し入れ、提案を積極的に進めましょう。宮城県町村会は、「米改革」に反対する決議をあげています。町村会にも足を運びましょう。 ハ、米自由化阻止のたたかいでは、「自由化反対」の一点での共闘組織が各地につくられ、大きな役割を果たしました。こうした共同組織もつくりましょう。
(2)生産から撤退せず、大いにものを作って反撃しよう
(1)ものを作ること自体がたたかいの重要な側面に私たちは「米改革」を許さないために国民的たたかいを組織し、そのために総力をあげます。 同時に、現実の営農、生産を維持・発展させる運動を、もう一つの柱として取り組まなければ、けっして攻撃を跳ね返すことはできません。もの作りの呼びかけなしには、農民はけっして元気にならないでしょう。 「米改悪」の攻撃の矛先は農民の生産に向けられています。農民のあきらめに乗じて、農民を農地からも締め出そうとしているとき、私たちが生産をあきらめたり、農業から撤退したなら、まさに彼らの思うつぼです。 たしかに攻撃の規模は大きいものがありますが、あくまで「ものを作ってこそ農民」を旗印に助け合い、支えあってもの作りを進めましょう。そのこと自体がたたかいの主要な側面となっています。
(2)安全・安心・信頼できる国内産の農産物を求める国民との連帯その際、これまでの運動で切り開いてきた安全・安心・信頼できる国内産の農産物を求める国民世論の存在と、こうした国民との連帯・合意・信頼を構築することは、攻撃を打ち破るうえでも、現実に生産したものを流通させて経営を維持するうえでもカギをにぎります。 米でいえば、ますます大商社・大手量販店中心の流通となり、中小の米卸や小売は淘汰の対象にされています。農協系統も商社の系列に組み込まれ、東西のパールライスなどを通じて量販への供給を中心にした流れが強まるでしょう。 こうした流れは、米だけでなく、野菜や果実、畜産などの分野での大企業の買いたたきや、流通支配にも拍車をかけることになるでしょう。 儲けのためには手段を選ばず、国民や消費者、ましてや農民の利益など眼中にない量販中心の流通に対置して、国民や消費者、農民の利益をかさねあわせ、ウソやごまかしのない本物の農産物を作って勝負するこれを基礎に、全国にネットワークを張りめぐらせ、これに参加する農民をいかに増やすか、私たちと提携する中小の流通業者や消費者・国民をどう増やすかがまさにポイントです。 産直協が文字通り、「日本列島三千キロふるさとネット」としての機能をもつために発展・強化されること、すべてのブロックネット、県ネットを機能させることは差し迫った課題です。
(3)自治体ぐるみ、集落ぐるみで生産を守る運動を農山村は、農業を基幹産業にして成り立っています。「米改革」は、農民への打撃にとどまらず、農村社会そのものを破壊します。農山村をはじめ、生産と農地を維持するために様々な工夫や努力をしている自治体の足を引っ張り、自治体農政の展開に重大な困難を持ち込みます。 自治体と協力して生産を広げること、具体的な提案を行って町ぐるみ・村ぐるみで、生産を維持し、広げるための取り組みを強めましょう。 地域の生産を守るために、がんばっている朝市や直売所グループ、多様な生産グループとのネットワーク作りを進めましょう。 生産を広げることを軸に、地域の条件にあった振興策をすすめるうえで、自治体合併は障害になります。合併の押しつけに反対する住民ぐるみの運動を進めましょう。
(3)最大の反撃は、農業で頑張る人を増やす「仲間作り」と、世論と組織のすそ野を広げる新聞「農民」の拡大を一気に広げること
(1)農民の声に耳を傾け、苦難をともに打開する仲間として激励し、働きかけようたたかいのなかで、会員を増やし、新聞「農民」を大きく広げることを正面にすえて、組織の大飛躍を勝ち取ることが、たたかいのもう一つの柱です。 最近、千葉県連は、これまで農民連とは縁遠いと思われていた大規模農家と対話して会員を拡大し、「準産直米」への参加を広げています。経営を維持するために規模を拡大して努力してきた大規模農家ほど、米価暴落の打撃が大きく、「米改革」への不安を高めています。