都会育ちの高校生初めての農業体験東京・正則高校生が信州で
トウモロコシの収穫・出荷手伝いました最初はとまどいながらも…八月五日正午前、東京・正則高校二年生の柴田有理さんと永坂梢さんを新幹線佐久平駅に迎えに行きました。家に着いた時、彼女らの第一声は「わぁ、お金持ち!」でした(庭が広く家が大きいのを見て)。「いや、農業だけでは食えないんだ。農業は大変なんだ」などといっても愚痴に終わるのが関の山。私は農家や農村、農業を理解してもらうことの難しさ、都市と農村の大きな隔たり、世代の違いを知り、農業体験学習をどこから手をつけていいか、どうアプローチしようかと考え込んでしまいました。同時に、だからこそ、都市と農村の交流が大事だとも改めて思いました。「日本には農業と農村が必要だ」という国民的な合意なしには二十一世紀の国民の食料や農業を守ることができないと思うと、若い人の体験農業学習の意義を噛みしめました。 スズメに乳熟期の穂を食われないよう朝五時から防雀網を張りました。中心になる人は忙しいのですが、「手伝い」は大変退屈なものです。しかも、こちらを引っ張るとあちらがゆるみ、細い網は帽子に引っ掛かったり、ボタンやベルト、腕時計に引っ掛かったりして、夫婦でも声が大きくなって、「雀の網を張ってきた」というと「喧嘩しなかったかい?」と挨拶されるほど。そんな手伝いを暑い日差しのもとで彼女らは嫌な顔一つせず、「ハイ」「ハイ」と笑顔で応えてくれました。
大切にする気持ちが自然に次いでスーパースイート“きぼう”の収穫・出荷を手伝ってもらいました。とくに七日、九日は朝五時からで、七時ごろ畑でおむすびで朝飯です。“きぼう”はよく繁っていて畝(うね)間を歩くのも大変。とうもろこしを一杯入れたコンテナを二人で持ち出すのは、力ある人が一人で持ち出すより大変だったと思います。家に持ち帰ってから、外葉を剥ぎ、調整するのは私ら夫婦ですが、それをもう一度、先端を鳥が食っていないか、虫食いの孔はないかを見ながら、秤にかけ3L・2L・L・Mに分類するのが永坂さん。農民連・・関東協議会のスーパースイート用段ボールに詰めるのが柴田さんです。先端がほんの一粒鳥に食われても取り除くたびに「ああ、もったいない」という言葉が彼女らの口から出るのです。いまどき「もったいない」という言葉が、この都会育ちの若者から出る!農業労働が自然に教えるものなんですね。 八日、群馬県で開かれた農民連や生協の人たちの会合のとき、わが家の“きぼう”がほめられたと聞いた彼女らは「わぁッ」とわがことのように喜んでいました。
安全性と自給率の話しの驚き「農民」号外とビラを見てもらいました。お魚を全く食べないとか、マクドナルドが大好きという彼女らは、安全性のことや食料自給率の低さにはさすが驚いていました。中国の輸入野菜がなぜ安いのかということも、ナスやトマトを自分の手で切り取ったり、“きぼう”の収穫・出荷を手伝って「野菜ってずいぶん手がかかるものなんですね」という実感から、よく理解できたようでした。 お勝手の手伝いもしてくれました。配膳したり、食器を洗ったり、ずいぶん気を使ったようでした。洗濯も自分でやっていました。 野菜ばかりの食事でたぶん閉口したでしようが、トマトやキュウリがおいしいと言っていました。 学校の部活は“陸上”なので歩いたり、走ることはなんでもないようで、田んぼから“きぼう”の畑まで走って来たり、このきゃしゃに見える細い体のどこにそんなたくましさがあるのかと驚かされました。 明るい都会の二人の女子高校生に教えられることの多い受け入れでした。そして、今の若者への期待と祝福の一週間でした。 (長野県佐久市 小林節夫)
「お久しぶりです。また行くね」高校生から届いたお礼の手紙いい1週間「ありがとう」正則高校二年 柴田有理お久しぶりです。このあいだは本当にお世話になりました。あとで送っていただいたトウモロコシは部活の後、みんなで食べました。おいしかったけれど、やっぱりとりたてが一番おいしかったです。おいしいといえば、たくさんのおいしい物を食べさせてもらいました。畑でとりたてのトマトをまるかじり。何もつけなくてもおいしかった。トウモロコシの収穫の時に食べた桃。皮まで食べられるなんて知らなかったし、いつもは桃のまるかじりなんてさせてもらえません。「毎日野菜ばっかりじゃ、肉が恋しくなるだろう?」と心配してくれたけれど、野菜だけの生活は、いいもの食べてるってかんじで悪くなかったです。食べ物の話ばかりになってしまったけれど、とてもいい一週間が過ごせました。そしていい体験ができました。本当にありがとうございました。皆さんにもよろしくお伝えください。
忙しくなったらすぐ呼んで正則高校二年 永坂 梢こんにちはっっ!! お久しぶりです。お元気ですか? 私たちは元気に毎日過ごしています。でも、長野のトマトが食べれないので、ちょっと元気がありません。トウモロコシの収穫はもう全部終わりましたか? たんぼのすずめは大丈夫ですか? なんだか気になることがたくさんあります。またぜひ手伝いに行きたいので、忙しくなったらすぐに呼んで下さい!! 走っていきます!! では、またお会いできる日を楽しみにしています。 本当にお世話になりました!! ありがとうございました!!
(新聞「農民」2001.9.10付)
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[2001年9月]
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