「農民」記事データベース20010924-509-02

国内初、狂牛病の疑い

肉骨粉の流通防げ

関連/狂牛病 万全の補償を農家に


 九月十日、国内で初めて狂牛病(牛海綿状脳症)の疑いがある牛(メスの乳牛、五歳)が、千葉県白井市で見つかりました。この牛は食肉処理場で起立不能になっていたため、と畜後に脳を採取して調べたところ、狂牛病に特有の空胞(小さい穴)が見つかったもの。

 さらにこの牛の肉が肉骨粉(家畜飼料)に処理されていたことが判明しました。十四日夜、農水省の狂牛病対策本部が緊急に記者会見したもの。この肉骨粉が流通した場合、狂牛病の感染を広げる恐れがあり、取り返しがつかない事態になりかねません。流通防止に全力をあげるべきです。

 農民連と畜全協は十二日、農水省と厚労省に対して(1)感染ルートの究明、(2)感染源とみられる輸入肉骨粉の全面禁止、(3)処分費用の全額保障など関係農民への万全の支援策、(4)「風評被害」防止と情報の開示などを要請。十三日には、日本共産党国会議員団とともに現地調査に入って、千葉県農林水産部長、白井市長、白井市の酪農民などから話を聞きました。

 狂牛病は、脳が海綿状になり、神経障害を起こして死にいたる病気。イギリスをはじめヨーロッパなどで発生していますが、肉骨粉など動物性の飼料を介してしか感染しないはずの病気がなぜ日本に侵入したのかこのことを究明することは、水際での防疫を怠ってきた政府の責任です。政府は、狂牛病が発生しているヨーロッパからの肉骨粉の輸入を今年一月まで禁止せず(イギリスは九六年に禁止)、牛以外の豚、鶏などへの肉骨粉の給与を野放しにしてきました。

 これまでのところ、感染の疑いがある牛が二歳まで北海道佐呂間町で飼われていたことがわかっていますが、輸入肉骨粉を給与した事実はありません。

 農水省は、国内のすべての牛を対象に臨床検査するとともに、全国百四十二の飼料工場を調査していますが、飼料の製造・配送過程で豚・鶏用のエサが混入する可能性はなかったかなど、あらゆる角度から徹底的に調べるべきです。昨年の口蹄疫のように、感染ルートの究明をあいまいにすることは許されません。


〔解説〕狂牛病とは?

 狂牛病の正式な名称は、脳に空胞ができて海綿状になることから「牛海綿状脳症」。潜伏期間が二〜八年と長く、治療方法は見つかっていません。

 八六年以来、イギリスで十八万頭、その他のヨーロッパ諸国で二千頭の発症が確認されています。また、似たような症状を示す羊のスクレイピーという病気は二百年以上も前から知られていました。

 狂牛病の感染因子は、異常化したプリオンと呼ばれるたんぱく質で、感染した牛・羊の脳や骨を加熱処理して再び家畜に食べさせていたことから感染が広がったといわれています。逆に口蹄疫などと違って空気感染や接触感染はしません。

 狂牛病は、まれに人間にも感染してクロイツフェルト・ヤコブ病を発病するとされています。しかし大発生しているヨーロッパでも感染したとされる人は九十一人で、極めて低い確率(二〇〇〇年末まで)。異常プリオンが蓄積されて危険な部位はとくに脳、せき髄、目。牛乳や筋肉は感染性がないといわれています。

(新聞「農民」2001.9.24付)
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2001年9月

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