狂牛病 万全の補償を農家に防疫対策怠った政府の責任
「酪農家には何の罪もない」――狂牛病の現地調査は、現場の酪農家や関係者の苦悩、努力とともに、あらためて防疫対策を怠ってきた政府の責任を痛感させるものでした。 「マスコミ攻勢にだいぶまいっているようだったが、牛乳は毎日出荷していると聞いてホッとした」。白井市に四軒ある酪農家の一人、Aさんは、狂牛病の疑いがある牛を出した酪農家仲間の家に電話したときのことを、こう話しました。 また市の産業課の職員も「酪農家を加害者のように書くマスコミもあるなかで、精神的な面が心配だ。『あなたの責任で起きたことではない。自信をもって対応しなさい』と言っている」と、苦渋の表情を浮かべて言いました。 狂牛病の発生が世界で初めて報告されたのは八六年。それ以来の日本政府の対策を振り返ってみると、他国と比べても後手に回ってきたことは明らかです。 狂牛病の最初の発生国、イギリスは、八八年七月に狂牛病の感染が広がる原因として肉骨粉を指摘し、牛の組織を他の牛のエサにすることを禁止。アメリカがイギリス産肉骨粉の輸入を禁じたのはその直後です。ところが日本の輸入禁止は九六年。その間にもイギリスから日本へ肉骨粉が入っていました。 またフランスは九〇年に肉骨粉を牛のエサにすることを禁止しましたが、日本ではいまだに法的に禁止していません。さらに日本政府は今年六月、EU科学委員会(SSC)が日本の狂牛病発生の危険性を指摘した報告書を「必要以上に危険性が強調される」と拒否し、葬り去った経緯もあります。 こうした責任を重く受け止めて、政府は関係農民に対して万全の保障をするべきです。
「風評被害」対策を千葉県内では、学校給食用牛乳が中止になったり、小売の店頭から千葉県産牛乳が撤去されるなどの風評被害が広がっています。さらに現地調査では、白井市の酪農家が搾った牛乳が乳業メーカーから引き取りを拒否されていたことが明らかになりました。しかし、EU医薬品審査庁の危険度分類では、牛乳は「感染性なし」。世界保健機関(WHO)や国際獣疫事務局(OIE)も同様の報告をまとめています。 「千葉にいた!狂牛病 牛乳すでに出荷」(日刊スポーツ)などと、センセーショナルに風評をあおるマスコミの報道は許せません。 また、食肉についても筋肉は安全だといわれています。ファーストフードや牛どんチェーンは「輸入牛肉を使っているから安全」などと宣伝していますが、どの部位の肉が使われているかわからないこうした食品ほど危険そうです。
(新聞「農民」2001.9.24付)
|
[2001年9月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2001, 農民運動全国連合会