大スーパーの店頭では高値で売られている…野菜 異常な安値に悲鳴暴落の元凶 野放し輸入にストップを「何を作っても安い。もうがっかりだ」――今、野菜農家は尋常ではない価格暴落に見舞われています。今年五月の市場価格は過去十年間で最安値を記録。一方で野菜の輸入は激増しています。「このままでは農業が続けられない。政府はセーフガードを発動して輸入を制限してほしい」――日本全国で農家の悲痛な叫びがわき起こっています。
一個6円のキャベツが198円もトマト一キロ(四〜六個)一〇〇円。キュウリ五キロ(五十五本)五〇〇円。キャベツ十キロ(八個)五〇円。白菜十五キロ二〇〇円。いま全国の野菜の産地で、こんな値段がごく普通になっています。ここから箱代、運賃、出荷手数料が引かれると、残るのは赤字だけ――事態はここまで深刻な暴落の一途をたどっています。ところがこれが都内のスーパーに並ぶと、五〜十倍に跳ね上がります。農家から一本九円で買い叩いたキュウリが、スーパーでは六・六倍の五本二九八円で並び、一個六円のキャベツは一九八円。どうみても異常です。 「スーパーは百円から三十円に暴落しても、店頭では相変わらず高値で売っている。農家は自分で値段も決められず、買いたたかれるばかりで本当に腹立たしい」と茨城県西産直センターの小竹節代表理事は怒りをぶつけます。
畑に出てもタメ息ばかりが…「長年野菜を作ってきたが、こんな安さはかつてなかった。まだ畑に残っている野菜を出荷するかどうか迷っている」。山形県鶴岡市の野菜・水稲農家、佐々木久一さんは五月、春キャベツを二十ケース市場に出荷しましたが、一ケース(五玉入り)一〇〇円にしかなりませんでした。野菜の大産地、群馬県群馬町の住谷輝彦さんも「トラック一台タマネギをとっても、靴下一足買えない。養蚕からやっとの思いで切り換えたらこの暴落。隣のお婆さんは朝起きる張り合いがないと言いながら、畑に出ている」と言います。「農家はみんな、いつかは高くなると信じて作ってきたが、もう何をやってもダメだというあきらめが広がっている」――こう言うのは同じく群馬県の野菜農家根岸敏夫さん。「朝四時に起きて収穫しても、キャベツ十キロ(八個)五十円にしかならなかった」と深刻です。
トマトは三倍近い超激増に暴落の原因について、一部マスコミでは「天候が良くて入荷量が増えたから」と報じています。しかし最も増えているのは輸入です。とくに今年に入ってからは、昨年と比べてトマト(ミニトマト含む)が二・七六倍、タマネギが二倍を超え、、里芋、サツマイモ、ナス、ピーマン、ネギが約一・五倍とさらに加速して急増しています。大商社が国内生産の過不足とは関係なく、恒常的に輸入することが、価格暴落の一番の原因であることは明らかです。
この洪水のような輸入を止め、国内生産を守ることは、政府のハラ一つで十分可能です。 WTO「セーフガード(緊急輸入制限)協定」では、輸入の増加が「国内生産に重大な影響を与え、または与える恐れのある場合」は「特定の産品の輸入に対する緊急措置(輸入制限と関税の引き上げ)」をとる権利を各国に与えています。実際に、ガット時代にはアメリカ、ECなど各国が百四十七回も発動。WTO協定以後もアメリカ、韓国、チリなどが続々と発動しています(詳しくは三面)。
総選挙で断固審判を下そう政府の判断ひとつで輸入数量を制限したり、関税を引き上げたりできる、国際的に認められた権利があるのに、日本の自民党政府は一度もセーフガードを発動したことがありません。六月七日に行われた農民連と農水省との交渉でも、農水省は「タマネギは去年北海道が不足だったので輸入が増えた。トマトはミニトマトが中心で普通のトマトには影響はない」とまるで輸入野菜の“応援団”。さらに「コストが下がれば国際競争力がつく」などと答え、「調査中です」と繰り返すばかりです。 安いのは野菜だけではありません。交渉では「米価も生産費を下回っているのに、義務でもないミニマム・アクセス米の輸入はおかしい」との声にも、「米価下落は、豊作で在庫が余っているから」と返答。 セーフガードの「権利」も行使せず、ミニマム・アクセス米をせっせと輸入する「滅私奉公」自公保政権。総選挙ではこんな逆立ち政府にバッサリ評(票)価を下し、真に農業と食料を守る政府に取り替えようではありませんか。
(新聞「農民」2000.6.19付)
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[2000年6月]
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