政府・自民党米の“構造改革政策”決定(下)何が決まり、何が持ち越されたか
減反政策の再編――行政主導から“農協減反”へ農水省の当初案では、減反面積の目標を達成しても作況が良ければ減産効果がないため、数量配分に切り換えることになっていました。ねらいは二つです。(1)豊作になったら、政府の助成なしで“自動的”に青刈りやエサ用に処理するシステムを作ること。 (2)銘柄別数量配分によって、大手外食産業や量販店から“不人気”なコシヒカリの作付減、買いたたきやすい“安値米”の作付増を誘導し、農協の責任で減反を消化させること。 これは一年延期され、来年は面積と「参考数値」として数量も配分することにし、「研究会」を作って検討することになりました。しかし、食糧法第三条には「面積」配分が明記されており、これを変えないかぎり「数量」配分は不可能でした。農水省が農協などの意見を聞き入れて延期したわけではありません。 もう一つの問題は、金でつって減産・減反を押しつけるやり方です。 (1)「とも補償」を廃止し「基準数量からの減産量に応じて助成する仕組みに変える」、(2)「地域水田農業再編緊急計画」(三年)を全集落に立てさせ、一集落当たり七十五万円を交付する、(3)“青刈りがイヤならあらかじめ減反目標を超過達成しろ”とばかりに、十アール二万五千円の減産奨励金を出す――などなど。 このうち(1)は延期されましたが、(2)(3)は来年から実施されます。 「地域水田農業再編緊急計画」の中心は、主業農家への生産の集約、つまり兼業農家の排除です。七十五万円は多額に見えますが、十アール当たりでは三千四百円にすぎず、さらに三年間で打ち切りの手切金にならない保証はありません。(3)の減産奨励金の財源も、この事業から捻出されます。 “目玉”どころか“肉骨粉入りの毒エサ”に等しいといわなければなりません。 こうして、行政主導の減反から“農協減反”に移行する――ここに減反政策再編のねらいがあります。
政府の米供給・流通管理責任の全面的な放棄食管制度を廃止した結果、「価格形成の主導権が川下(大スーパー・商社)に移行」し、米価の暴落やインチキ表示の横行をもたらした――これが農水省の当初案の認識でした。そうであれば、改めるのが普通 ですが、逆に“どうせ規制をかけても効かないのなら、規制を抜本的に緩和すべき”という結論を出したのが当初案でした。ところが、農水省は十月から十一月にかけて“豹変”し、「規制緩和」にとどまらず「計画流通制度の廃止」を打ち出しました。 農水省・自民党の合意文書は「計画流通制度に代わる安定供給体制を整備すべく……研究会において検討する」と、さりげなく述べていますが、これが、政府の米供給・流通 管理責任の全面的な放棄の提案であることは明白です。
この“豹変”の背景に何があったのか――。事態の推移から見て、減反をやる者とやらない者の不公平、計画流通 米と計画外流通米の不公平の是正を「基本課題」として、自民党に頼み込んで、その実現を迫った農協中央の要求を逆手にとって、政府が本音をむき出しにして「廃止」を提案したというのが真相でしょう。 農水省・自民党合意の後に出された全中会長談話が(1)政府の責任放棄に一言も触れず、(2)逆に不公平是正を「基本課題」として再び強調し、(3)さらに百一万ヘクタール減反の「確実な達成にJAグループの総力を挙げて取り組む」という決意を表明しているのは、この真相を裏書きするものです。 “外米は聖域、国内では減反”という最大の「不公平」には目をつぶり、本来政府が負担すべき過剰米処理費用も「公平」に農民に負担させる。農民から遠く離れた要求を振りかざして、政府の米に対する責任放棄を容認する――。これが農民の「協同組合」のやることでしょうか。
究極のねらいは米輸入自由化準備農協を減反の“下手人”にし、米生産の大半を担う兼業農家切り捨ても辞さず、あげくの果てに米投機や暴落・暴騰を繰り返した食管制度以前の状態に差し戻して、「我が国の農業・農村の維持存続自体に影響を与えかねない事態」(農水省当初案)を招くこと必至の「米改革」強行のねらいは米輸入自由化準備です。農水省の当初案から最終合意にいたるまで、減反拡大と米価暴落の根源であるミニマム・アクセス米の削減・廃止は一回も検討せず、逆に国産米の備蓄を二百万トンから百万トンに半減させることが決定されました。 こんなことを許せば、大いにありうる不作(たとえば作況九〇)でも国産米不足に直結し、外米に依存せざるをえなくなります。 これは「ミニマム・アクセス米を非常時における備蓄手段として位置づけ」ること、「主食用需給から隔離されてきたミニマム・アクセス米の見直し」を意味し、外米の“定着”“復権”になりかねません。 さらに計画流通制度の廃止による国内流通の全面自由化が実現すれば、米の輸入管理を行う根拠自体が薄弱になるおそれもあります。
国民的な反撃の足場を築こう前号で強調したように、年内に強行するもくろみであった米「改革」路線は、二年越しの検討を余儀なくされ、重大なつまずきの一歩をしるしました。この路線が、米価暴落に苦しむ農民や農協、外米は食べたくないという広範な消費者、まともな米を売って営業を続けたいという中小卸・小売の希望に真っ向から反するものだからです。農民連・食健連は、来年を日本の米と農業、国民の食糧を守る大闘争の年と位置づけ、農村ぐるみ、国民ぐるみの大運動にとりくみます。 この冬、農村でも都市でも、大いに宣伝・対話し、悪政のきわみに対する国民的な反撃の足場を築こうではありませんか。
(新聞「農民」2001.12.24付)
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[2001年12月]
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