「農民」記事データベース20020211-526-01

政府は全額補償しろ

1・31怒りのBSE要求中央行動


665戸24億円超える損害請求

BSE対策法の早期成立を

 「もう待てない。政府は損害の全額を補償しろ」――凍てつく寒さをついて、農民連・畜全協・全国食健連が一月三十一日にとりくんだ「BSE損害補償請求運動」は、「明日への希望をなんとか見出したい」と願う畜産農家など約百五十人が全国からかけつけ、マスコミが注視するなかで行われました。対策を怠りBSEを発生させたうえにその責任を認めようとしない政府への怒りを爆発させ、野党四党が共同提案する「BSE対策緊急措置法を成立させよ」などと、シュプレヒコールを響かせました。

 損害総額は数千億

 六百六十五戸、二十四億五千万円! 農民連が、わずか一カ月の間に、酪農家、肉牛農家を一軒一軒まわって集めた「BSE損害請求書」の総額です(一次分)。しかし、これはまだ全国の農家が受けた被害の氷山の一角で、その総額は数千億円規模になると見込まれます。佐々木健三・農民連会長は、「二次、三次のとりくみで、全農家から『損害請求書』を集めて、全額を政府に補償させるまでがんばろう」と呼びかけました。

 農水省正面玄関前の集会から始まった行動は、梅津準士・農水省畜産部長への「請求書」提出、農水省との交渉、与党三党に対する要請と終日行われ、農水省前では、畜産農民らが、農水省に向かって次々と怒りをぶつけました。

 宮城県の「BSEによる被害補償を求める会」の代表は、県内の二百一戸の農家から託された四億円あまりの「請求書」をたずさえて参加。千葉勇治さんは「請求書に込められた農家の苦しみを農水省に分かってもらいたくて参加した。どうして農民がこんなに泣かなければならないのか」と政府の責任を追及。

 全国一の子牛生産地、宮崎県農民連の有田辰二・都北農民組合書記長は、「繁殖メス牛の廃用牛がまったく買い手がない。重要な収入源を失った農家の深刻さが請求書運動にとりくんで、あらためて浮き彫りになった」と述べました。

 これでは畜産潰れる

 「BSEマル緊を足しても、とても足りない。農水省は、個々の農家の損害に応じて補償するのが当然ではないか」と訴えたのは、栃木県で肥育牛千頭、子牛三千頭の大規模経営を営む高久道雄さん。損害額は一億三千万円にものぼると言います。自民党の地元国会議員にも対策をお願いしたという高久さんは、この日の行動をエサ屋から聞きつけ、農民連の運動に初めて合流しました。

 かけつけた消費者、労働者からは「私たちが不信を抱いているのは、責任を認めず謝罪もしない、農家に補償をせずに畜産をつぶしてもよいとする農水省だ」といった声が次々と出され農家を大いに励ましました。新婦人中央本部はこの日、文書で武部農相の罷免を要求。雪印食品一般労組の佐々木典昭委員長は「会社幹部の不始末の責任を、全従業員が負わされている。今日は覚悟を決めてきた。ぜひこの隊列に参加させてほしい」と発言。「BSE対策法」を共同提案している野党からは、民主党と日本共産党の国会議員が激励にかけつけました(2面)

 また、この日、農水省は初めて乳牛四万円、肉牛五万円で廃用牛を買い上げることを公表。これは、畜産農家と農民連・畜全協の粘り強い運動の成果です。佐々木会長は、農水省との交渉で廃用牛の買い上げを評価しつつ、「買い上げ額を二倍にしなければ農家の経営を守れない」とあらためて要求。さらに交渉では、「つなぎ融資が受けたくても受けられない」「マル緊の積み立てをさかのぼって請求されている。『柔軟に加入を認める』という農水省の答弁と違う」といった現場の声に対して、具体的な対応を約束させました。

 与党三党に対する要請では、堀之内久男・自民党BSE対策本部長は、野党提案の「BSE対策法」への対応を検討すると約束。その一方で、損害の補償はマル緊制度などで十分やられているという認識を示し、さらなる充実を求める農民の声に背を向ける態度をとりました。


実態調査し、すぐ補償せよ

政府に“請求書”提出

 約百五十人の参加者の目とテレビカメラが見守るなかで、「BSE損害請求書」の提出が行われました。各県の代表から梅津準士・畜産部長に、「請求書」が手渡されるたびにたかれるフラッシュ。

 「涙で汚れた請求書もあるが、ぜひ全部に目を通してほしい」と宮城の代表、「これ以上命を絶つ農家を出さないために、一刻も早く補償をお願いしたい」と岩手の代表。

 手渡すときに発せられる言葉には、「現場の農家の苦しみに思いをはせてほしい」「政府の責任を自覚してほしい」という思いが込められています。

 「どうしてBSE被害の実態調査をしないのか。しないのは、補償する気がないということか」「台風だって被害調査するではないか。調査して、個々の農家ごとに損害を補償してほしい」と切実な声をぶつけました。

(新聞「農民」2002.2.11付)
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2002年2月

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