着実に前進しつつある―アジア農民の運動―
確信得た東南アジア・東アジア地域農民会議アジアの農民たちの運動は着実に前進しつつある――四月一日から五日までインドネシア・ジャカルタで開かれた「農民の権利に関する東南アジア・東アジア地域農民会議」は、このことを強く確信させてくれました。会議にはインドネシアのほか、東チモール、フィリピン、タイ、マレーシア、日本、さらに国際的なNGOであるFIANから総勢百二十人が参加。主催は世界的な農民運動組織「ビア・カンペシーナ」です。 一日は、農民の権利侵害についての「フィールドツアー」(既報)。二日から四日まで、みっちり会議が行われ、最終日は「貧農/農民の権利に関する連帯声明」のまとめとインドネシア人権委員会に対する要請行動。 日本、マレーシア、東チモールの組織はビア・カンペシーナに未加盟ですが、そういう分け隔てはない民主的運営が貫かれた会議でした。 二日と三日は、各国の農民の権利侵害の実態と農民運動について報告しあい、経験を共有しあうことに時間が費やされました。 農民連からも「カントリーリポート」を準備し、私(真嶋)が報告のさわりの部分を、なんと英語で(!)読み上げ、伊庭みか子さんが適切に補ってくれました。フォーラムやシンポジウムではなく、明確な議題を持つ国際会議に農民連が参加し、発言したのはこれが初めてのことです。
フィリピン貧農運動(KMP)初の女性副委員長各国の報告は、共感と驚きの連続でした。いくつかを紹介すると――。フィリピン貧農運動(KMP)は農民、貧農、農場労働者の九〇%を結集する大きな組織で、マルコス独裁政権下の八五年に結成されました。KMP初の女性副委員長イメルダさんは、弾圧や暗殺のなかで本当の農地解放を求めてたたかっていることをリアルに報告。「すべての貧農が団結し、自分たちの要求と運動の正当性を信じて、他の社会層とともにたたかうことによって、改革を一つずつ進めている」と強調しました。
東チモール、世界で一番若い国に押しよせる権利侵害独立したばかり、世界で一番若い国である東チモールの代表、エゴ・レモス氏は「独立後に押し寄せているアメリカなどの巨大企業や、世界銀行・国際通貨基金(IMF)の援助プログラムが人口の九九%を占める農民に対する権利侵害の中心になっている」と指摘。ハイブリッド種子と農薬をセットにして押しつけるやり方や、安い輸入農産物の増加によって生産コストの半値に買いたたかれている実態を告発しました。
「緑の刑務所」と呼ばれるマレーシアの大農園穀物自給率が二六%で日本よりもさらに低いマレーシア代表のポール・シナッパン氏は、農業の中心がヤシ油とゴムのプランテーション(植民地的大農園)で、国民が食べる米や肉などは輸入に依存していると報告。しかもプランテーションを支配しているのは多国籍企業で、農場労働者の月収は二百リンギ弱(一リンギ=三十五円)。マレーシアのプランテーションは別名「緑の刑務所」と呼ばれ、農園の中で生まれ、中にある私営の小学校に行き、働いて結婚して、一生農園から出ないで死んでいく人もいるとのこと。プランテーション労働者組合は、公教育と住宅、医療保険などを要求してたたかっています。
タイ、共感覚えた静かだがずっしりした報告タイ貧困者連合(アセンブリー・オブ・プアー)の代表(サワデー・ブーンライ氏)の報告は静かですが、ずっしりとしたものでした。貧農=貧困者を追い出す巨大開発計画(そのほとんどが日本などの「援助」による)に対する反対運動の連合体として貧困者連合が結成されたのは九六年。「貧農とその他の社会階層が協力して抵抗しなければ勝利できない」「地域・課題ごとのリーダーを育成する」ことを過去の経験から学び、運動の中心課題にすえているという報告には共感を覚えました。
「貧農/農民の権利に関する連帯声明」の要旨貧農・小農は世界の人びとの食糧を生産し、世界を養っているが、農民は自分たちが生産するものを食べることさえできない極度の貧困に追いやられている。農業はどんな国にとっても発展のバックボーンであり、われわれは土地に対する権利、十分な食料に対する権利、農民が自らを組織する権利…が鍵であることを確認した。 (新聞「農民」2002.4.29・5.6付)
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[2002年5月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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