いまこそ農民を励まし、国民と連帯してた たかい、農業・農山村の明日を切り開こう
農民連第十四回大会決議案
二〇〇一年十一月二十四日 農民運動全国連合会常任委員会
IV 悪政から暮らしと 家族経営を守ろう
――今年の運動の重点――
1 WTO協定、「構造改革」、輸入農産物とのたたかいに全力をあげよう
(1)セーフガード、ミニマムアクセス米の削減、減反とのたたかい
セーフガードの発動を勝ち取ることは、当面するたたかいの最大の焦点です。まず、三品目を本発動させることに全力をあげましょう。
生産者団体が政府にセーフガードの「調査の開始」を申請することが可能になった条件を生かし、それぞれの作物ごとの生産者や生産者団体とともに、「協議会」や「部会」を作って被害の実態を告発し、セーフガードを発動させる運動を巻き起こしましょう。すべての地方議会での意見書採択、宣伝や署名を広げましょう。
ミニマムアクセス米の削減・廃止は、稲作を守る中心課題であり、WTO協定の改定を求めるたたかいに連動するものです。引き続き運動を広げましょう。
「米政策の大改悪」により、減反政策が再偏強化されようとしています。集落での話し合いを大切にし、攻撃をはね返して米を作り、農民連と一緒に米産直にとりくむことや、転作田での作物作り、加工や販売などを話し合い、あきらめずに生産することを基本に運動を進めましょう。
(2)地域から農業を振興させるとりくみ
農業版「構造改革」の危険なねらいを広く知らせ、「日本に農業が必要である」という国民合意を広げ、政策を転換させるたたかいを広げましょう。
たたかいは生産の現場にあります。農協や農業委員会、自治体など、地域ぐるみで農業を振興するために対話し、知恵を出し合いましょう。その際、「全国町村会アピール」をもとにした、自治体との懇談、地域農業を発展させるためのシンポジウムなど、地域農業を振興させる要求・政策をねりあげ、実現するとりくみを強めましょう。
兼業農家や高齢化した農民が生産から撤退せず、耕作放棄地を作らないため
の助け合いを進めましょ
う。
(3)価格保障の実現と、買いたたきを許さないたたかい
輸入の規制と価格保障を求めるたたかいは不可分です。政府に再生産を支える価格補償を要求し、地方での制度化と結んで運動を広げましょう。
生産者からのコストを無視した買いたたきは、消費者に還元されず、大手流通資本が一人勝ちしているのが現実です。また“安い”ものは、輸入物を国内産と偽って販売する場合も少なくありません。流通資本の横暴を監視・暴露し、国民世論に訴えて是正させるとりくみを全国で進めましょう。
(4)農協、農業委員会との話し合いと共同、自治体への働きかけ
農業版「構造改革」は、農協の経営を脅かし、農業委員会などとの矛盾を広げています。こうした人たちと対話し、一致点を大切に共同を広げましょう。
二〇〇二年は、いっせい農業委員選挙がたたかわれます。農業と農地を守る農業委員会にするために全力でたたかいましょう。
(5)WTO協定を改定させる国際世論を広げる連帯活動
WTO協定改定のたたかいは、日本政府に改定を迫る運動とともに、「WTOは農業から出ていけ」などの世界の運動や世論と連帯してこそ実現できます。
FAOが六月に開催する「食料サミット」への参加など、国際連帯の活動にとりくみます。そのための「国際連帯活動募金」にとりくみましょう。
2 生産を広げ、流通との提携、多様な産直を広げるとりくみ
国民との連帯、消費者との交流は、生産したものが売れればいいということだけにとどまりません。農業つぶしに対する最も基本的なとりくみであり、どれだけ多数の国民や消費者との結びつきを広げるか、また、この活動にどれだけ多くの農民に参加してもらうか、その規模とスピードが日本農業の行方を左右します。
出荷するものがなくて安全な農産物を求めている人たちの期待に応えられないという状況を乗り越えるためにも、生産を広げるとりくみを前進させましょう。
(1)「一支部一直売所」を合言葉に全国に無数に広げよう
「一支部一直売所」を合言葉に、すべての単組・支部・班で直売所や朝市を開設し、仲間を増やし、生産を広げる契機にしましょう。
