「農民」記事データベース20020722-548-03

米・農業つぶす新たな策動

生産調整研の「中間取りまとめ」

関連/希代の農業つぶし

 食糧庁の生産調整研究会は六月二十八日、新たな米・農業つぶしをねらう「中間取りまとめ」を公表しました。前号に引き続き、問題点を検討します。


輸入自由化と「米ビジネス」のために減反強化と米つぶしねらう

 これまで、減反は「食管制度を守るため」「米の輸入を防ぐため」と言われてきましたが、食管制度がつぶれ、米輸入が自由化された九五年以降は「米価を維持するため」の減反ということになりました。しかし、減反をいくら拡大しても、米価は下がるばかり。自民党政府の政策の破たんは誰の目にも明らかです。

 輸入に依存の意図は明白

 そこで研究会が言い出したのは「誰のため何のための減反か?」です。

 「誰のため」か? 政府と研究会が、やたらに力を入れている「米ビジネス」のためです。

 「何のため」か? 加工用やエサ用を含む超安値の米作りを迫り、それができないのを見越して米輸入を完全に自由化するためです。

 減反強化で農民の生産意欲をますます失わせるとともに、米の生産基盤そのものをこわして、いやおうなく輸入に依存せざるをえなくする――こういうねらいが透けて見えます。

 「二段階減反」が描くものは

 「中間取りまとめ」は減反を(1)数量配分による経済統制型の減反(経過期間)と、(2)市場原理型の減反の二段階で実施する青写真を描き、具体策は政府・与党に検討をゆだねています。

 第一段階は当面の「経過期間」。(1)減反面積の配分ではなく、農民に対し「これ以上絶対に作るな」という数量を、しかも銘柄別に配分する、(2)数量配分は政府・都道府県以外の「第三者機関」が行う、(3)現在の減反配分は「リセット」(チャラに)し、県・地域間の生産数量目標の調整も「第三者機関」が行う、(4)減反(需給調整)をやったうえで出る余り米は農民の「自己責任」で処理する――というもの。

 しかし、政府でさえできなかった銘柄別の需要予測を「第三者機関」が本当にできるのか、大いに疑問があります。

 そして、農民にはこのあやふやな予測にもとづいて生産統制的な数量配分を行って、少しでも余り米が出ればペナルティ的に超安値処理を行わせる――いったい、どこが「強制感のない」減反だというのでしょうか!

 さらに、稲作経営安定対策廃止だけは明確ですが、転作奨励金がどうなるのかなどは不明のまま。しかも次に見るように、流通は完全自由化する一方で、農民には戦時中のような生産統制を強要する――こんなやり方が通用するとでも思っているのでしょうか!

 暴落の水準は現在の半値に

 第二段階は、市場原理型の減反。食糧庁が研究会に提出した資料によると、(1)国は減反目標を設定せず、せいぜい市場の「情報」を提供するだけで、転作奨励金などの支援を一切しない、(2)農民は暴落を覚悟のうえで生産目標を決める――。

 食糧庁が考えている暴落水準は、現在の半値の一俵八千円。これで米生産が激減し、不足になって一万二千円まで回復するという「市場原理」を想定していますが、これでは日本の米生産は壊滅するでしょう。

私たちは提案します
 (1)まずミニマム・アクセス米輸入を削減・廃止し、減反面積を十三万ヘクタール減らすべき。
 (2)数量配分を含む減反の強要を中止すること。EU諸国は生産調整実施を条件に、保証価格引き下げ分を補てんしています。しかも二十ヘクタール以下の中小農家に対しては生産調整実施を免除しています。日本も、この程度のことは見習うべきです。
 (3)転作の主流作物になっている麦・大豆の価格保障を充実し、栽培・流通条件を改善すること。野菜・果実などの輸入激増をおさえること。
 (4)回転備蓄方式をやめ棚上げ備蓄にすること。


農民も消費者も中小流通業者も犠牲に国民の主食・米を大企業に明け渡す

 「中間取りまとめ」は米流通のあり方について「管理という発想ではなく、米ビジネスを発展させるものである」べきだと言っています。

 農水省は昨年秋、米価暴落の原因が「価格形成の主導権が川下に移行」したこと――つまり、食管制度を廃止し食糧法体制になって、大手スーパーや大商社が米流通に公然と乗り出し、「川下」を支配したことにあると分析しました。

 さらに、今大問題になっているインチキ表示(ニセ新米、ニセ銘柄米、ニセ国産米)も、大企業の米流通支配を許した後で横行したのです。

 そうであれば、大企業の買いたたきやインチキ表示をきびしく規制するのが政府の責任のはず。

 ところが「中間取りまとめ」は「米ビジネス発展」のため、自主流通制度も廃止して“平時”には完全な自由流通を認めると言い出しました。

 政府の責任を投げ捨てて国民の主食・米を大企業に明け渡すことは(1)農民に対する買いたたきをさらに野放しにし、(2)中小米卸・小売業者の淘汰をいっそう進め、(3)消費者にとっては、ますます正体不明の米の横行を野放しにする――ことを意味します。

 また、“平時”は大企業に米を明け渡し、“有事”に生産・流通統制をやると言っていますが、そんなに簡単に大企業から米を取り戻せるとでも思っているのでしょうか。

私たちは提案します
 (1)国民の主食・米の供給・流通管理は、国の責任を果たすことを前提に、中小米卸・小売業者の役割を尊重して改善すること。
 (2)インチキ表示の横行や輸入食品からの残留農薬の検出が相次ぐ事態のもと、国の責任による検査とチェックを強化すること。とくに輸入米のブレンドに対するチェックを強めること。


備蓄がなくなったら米を食べるな!
 大手米卸「神明」社長の藤尾益也氏(流通部会長代理)。「食糧安保の問題で言ったら、国は二百万トンとか百五十万トン持って、それがなくなったら食べるなという話にしたほうが分かりやすい。十年か二十年に一回起きることのために、蓄えなければいけないのか」
 国民の税金で養っている政府に主食・米の供給に万全の対策を求めるのは当然のこと。それを「食べるな」とは、なにごとでしょうか! それとも、不足すれば値をつり上げやすいことを見越し、備蓄を減らし、不足感をあおりたてる予行演習なのでしょうか?

減反百五十万ヘクタール!
 前NHK解説委員の加倉井弘氏(流通部会長)。「生産者は、もうこれが限界だと言うが、量のコントロールで価格を支持するとなると、減反面積は百二十万ヘクタール、百五十万ヘクタールになる。これをやる覚悟があるのか、うかがいたい」(第六回生産調整研究会、五月三十日)

(新聞「農民」2002.7.22付)
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2002年7月

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