米政策、中間取りまとめ希代の農業つぶし稲経(稲作経営安定対策)廃止明言
「裏切られた」の声一月から米政策の「改革」を検討してきた食糧庁生産調整研究会は六月二十八日、「中間取りまとめ」を公表しました。米価暴落や百万ヘクタールを超えるにいたった減反をなんとかしてほしいという農民の願いを裏切り、新たな米・農業つぶしの方向を打ち出した――これが「米政策の再構築に向けて」と題された「中間取りまとめ」の特徴です。
そのポイントは(1)「輸入しながら減反とはなにごとか!」という農民の怒りに背を向けて、ミニマム・アクセス米輸入には何一つ手をつけず、(2)米価の回復・保障どころか、「市場原理」にもとづいてさらに引き下げ、(3)輸入自由化を前提に減反強化と米つぶしをねらい、(4)米の安定供給に対する国の責任を投げ捨てて大企業の流通支配を進めること。 同時に、肝心な点は今後の検討課題とされ、政府は七月から九月にかけて自民党などと一緒に具体化を進め、来年の通常国会に「食糧法」改悪案を提出する予定。全国農協中央会も七〜八月に組織討議を行い、九月には政策提案を公表するとしています。 国民の主食・日本農業の大黒柱である米と稲作を守る運動はいよいよ本番。本紙は今後、新聞「農民」号外を発行するとともに、米と農業を守るための農民連の提案などの大キャンペーンを計画しています。 皮切りとして、官僚臭と財界臭プンプンの「中間取りまとめ」を二回に分けて「解剖」します。
ミニマム・アクセス米の削減廃止こそ出発点現在の米価暴落と大幅減反の最大の要因は、九五年から始まったミニマム・アクセス米の輸入。米政策の「再構築」をはかるうえで、これをどうするかは、絶対に避けて通れない課題です。 しかし、「中間取りまとめ」は「心理的影響はあるが、実害はない」という「共通認識」をタテに、ミニマム・アクセス米には一切触れずじまい。 「ミニマム・アクセス米は加工用や援助用にあてているから、国産米には影響を与えていない」というのが言い訳です。しかしミニマム・アクセス米が輸入されるまでは加工・援助米には国産米が使われていたのであって、これは全然言い訳になりません。 減反面積は九〇年の八十三万ヘクタールから百一万ヘクタールへと十八万ヘクタール増えました。一方、二〇〇一年のミニマム・アクセス米輸入は七十七万トンで、面積にすると十三万ヘクタール。減反増加分の大部分はミニマム・アクセス米輸入によることは明らかです。 ウルグアイ・ラウンドで農業交渉の直接の責任者であった塩飽二郎農水審議官(当時)は「米市場を開くのに、なぜ転作を強化しないのか。まるで手品だ」と指摘しました(「日経」九四年二月七日)。研究会の議論はタネもシカケもばれた「手品」そのものではありませんか。 もう一つ問題なのはWTO交渉への影響です。 日本政府は、及び腰ながらもミニマム・アクセス米の削減を要求して交渉しているはず。しかし、アメリカなどが「影響がないならば、削減する必要はないではないか」と迫ってきたら、いったいどう答えるつもりなのか。それとも、ミニマム・アクセス米削減は国内向けの宣伝文句にすぎず、削減を要求する気はまったくないのか――。いずれにせよ、きわめて無責任な態度だといわなければなりません。
「いらない米」「余っている米」まで輸入を押しつけるミニマム・アクセス制度そのものの廃止と、義務でもないミニマム・アクセス米輸入を削減すべきです。 米価の回復どころか「市場原理」でさらに引き下げ研究会の座長は“米価を維持しようとしたために米の消費が減った。価格競争に耐えて需要拡大を”と言い、「中間取りまとめ」も「(安い)業務用需要に的確に対応」することを求め、あげくのはてに「余りものに値なし」と冷たく言い放っています。 実際、「中間取りまとめ」のどこを見ても、米価を回復させる提案は一つもなく、あるのは「暴落」を起こすために、市場原理にもとづいて自主流通米入札の仕組みを改悪することだけ。これは、大企業にますます米を買いたたかせるという宣言にほかなりません。 さらに重大なのは、今かろうじて米価の暴落を補てんしている稲作経営安定対策の「廃止」を明言していること。しかもこれに代わる仕組みには何一つ具体的に触れていません。 いま、村で「裏切られた!」という声があがっているのは当然のことです。
(1)米価暴落によって、稲作農民の手取りは一日三千八百二円。生活保護をはるかに下回ります。 (新聞「農民」2002.7.15付)
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[2002年7月]
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