産直協と共同で行った「直売所実態調査」の教訓を生かし、直売所だけに終わらせるのではなく、生産を広げて市場との提携や多様な産直にも発展させましょう。直売所や朝市の交流、ネットワークを広げ、農民連組織外の人たちが運営する直売所とも連携を強めましょう。
(2)地域の生産力を取り戻し安全な農産物を求める国民の期待に応えよう
地域全体の農業を視野に入れ、地域で生産活動に熱心な人をはじめ、全農民に生産を働きかけましょう。多様な生産グループとの対話も広げましょう。
女性の力に依拠することが大切です。特に朝市や直売所は、女性の感性や力が生かされているかどうかが成功の秘訣です。女性会員は自信を持って運動の先頭に立ちましょう。高齢者はすぐれた技術の継承者であり、地域の生産を維持・拡大するうえで欠かせない存在です。この方たちを大いに励まし、助け合って生産力を引き出しましょう。
全国でリレー出荷の突破口を開いた「スーパースイート・きぼう」の経験を生かし、多様な農産物のリレー出荷を計画し、農民に参加をよびかけましょう。
(3)市場や卸、小売との提携を全国で広げよう
県や地域レベルでも市場や米卸、小売との対話を広げましょう。
市場や米卸などとの提携は、生産サイクルからいっても、最低一年前から計画を立てて、組織的にとりくむことなしに前進しません。支部・班で話し合って計画を立て、励まし合って運動を進めましょう。市場や米卸に出荷するだけにせず、小売との話し合いや交流も進めましょう。
(4)新婦人産直の発展を
日本の農業を守ることと安全な食料の確保を太く位置づけた新婦人との産直は産直運動の原点であり、最も重視すべき運動です。生産する農民連会員と、消費する新婦人会員の交流を大切にし、最も自信のもてる農産物を届けましょう。
運動を前進させるために、新婦人と話し合い、ライフエリアを守る運動への発展を探究しましょう。
(5)学校給食への地元農産物の供給、多様な産直を
日本の未来を担う子どもたちに安全な米や農産物を届けることは、単に“もの”の流れにとどまらず、農民の生産労働の価値を届けることでもあり、農や食の国民合意を広げる大切な活動です。
子どもたちや栄養士、調理師、教職員との交流や、小中学校の「総合的学習」として体験農業の受け入れなどにもとりくみましょう。病院や保育所、広範な団体や消費者との産直を広げましょう。
(6)「米対策部」の確立について
国民の主食・米は、日本農業の大黒柱であり、農民の八割近くが米を作っています。農民に米生産からの撤退を迫る「米政策の改悪」に抗して米生産を守ることは、日本農業を守ることに直結する課題です。
「ほくほくネット」などが切り開いた米卸を通した小売との提携の経験を生かし、「思いっきり米を作りたい」という農民の願いを実現し、全国的な米のルートを切り開くことが求められています。本部に立ち上げた米作りや流通の専門的蓄積をもった「農民連米対策部」を機能させるため、財政面を含めた全国の協力をよびかけます。
(7)ブロックネット・都道府県ネットの機能強化を
日本列島三千キロの豊かな農産物を消費者に提供していくうえで、各地を結ぶネットワークは不可欠です。各地で進む活動のなかで、運動を支える各ネットの役割や体制、財政が、それぞれの条件をいかして確立されてきています。
こうした活動を交流し、すべての都道府県・ブロックでネットの強化をめざしましょう。
3 税金など多様な要求運動とたたかい
(1)重税から暮らしと経営を守る運動
二〇〇〇年の「政府税調・中間答申」は、小泉「改革」の税制版であり、悪政による財政破綻を、消費税増税などによる国民への増税によって穴埋めする方向を打ち出しています。
人権を無視した税務調査や「農業所得標準」の廃止による事実上の増税、兼業農家の還付請求からの締め出し、中山間地の直接所得補償への課税なども「構造改革」を促進する性格をもって進められています。
国民への増税を許さず、大企業優遇の税制を転換させるたたかいを強めましょう。また、農民の切実な税金要求を実現する運動を全国で強めましょう。
とりくみの基本は、記帳簿の普及を先行し、農家に記帳を始めてもらうこと、税金に強い相談員を養成すること、農家全体を視野に入れた宣伝・対話、『税金の手引き』を使った学習会や相談会を無数に開くことです。不当な税務調査や課税をブロックや本部の連携、民商など諸団体との共同ではね返しましょう。
