「農民」記事データベース20010709-500-08

特集! 農民をダマし、税金に群がる自民党政治

土地改良事業したはずなのに

畑から巨石がゴロゴロ…

福島・国営雄国山麓開発事業の“怪”

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 「畑のなかは、巨石がゴロゴロ」――計画の早い段階から、耕作に向かない土地だと知りつつ、それを農家にひた隠しにして土地改良事業を進め、終わったらサッサとトンずらした農水省。これに、農民が怒りの声を上げ、償還金の減免などを求めて立ち上がっています


 土壌不良を知りながら事業優先

 「毎年償還金や賦課金など七十五万円も払っている塩川町の六十三歳のタバコ農家は、トラクターの爪は年二回交換、シャフトは二年で終わり、去年は七十二〜三万円もかかったと言う。あまり石の出ない畑を借りている私だって、トラクターで百メートルもうなると五〜六回はねるんだ」。

 東北六県の農民連組織で作る東北農民団体連絡協議会(東北農団連)が行った六月十八日の東北農政局への要請で、福島・会津農民連塩川支部の飯塚達雄さんは実情をこう述べました。

 福島県会津地方の喜多方市、塩川町、北塩原村三市町村にまたがる国営雄国山麓開発建設事業(雄国山麓開パ)は、一九六六年に調査開始、七〇年から二十二年かけて開拓されました。ところが農地の総面積九百ヘクタールのうち、今も次々に右が出るため耕作ができない畑や放棄された牧草地が約百二十ヘクタールもあります。

 喜多方市の標高五百メートルの畑は赤土。霧の中に浮かぶのは一町歩区画に白い花が咲くソバ畑や、延々と続くタラの木の畑。放棄され「松林を伐って畑にし、また松林になった」(菊地多七喜多方市議・会津農民運喜多方支部長談)畑もあちこちにあります。

 償還金減免などを要求する塩川町「雄国山麓開パ対策協議会」代表の藤井広司さん(80)は「土地を買ったときは良かったのに、開パが終わったら石がごろごろ出るようになった。もう年なので人に貸しているが、その畑は次々に石が出て低くなっていく」と言います。その畑に行ってみると、なるほど先日片付けたばかりだというのに、「まるで庭石だよ」という大きな石が道路脇に積み上げてありました。

 地元紙の「福島民報」五月二十七日付は「雄国山麓開パ、土壌不良知り開発―調査の元農水省職員が証言」との一面トップ見出しで、計画段階で地質調査をしたが「大小の石が目立ち、畑にするのは無理と調査に参加した全員が思ったが、事業を優先する上司に受け入れられなかった」という証言をスッパ抜きました。

 農政局は撤収して“知らぬ顔”

 それによると「当時の開発パイロット事業の採択要件は実施面積五百ヘクタール以上。農地の提供拒否を想定し、計画で千ヘクタールを確保する必要があった」というのです。農水省は当初から事業計画そのもに無理があるのを承知で事業を進めていたのです。

 藤井さんは「だいたい農政局は事業が終わったとたん早々と撤収して知らん顔だ。こんな畑でも償還金をずーっと払い続けなきゃならん。みんな年金で返したり苦労しているが、返せない人もいるようだ」と怒っています。

 しかも雄国山麓開パ事業は、国の減反政策にもとづいて開田計画が途中で開畑計画に変更。当初総事業費三十六億円が二百二十八億円にふくらみ、償還金は当初計画の二・三〜四・二倍、維持管理費は五倍になる一方で、水田から畑への計画変更で、土地の収益性が下がってしまいました。

 償還金や維持費支払いに泣く

 八百人を超える開パ組合員のうちの多くの高齢者が耕作もできず、借り手も見つからず、償還金や維持管理費などの支払いに苦しみ、滞納者が数十人も出ているといわれています。

 農民連は東北農政局にたいし「足を運んで現場を見て調べてほしい」と要請。しかし農政局は「換地が済んでいるので…」と関係ないといいたげ。

 「事業そのものに誤りがなかったのか。地質調査報告書を公開せよ」との要求にも「誤りはなかった。調査報告書の保存義務は十年なので今はない」との答え。「地質調査報告書もないまま工事をしたのか」と怒りの声が上がりました。

 地元自治体や農協では徐礫機の導入を検討していますが農政局は援助する気なし。「事業が先にありき」の開パは、自治体やJA、農家に今後も大きな負担を強いるのです。

(新聞「農民」2001.7.9付)
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