「ごはん・お米とわたし」作文・図画 コンクール「農林水産大臣賞」黄金の秋朝日中二年 遠藤晃毅
「はぁ。つっかれだー」 僕は部活から帰ると、こう言って、すぐにアイスを食べてねっころがる。いつもならそうなんだけど今日からは最悪の日が続く。 ほら、来た来た。 「晃毅。今日からまだ手伝ってくれちゃー」 「えー!」 僕は「部活から帰ったすぐ後なのに、やっぱり…」と思った。去年のことだ。 僕は嫌々ながら父についていった。 「今日はや、このふぐろどごトラックさつんでや、キャリア(物を運ぶ機械)どご田んぼさ持ってってや、あ、それど長ぐつ忘れんなよー…」 といろいろ働かせられる。 「はぁ、やんだぜー、オレ」。何でオレだけ? この時はまだ弟は小学六年生で、父は力仕事はむりだろうと思っていたのかもしれない。そうなのかどうかはわからないが、父は僕にしょっちゅう仕事をたのんでくる。 「これだから稲かりの季節はいやなんだ」 米づくりは、肥料作りから始まる。春のうちに田んぼに牛のふんなどをまいておき、どっしりとして、土のよい田んぼを作る。父や祖父は、田んぼに入ったりにおいをかいだだけで、その田んぼの土がいいか、悪いかがわかるという。僕は仕事はいやだけど、これだけは、職人技だと思って尊敬している。 次は苗を育てる土作りだ。この土は特別で、肥料やなんかが最初からまざっている。その土も何種類かあって、それを、バランスよくまぜ、苗ばこに入れる。 苗ばこに専用の機械で種も入れ、水をかけていく。この種は、約一ヵ月前から水につけておくのだ。そうするといい芽がでるらしい。 そして、ハウスで育てた苗を、今度は、田植えだ。 僕は、よくあんなに楽しそうにできるなあとつくづく思う。 なんと、父や祖父たちはこの仕事をしながらも笑っているのだ。 「田んぼの仕事ってそんなに楽しいことか?」 父と祖父に聞いてみた。二人とも、 「やりがいがあるでのー。晃毅だぢのおいしそうに食べるどご見れるしのー。長ぐやっでっど、おもしろぐなっでぐるー」 おもしろい。二人は田んぼ仕事の事を、おもしろいと言った。 僕は小さいころ父のボロボロになった、手の平を見た時がある。(こんなに傷だらけだったのに楽しい?) 今の父の手はそれ以上だ。僕と同じ仕事をしているのに、手の汚れや傷がちがう。僕は急にはずかしくなった。 父や祖父は一生懸命に仕事をしているのに、その横で、だらだらと仕事をする僕。 自分が情けなくなった。 (どうしてオレはこうなんだ。なぜ一生懸命にできないんだ) くやしい。 僕はその日一日中そんな思いが胸の中にあった。だから、がむしゃらに働いた。 「今日はありがどよ。本当で助がった」 いつもは、何も感じない言葉だけどこの日は、すごくうれしく感じた。つらい思いなんてどっかに吹っとんでた。 もう一つ、うれしいことがあった。いつも仕事がおわって見る田んぼは、ただ光ってるように見えるだけだったけど、この日の田んぼは、黄金に輝いて見えた。 「一生懸命やった後にはこんなにいいことがある」 もうすぐみんなにとっては実りの秋がやって来る。だけど僕にとっては黄金の秋だ。今年の稲は去年以上に黄金に輝いている。僕たちががんばったから、それに応えるように稲が輝いてくれる。僕にはそう思えた。 黄金の秋の、黄金の稲。 「今年の米は、絶対うめぇぞ!」
(新聞「農民」2001.2.5付)
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[2001年2月]
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