消費税廃止各界連と共同し、消費税増税阻止や三%への減税を要求するたたかい、納税者権利憲章を制定させるとりくみを広げましょう。
(2)相続税納税猶予の廃止を阻止し、固定資産税を軽減させるたたかい
相続税の納税猶予制度の廃止を阻止するため、農業委員会との共同を重視し、ねらいを農民に知らせる宣伝・署名に全力をあげましょう。
農業用施設用地の農地並み課税、市街化区域農地の生産緑地の指定拡大、小作料を上回る固定資産税の減免など、固定資産税を軽減させる運動を進めましょう。
(3)線下補償、減免軽油の申請など、多様な要求運動
電力会社による一方的な補償単価引き下げを許さないたたかいを広げましょう。「一時払い」で補償を打ち切られた地権者を含めて補償を要求するたたかいを進めましょう。
減免軽油、農業労災、資材価格の引き下げなど、生産や暮らしに根ざした多様な要求運動を広げましょう。
4 狂牛病問題と畜産、畜全協運動
経営への打撃が深刻な肉牛肥育農家や酪農家に足を運んで要求を聞き、激励しましょう。また「緊急署名」を全国で進め、農水省の責任追及、万全な対策と農家の被害補償を要求しましょう。
牛肉への不安を募らせる消費者、重大な打撃を受けている食肉小売店、焼肉・飲食店などと共同し、被害の補償や再発防止などをテーマに、シンポジウムなどのとりくみを進めましょう。
また、畜産物の買いたたきを規制し、安全な畜産物の再生産を保障する畜産物価格の実現、自給飼料作りへの国・自治体の支援、耕作放棄地への飼料作物の作付けなど、地域での安全な畜産物を生産するとりくみを進めましょう。
畜産農民の要求を実現する運動を進めるため、都道府県連に「畜産部会」を確立しましょう。畜全協の活動を強化しましょう。
5 土地改良、中山間地を守る運動
ムダな土地改良事業を中止させ、農民の要求にもとづいた生産の維持・拡大に役立つ事業に転換させましょう。中山間地の生産を守るために、集落を基礎にした助け合いを進めましょう。直接所得補償が中山間地で農業を続けることに役立つ制度にするため、改善・充実を政府に要求しましょう。
6 食品分析センターを生かしたとりくみを
五周年を迎えた食品分析センターは、全国の募金によって、遺伝子組み換え食品の分析に加え、有機塩素系農薬の残留も分析できるようになりました。
JAや生協、流通関係者などの視察が相次ぎ、マスコミにも度々登場するなど、国民の立場に立った食品分析機関としての社会的認知を広げていることは誇らしいかぎりです。
分析センターの活用と成果を生かしたとりくみを大いに広げましょう。引き続き、運営を支える募金の協力をよびかけます。
7 離農勧告や兼業農民のリストラ・解雇を許さないたたかい
JAの「不良債権処理」が実施に移されているもとで、強権的な取り立てや「離農勧告」を許さず、政府の責任による負債対策を要求してたたかいましょう。
農村で、大企業の大規模なリストラや、兼業農民の解雇が多発しています。人権を踏みにじる一方的な解雇は許されません。地域労連などと共同してたたかいを進めましょう。
8 食健連運動の発展を
食と農、国民の健康を守る唯一の共同組織である食健連は、国民合意を広げる運動の拠点であり、農民連の運動と車の両輪です。今日の情勢にふさわしく食健連運動を発展させましょう。都道府県食健連を確立・再開させ、すべての単組に対応した地域食健連を作りましょう。
9 暮らし、平和、民主主義を守る国民的たたかい
国の主権や平和、農民の生活を脅かす事態が進んでいます。
「国民大運動実行委員会」に結集して、国民的たたかいの一翼をになって運動を進めましょう。
革新懇運動の前進と、農村地域に革新懇を広げるための活動を広げましょう。
労働者のリストラ規制や雇用、労働時間の短縮や全国一律最賃制を求めるたたかいは、農村経済や兼業農家、パート労働に関わる課題であり、農産物の消費拡大や価格保障にも直結する問題です。こうした視点から共同を広げましょう。
(新聞「農民」2001.12.10・17付)
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