「農民」記事データベース20000522-449-02

農道空港

白バイの練習場に

農業予算のムダ使いの“標本”


 野っ原に広がる幅二十五メートル、長さ八百メートルのコンクリート。北海道余市町の海を一望できる高台に、山を削って造られた農道空港には、二十二億円の農業予算が使われました。ところが、この「農道空港」を利用するのは、ラジコン飛行機や警察のオートバイ、災害救急ヘリなど、もっぱら農業以外の目的。

 役場に問い合わせると、昨年度の利用日数百七十二日のうち、農産物を積んだ飛行機が飛んだのはわずか七回(四%)。それもすべて町が実績作りのために採算度外視で、イベント出品物の一部(大部分の荷はトラックで運ぶ)を載せて飛ばしたもの。農家自らの利用は「開港以来一度もない」といいます。町は、維持管理費を含めて五百四十万円の予算を計上していますが、利用料収入は三十四万円。

 こんな農業予算のムダ使いの農道空港が、北海道に四カ所(余市町、新得町、美唄市、北見市)、都府県で四カ所(福島・福島市、岐阜・丹生川村、岡山・笠岡市、大分・大野町)も作られました。総事業費は合計で百十一億円(途中で中止した島根・飯石空港含む)。

 農業予算のちょうど半分、一兆七千億円を公共事業に注ぎ込む農水省は、建設省、運輸省とともに「公共事業御三家」です。一方、農産物の価格保障関係費は予算の八・三%。その「逆立ちぶり」は、農業予算に占める公共事業比率が一・四%のフランス、同じく五%のドイツと比べると明らかです。(4面グラフ参照)

 農産物の価格が暴落、低迷するなかで、「ムダな公共事業を削って、農産物の価格保障にまわせ」「事業費を低く抑えて、農家負担を軽減して」――これが農家の声。ところが「一度、走り出したら止まらない」と言われる公共事業。ここに巣食っているのは、国民の税金を食い荒らしているゼネコンと、そこから巨額の政治献金を受け取る政治家、そしてその間隙で甘い汁を吸う悪徳官僚です。

(4〜5面に続く)

(新聞「農民」2000.5.15・22付)
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2000年5月

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