こうした動きは、農業をめぐる危機的状況が広がっているなかで、これまで切り開いてきた農民連の運動が、多くの農民に受け入れられ、多数を結集する展望が広がっていることを示しています。このことに確信をもって多数の農民と対話を広げることが大切です。 農業の先行きに多くの農民が展望を見い出せないなかで、農民の失望は深いものがあります。とりわけ今度の「米改革」は、農家に少しの“幻想”さえも許さない冷酷なものであるだけになおさらです。こんなときは、呼びかけても農家が反応してくれないということは間々あります。「面倒を見てやる」というような態度で接しても相手にしてもらえないでしょう。一方通行的な対話は拒否されるでしょう。悪政にさらされているという点では共通しているものの、農家の思いはそれぞれであり、努力している内容も違います。 一人ひとりの農家が何を考え、どんな要求をもっているのか。現場に足を運んで耳を傾け、「ともに苦難を打開する仲間として自主性や主体性を尊重しながら対話し、働きかけること」が特に大切です。
(2)新たな組織的前進へ――全国あげて挑戦しよう今日の情勢は、組織が小さすぎることがもはや許されないことを示しており、農民連組織の拡大が農民の利益擁護と日本農業の発展にとって欠かせないことがいよいよ明確になっています。 農民連結成以来の十四年は、激しい農業つぶしとのたたかいの連続でした。こうした攻撃のもとで農協中央が自民党農政の推進役にさせられるなかで、農民の失望が広がり、農民団体のなかには存在が危ぶまれている団体さえあります。 こうしたなかで農民連は、結成時と比べれば量の面でも質の面でも大きく前進してきました。 一人ひとりが会費を拠出して組織を作り、運営することから出発し、あくまで要求を基礎に、資本からも政党からも独立した組織を確立する努力は、農民運動にとって新しい挑戦であり、全国の奮闘はその方向を切り開いてきました。これを確信に、さらなる前進へ、全国あげて挑戦しましょう。 農民連が一人ひとりの会員の力に依拠して組織を前進させるうえで克服しなければならないことは、 イ、全国や都道府県連の方針が一人ひとりの会員に伝わらず、運動が役員や中心的な活動家の奮闘の域から出ていないこと。それは、単に方針が伝わらないだけにとどまらず、会員の要求が組織に伝わらないということと裏腹の問題です。それぞれの地域の農民の最も切実な要求が組織に反映されて運動化するうえでも、単組や県連を通じて全国にも反映されて全国センターとしての機能にかかわる問題でもあります。 ロ、支部・班が、地域に責任をもつ組織として全国や都道府県の方針を、その地域の農民の要求や実情を踏まえて具体化し、自主的・主体的に運動すること。 ハ、これらのことを認識し、援助する役員の力量、役員・活動家、専従者の絶対的な不足、全国連や都道府県が組織拡大を中心課題として意識的・計画的に追求しきれていないなどの点があります。 研究交流集会で、大いに議論・交流を深め、この秋から来年の大会をめざして、組織の大きな飛躍をつくるために全力をあげましょう。
(3)千人以上の組織の役割は決定的に重要全国的な組織の前進をかちとるうえで、千人前後の道府県連の役割は決定的に重要です。これらの組織に共通することは、一定の段階まで前進したものの、その後の前進がつくれず、一進一退をくりかえしていることです。上記の点も踏まえ、大いに交流・探求しましょう。 千人台の組織は二千人、三千人の組織へ、五百人台の組織は四ケタを超える組織へ、さらに小さい組織は最低限五百人を超える組織をめざして組織を拡大しましょう。
(4)どこの県でも前進できるチャンス、先進の経験に学ぼう結成以来、ほとんど組織現勢が変わらなかったり、百人前後やそれ以下の組織が一定数あります。こうした組織が前進への転機をつくるのがいまです。組織が小さいといっても、組織を前進させた経験が全国にはたくさんあります。組織を前進させた県連の最大の教訓も先進の経験に学んだことでした。
(新聞「農民」2002.9.16付)
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[2002年9月]
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