「農民」記事データベース20000619-453-01

大スーパーの店頭では高値で売られている…

野菜 異常な安値に悲鳴

暴落の元凶 野放し輸入にストップを

 「何を作っても安い。もうがっかりだ」――今、野菜農家は尋常ではない価格暴落に見舞われています。今年五月の市場価格は過去十年間で最安値を記録。一方で野菜の輸入は激増しています。「このままでは農業が続けられない。政府はセーフガードを発動して輸入を制限してほしい」――日本全国で農家の悲痛な叫びがわき起こっています。


一個6円のキャベツが198円も

 トマト一キロ(四〜六個)一〇〇円。キュウリ五キロ(五十五本)五〇〇円。キャベツ十キロ(八個)五〇円。白菜十五キロ二〇〇円。いま全国の野菜の産地で、こんな値段がごく普通になっています。ここから箱代、運賃、出荷手数料が引かれると、残るのは赤字だけ――事態はここまで深刻な暴落の一途をたどっています。

 ところがこれが都内のスーパーに並ぶと、五〜十倍に跳ね上がります。農家から一本九円で買い叩いたキュウリが、スーパーでは六・六倍の五本二九八円で並び、一個六円のキャベツは一九八円。どうみても異常です。

 「スーパーは百円から三十円に暴落しても、店頭では相変わらず高値で売っている。農家は自分で値段も決められず、買いたたかれるばかりで本当に腹立たしい」と茨城県西産直センターの小竹節代表理事は怒りをぶつけます。

畑に出てもタメ息ばかりが…

 「長年野菜を作ってきたが、こんな安さはかつてなかった。まだ畑に残っている野菜を出荷するかどうか迷っている」。山形県鶴岡市の野菜・水稲農家、佐々木久一さんは五月、春キャベツを二十ケース市場に出荷しましたが、一ケース(五玉入り)一〇〇円にしかなりませんでした。野菜の大産地、群馬県群馬町の住谷輝彦さんも「トラック一台タマネギをとっても、靴下一足買えない。養蚕からやっとの思いで切り換えたらこの暴落。隣のお婆さんは朝起きる張り合いがないと言いながら、畑に出ている」と言います。

 「農家はみんな、いつかは高くなると信じて作ってきたが、もう何をやってもダメだというあきらめが広がっている」――こう言うのは同じく群馬県の野菜農家根岸敏夫さん。「朝四時に起きて収穫しても、キャベツ十キロ(八個)五十円にしかならなかった」と深刻です。

トマトは三倍近い超激増に

 暴落の原因について、一部マスコミでは「天候が良くて入荷量が増えたから」と報じています。しかし最も増えているのは輸入です。とくに今年に入ってからは、昨年と比べてトマト(ミニトマト含む)が二・七六倍、タマネギが二倍を超え、、里芋、サツマイモ、ナス、ピーマン、ネギが約一・五倍とさらに加速して急増しています。大商社が国内生産の過不足とは関係なく、恒常的に輸入することが、価格暴落の一番の原因であることは明らかです。

輸入野菜はこんなに増えている
2000年1月〜4月の輸入状況
 
 

2000年輸入量
(トン)

1999年輸入量
(トン)
増加率(倍)
99年/92年
増加率
トマト
6,482
2,349
2.76
1087倍
タマネギ

16,621

58,043
2.01
6.36倍
里 芋
10,321
6,149
1.68
5.58倍
ナ ス
1,012
665
1.52
5.72倍
ピーマン
4,166
2,815
1.48
2236倍
ゴボウ
22,453
15,974
1.41
1.78倍
レタス
1,537
1,091
1.41
2.61倍
冷凍ゴボウ
1,443
947
1.52
 
塩蔵キュウリ
69,310
18,822
3.68
 

 この洪水のような輸入を止め、国内生産を守ることは、政府のハラ一つで十分可能です。

 WTO「セーフガード(緊急輸入制限)協定」では、輸入の増加が「国内生産に重大な影響を与え、または与える恐れのある場合」は「特定の産品の輸入に対する緊急措置(輸入制限と関税の引き上げ)」をとる権利を各国に与えています。実際に、ガット時代にはアメリカ、ECなど各国が百四十七回も発動。WTO協定以後もアメリカ、韓国、チリなどが続々と発動しています(詳しくは三面)

総選挙で断固審判を下そう

 政府の判断ひとつで輸入数量を制限したり、関税を引き上げたりできる、国際的に認められた権利があるのに、日本の自民党政府は一度もセーフガードを発動したことがありません。

 六月七日に行われた農民連と農水省との交渉でも、農水省は「タマネギは去年北海道が不足だったので輸入が増えた。トマトはミニトマトが中心で普通のトマトには影響はない」とまるで輸入野菜の“応援団”。さらに「コストが下がれば国際競争力がつく」などと答え、「調査中です」と繰り返すばかりです。

 安いのは野菜だけではありません。交渉では「米価も生産費を下回っているのに、義務でもないミニマム・アクセス米の輸入はおかしい」との声にも、「米価下落は、豊作で在庫が余っているから」と返答。

 セーフガードの「権利」も行使せず、ミニマム・アクセス米をせっせと輸入する「滅私奉公」自公保政権。総選挙ではこんな逆立ち政府にバッサリ評(票)価を下し、真に農業と食料を守る政府に取り替えようではありませんか。

(新聞「農民」2000.6.19付)
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2000年6月

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