「農民」記事データベース20010813-505-05

「つくる会」の歴史教科書

平和憲法ふみにじる

関連/日本の孤立を招く『新しい歴史教科書』


 日本が行った侵略戦争について、事実にもとづく歴史認識を持つことは、世界とアジア諸国の人々と連帯し、核も飢餓もない世界をつくるうえで重要な課題です。ところが、「新しい歴史教科書」(扶桑社)は、韓国などのアジア諸国に対して日本が行った侵略戦争の歴史を覆い隠し、正当化し、賛美するというとんでもないもの。

 「新しい歴史教科書」は、序章の「歴史を学ぶとは」で、歴史を学ぶのは、過去の事実を知ることではなく「歴史を学ぶのは、過去の人がどう考えていたかを学ぶことなのである」と主張し、教科書のいたるところで、歴史を「物語」として描いています。論証抜きのこうした手法で執筆者の心情を語り、客観性を欠いた一方的な解釈で過去の事実、日本の行為を正当化しています。

戦前の軍国主義教育を正当化

 例えば、日清戦争での日本の勝因を「日本人が自国のために献身する『国民』になっていたこと」と記述し、戦前の軍国主義教育を正当化しています。また、特攻隊員の遺書も紹介し、日本のために犠牲になることが、美しい物語かのごとく描いています。

 これについて、元特攻隊員の男性は、「『神風特別特攻隊』について、なにか英雄的な行為だったかのように書いています。しかし、私の体験からいってそれはまったくのまやかしです。遺書を書くことをすすめられた時、本心は書けませんでした。特攻隊員の無念を理解せず、賛美するような『つくる会』教科書は絶対に子どもたちに渡せません」(赤旗七月二十四日)ときびしく批判しています。

真の目的は憲法を否定すること

 このように戦争を美化し、正当化する一方で、「歴史は民族によって、それぞれ異なって当然」と述べて、従軍慰安婦など日本軍の残虐行為、戦争犯罪や朝鮮・中国・東南アジアからの人的・物的資源の略奪など、戦争の実態については何も記述せず、隠蔽しています。そして、「第二次世界大戦全体の世界中の戦死者は二千二百万人」という数字を記述しながら、日本軍の侵略により、アジアだけで二千万人を超える戦死者が出たという事実を覆い隠し、アジア諸地域の被害について「戦場となったアジア諸地域の人々にも、大きな損害と苦しみを与えた」とまるで、他人事のように記述しています。

 「新しい歴史教科書」には、こうした歴史の隠蔽やつくりかえがいたるところにあり、日本は正しい戦争をやったと子どもたちに思いこませるものになっています。

 この教科書を作った「つくる会」の真の目的は、戦前と同じ、天皇を中心とする皇国史観の復活であり、二十世紀の戦争の犠牲と痛苦の反省の上に作られた「日本国憲法」を否定し、日本を再び戦争する国にすることです。


「つくる会」教科書各地の運動で不採択

 この歴史をねじ曲げて侵略戦争を美化する「つくる会」の教科書を採用させようとする圧力に抗して、市民や教職員の運動によって不採択にする自治体が増えています。

 栃木県下都賀地区の教科書採択協議会は、七月二十五日に再協議した結果、いったんは採択した「つくる会」の教科書を不採択にしました。これまでに北海道、山形、栃木、群馬、埼玉、新潟、石川、静岡、広島、徳島、佐賀、沖縄の一道十一県では、県内のすべての公立学校で不採用になっています。

 また東京都教育委員会が都立の養護学校で「つくる会」教科書を採用しようという動きに対しては、親や教師をはじめ、全国から反対と怒りの声が寄せられています。

(新聞「農民」2001.8.13付)
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2001年8月

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