「農地と地域農業守る」特集 農業委員会―各地のとりくみから―
7月、全国三分の二の市町村でいっせいに農業委員選挙 地域農業守る大切な機会この七月、農業委員選挙が全国約三分の二の市町村で行われます(沖縄は九月)。輸入農産物の激増と国内産品の価格暴落、BSEの発生など、農家や農業は深刻な状況になっており、危機打開が緊急に求められています。こうしたなかで行われる農業委員選挙は、農家や農地、地域農業を守り、振興させるうえでも非常に大事な選挙です。
農民の議会農業委員会は、委員の大半が農民の選挙で選ばれるため、「農民の代表機関」「農民の議会」といわれています。 農業委員会は、農民の要求を国や自治体に反映させるための建議や意見書を採択したり、農地の転用や売買・貸し借りなどに対する許認可の権限を持っています。その権限と機能を最大限に生かせば、農地や農家を守るうえでも大きな役割を果たすことができます。 各地の農民連会員も、今度の農業委員選挙に立候補します。一人でも多くの農民連会員が農業委員になって、農民の要求実現や地域農業の振興のために奮闘することが期待されています。
農地を守る農業委員会の日常の大事な仕事は、農地を守り、有効な利用をはかることです。 農外の企業などが投機的な目的で農地を取得しようとした場合、不許可処分にしたり、無断転用に対する原状回復命令を出す権限が農業委員会にはあります。 農地の減少や荒廃を防ぎ、農民の土地所有を守っていくうえでも重要な役割を果たすことができます。千葉県多古町農業委員会は所英亮会長(千葉県農民連北総農民センター会長)の提案で、荒廃した谷津田を住民参加で自然公園にしたという実績をあげています。 長野県栄村農業委員会は、増え続ける耕作放棄地を何とかしようと、集落の現状を詳しく調査し、具体的な活用策も示した調査書を村長に提出しています。 農地法が二年前に改正され、株式会社が農業生産法人の要件を満たせば農地を取得できるようになりました。その場合、毎年の事業報告書を提出させ、要件を満たさなくなったときには、必要な措置を勧告できる権限が農業委員会に与えられました。 この権限を使い、農外企業の農地取得を許さないように厳しく監視し、農地を守ることは重要な仕事です。農業委員会は、まさに「農地を守る番人」です。
農村の振興農業委員会は、農業・農村の振興計画をつくり、その実施を推進したり、調査や研究、啓蒙・宣伝を行ったり、地域農業や農家にかかわる問題で意見を公表し、建議することなどができます。市町村長や県・国に対して提出する建議や意見書は、法律で認められた唯一の「農民の代表」機関の意思として扱われます。このため、国や自治体が無視できないほどの重みを持ちます。 野菜の輸入急増で価格が暴落、農民連はいち早くセーフガードの発動を求める運動を呼びかけました。それに呼応して農民連会員の農業委員が先頭にたって働きかけ、農業委員会で意見書を採択し、国に要請するなど、暫定セーフガードを発動させるうえで、各地の農業委員会は大きな役割を発揮しました。 和歌山県那賀町農業委員会は、「有機農業でまちづくりを」と町に提案。この提案が町議会でも支持され、町あげて有機農業に取り組むことを盛り込んだ宣言が採択され、実行されています。 京都府宮津市農業委員会は、集落座談会を繰り返し行い、地域の「村づくり計画」を作成。それがきっかけとなり、集落に営農組合が設立され、さらに住民の九割が参加する「元気村・いきいき夏祭」を開くまでに発展しています。 このほか農業委員会は、農地の相続税納税猶予を受けるときに必要となる適格者証明の発行、農業者年金制度の相談や受給などの実務を行います。さらに中山間地域等直接支払い制度における集落協定の承認や対象行為の確認などの仕事もあります。
(新聞「農民」2002.6.10付)
|
[2002年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会