日本の孤立を招く『新しい歴史教科書』子どもと教科書全国ネット21運営委員 小牧 薫
「新しい歴史教科書をつくる会」主導でつくられた扶桑社の『新しい歴史教科書』について、私たちは検定申請本(白表紙)を入手し、その内容が歴史の事実を歪曲し、日本国憲法を否定し、アジア諸民族蔑視、日本の侵略戦争をアジア解放の戦争であったとする自国中心主義のとうてい中学生用の教科書として容認できないものであると批判を重ねてきました。憲法の理念に反するだけでなく、近隣諸国との国際公約にも反するものであるにもかかわらず、文部科学省は、四月三日に教科用図書検定調査審議会の審議を経て、一部を修正させただけで本質を変えないで、検定合格としました。
近隣諸国との国際公約に反するものすでに、二月二十八日、韓国国会は与野党の超党派で提案された「過去の歴史の縮小、わい曲を是正することを求める決議」を採択し、日本政府にこの教科書を検定合格しないよう求めていました。中国政府も、江沢民主席が訪中していた中曽根康弘元首相に善処を要請しました。こうした動きは、北朝鮮、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどアジア各国に広がりました。
アジア各国政府や市民も怒っている日本国内での内容批判と不採択を求める運動がもりあがるなか、韓国では元「慰安婦」をはじめ多くの市民が日本大使館につめかけ抗議を重ねています。こうした市民運動はアジア各国に広がりをみせています。韓国政府も歴史学者らによる「日本歴史教科書歪曲対策班」を編成して、事実の誤り、解釈と説明の歪曲、内容の欠落について扶桑社本に二五カ所(他社本に一〇カ所)の修正要求を日本政府に求めました。中国政府も近現代史部分に限って八項目の再修正を要求しました。 いずれも韓国・中国に直接関係する部分についてのみの再修正要求です。ところが、日本政府・文部科学省はこの再修正要求に対して韓国の求めた一項目のみ(他社本でもう一項目)を「誤り」と認めただけで、他の部分については「学説状況に照らして明白な誤りとはいえない」などと退けました。この回答を伝えられた韓国の外相は「韓国政府も国民も失望と当惑を禁じえない」と述べ、中国のアジア副局長も「実質的に右翼勢力が侵略の歴史を否定し、美化することをかばうことになる」と、「強烈な不満」の意を表明しました。研究者・市民もおおいに怒っています。
アジア諸国との友好の道閉ざすものこのまま、一部の中学でこの教科書を使って歴史教育をおこなうことになれば、首相の靖国公式参拝の問題とあわせて、日本がアジア諸国民との友好親善の道を閉ざし、孤立の道に踏み込むことになってしまいます。そんなことをどうしても許すわけにはいきません。
(新聞「農民」2001.8.13付)
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[2001年8月]
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