外米は主食・加工・援助に国産米は減反と「エサ」にとんでもない政府・自民党の「緊急米総合対策」
政府・自民党は九月二十八日、「平成十二年緊急米総合対策」を決定しました。二十九日の第三回目主流通米入札を前に、米価暴落対策として打ち出したもの。 米価暴落の原因である外米輸入と自主米入札の値幅制限撤廃には一切メスを入れず、「青刈りやエサ用投げ売り、減反拡大で国産米の供給を減らせば米価は上がる」という単純きわまりない議論にしがみついて、無能・無策ぶりをさらけ出した「対策」です。
(1)史上最大の減反 ついに百万ヘクタール以上来年の減反面積は百六万三千ヘクタール(作況が一〇〇を超えれば青刈りさせる「需給調整水田」五万ヘクタールを含む)水田面積の四二%に達します。最初に減反政策が導入された七一年(五十四万七千ヘクタール)の二倍、世界的な食糧危機で減反が緩和された七六年(二十一万五千ヘクタール)の五倍という途方もない面積です。一方、ミニマム・アクセス外米の輸入は九五〜二〇〇〇年で三百七十万トン(面積にして七十四万ヘクタール)。二〇〇〇年だけでも十五万ヘクタールに相当します。外米輸入は一切“減反”せず、日本の農民にだけ減反させて、足りなくなれば輸入を増やすことさえ目論む――これが日本の農水省のやることでしょうか。
(2)収穫目前の稲を青刈りその内容も大問題。昨年農民の強い反対を押し切って導入した「エサ用投げ売り」を続けるばかりか、新たに収穫目前の稲をエサ用に「青刈り」(子実前刈取り)させる「需給調整水田」制度を作りました。五万ヘクタールを「需給調整水田」に指定し、作況が一〇〇を超えた場合、稲ワラもろとも刈り取ってエサ用に発酵させるというのです。 青刈りした農民に十アール四万円、エサを使う畜産農民の「不安解消」のために十アール二万円出す――減反強行とエサ用処分には至れり尽くせりです。外米は主食・加工・援助用にしっかり回すが、国産米は減反と「エサ」処分。子どもを育てるように丹精した稲を無残に刈り取れとは、いったい何という悪政でしょうか。
(3)政府買入れは恩恵か?商業マスコミが「政治主導で農家への手厚い保護」(「日経」九月二十八日)と非難する「メリット措置」にも問題大ありです。米の政府買入を「ゼロ」から「臨時応急特例的に」四十万トンに増やしたと恩を着せていますが、もともとは百五十万トン前後買い入れるのがルール。 しかも四十万トンのうち十五万トンはエサ用投げ売りの見返り、二十五万トンは緊急減反拡大の見返りで政府の腹は痛みません。そのうえ、減反未達成の場合、二十五万トンは農業団体に「売り戻す」と脅して全農・全中を牽制し、農業団体による農家しめつけで減反を強要する悪辣さも許せません。 そのうえ政府買入価格を四百円引き下げ、ついに六十キロ一万五千円を割り込む一万四千七百六円に。
(4)“値下がりが続米は作るな”値幅制限のかわりに「自民党が自信をもって世に送り出した」はずの「稲作経営安定対策」は、「あと二年と制度がもたない状況になってきた」(松岡自民党農業基本政策小委員長)と告白するほど破たん寸前。その「解決策」として打ち出したのは、値下がりが続き、農家と政府が積み立てている資金状況が悪化している銘柄については「作付転換」を行うこと。要するに値下がりが続く銘柄米は作るなというのですが、現在直面しているのは全銘柄の暴落。これでは、日本の米作りを「作付転換」しろといっているようなもの。
(5)本当の「総合米対策」は農民連の提案の方向二十八日の農民連との交渉では、出席した六人の担当官のうち「暴落対策として効果がある」と答えたのはたった一人。残る五人はきまり悪そうに顔を見合わせるだけで、当事者自身が無策ぶりを自認しました。「対策」は、外米を含む政府持越在庫のうち七十五万トンを「緊急食糧支援事業」による援助用として市場隔離するとしています。これ自体は私たちの要求の一部を満たすものですが、本格的に米価を回復させ、日本の稲作を救うためには、次のような農民連提案の実現こそが必要です。
(1)外米輸入は緊急に削減し、在庫米を海外援助にまわせ。ミニマム・アクセス制度の廃止を含め、WTO農業交渉の抜本的改定を。 (新聞「農民」2000.10.9付)
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[2000年10月]
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