「農民」記事データベース20000522-449-10

公共事業費

こんなにあるムダ使い

農産物価格保障に回せ!


構造的に談合繰り返す北海道の農業土木事業

 北海道庁は、所管の農業土木事業について、公正取引委員会の立ち入り調査を受けてはじめて、「長年にわたり組織的かつ構造的に受注調整(談合)が行われていた」(「入札調査委員会」報告書)ことを認めました。業者ごとに発注額をあらかじめ決め、工事を受注させる業者名、予定価格を入札前に知らせるというもの。道庁農政部の技監が統括し、農政部長にも適宜報告されていたという「官製談合」です。

 また知事や道議などによる口利きも日常的に。読売新聞三月二十九日付によると、堀達也知事が紹介した建設会社は希望どおりの工事を請け負い、企業は知事の政治資金団体に五十万円の政治献金をしていました。


「全くムダ」――盛り上る反対運動

島根・中海干拓

 島根・八束町など。既投資額四百九十億円。

 中海干拓で最後に残った本庄工区(造成面積約千五百ヘクタール)の是非をめぐる議論が大詰めを迎えています。今年三月、農水省の検討委員会は、全面干拓、部分干拓、干拓中止の三案併記の報告書をまとめました。全面干拓は、五百二十億円の追加投資で二百五十戸を入植させるというもの。一農家あたりの総投資額は四億円にもなります。

 これに対し、すでに干拓が終わり入植した安来工区干拓組合長の倉敷幹雄さんは、「谷あいの水田は草ぼうぼうに荒らしながら、大規模な干拓地を作ればいいというのではだめです。本庄工区の干拓は必要ありません」と。農民、漁民、市民を巻き込んだ反対運動が盛り上っています。

島根県出身の日本共産党衆議院議員
中林よし子さん
 中海・宍道湖は、シジミをはじめ漁業資源の宝庫、地域住民の憩いの場です。農家も「必要ない」と言っている中海干拓事業で儲けているのはゼネコンだけ。請け負った企業には、農水省の官僚が天下り、自民党に多額の献金をしています。政・官・財の癒着、これが、全国のムダな公共事業に共通する元凶です。日本共産党は、住民と力を合わせ、予算の使い道を国民本位に変えていきます。


大手ゼネコンの談合でふくらむ事業費

吉野川可動堰

 住民がきっぱりと「ノー」の意志を示した吉野川可動堰建設問題。この吉野川を舞台に、かんがい事業をめぐって談合疑惑が発覚しました。「吉野川下流域農地防災事業」で九十七〜九十九年に発注された二十八件の工事が、予定価格の平均九八%という“談合価格”で落札されていたもの。「まともな入札が行われていれば予定価格の八割程度が普通。最初から本命が決まっていたのではないか」と、日本共産党の緒方靖夫参院議員が国会で追求。

 そして今度の総選挙、ここ徳島一区では、自民党から元構造改善局次長の岡本芳郎氏が立候補。同氏は「公共事業費をどっさり取ってきて」などと利益誘導選挙を展開。同事業と関連が深い建設会社、コンサルタント会社が、資金集めパーティー券を七百五十万円以上も購入しています。


44億かけ空港アクセス林道

広島

 延長三・二キロ、総事業費四十四億円。二車線で幅十一メートル、きれいに舗装されている「ふるさと林道竹林寺線」。「一番の目的は広島空港への距離の短縮」と県林業振興課。住民の間では「利用者は少ない」との声があがっています。その一方、「林野のドン」と呼ばれる林野庁出身の松岡利勝・自民党衆院議員には、「全国治山林道政治連盟」などこの分野の政治団体から、九六〜九九年にパーティー券も含めて五千万円以上の献金がなされています。


諌早湾干拓事業で“ドブ池化”

長崎

 総事業費二千四百九十億円。湾奥部が堤防で締め切られて丸三年。“ドブ池”と化した調整池の水が漁場を汚染し深刻な漁業被害が起きています。漁民が漁船を繰り出しての抗議行動に。

 一方、堤防内の農地の造成工事(約千五百ヘクタール)は大幅に遅れ、事業完成は六年延期(二〇〇六年度)、総事業費も九九年度ですでに当初計画の一・八四倍に膨れあがっています。干拓地の農家への売却価格は一〇アールあたり約七十万円。「この価格で新しく土地を買ってまで農業をやる人がいるのか」との、県関係者の本音も聞こえてきます。


「五木の子守唄」のふるさとがダム底に沈められる

熊本

 「五木の子守歌」のふるさとをダム底に沈める川辺川ダム。ダム建設・かんがい事業には、土地改良法で受益者の八割以上の同意署名が必要ですが、なんと死者六十七人が署名したことになっていたり、ウソの説明をうけた、本人以外に署名させたなどの事実が次々に明かるみに。対象農家四千人弱のうち、二千人を超える農家が事業計画の見直しを求める裁判に立ち上がりました。「減反政策のもとで新たな農業用水は不要」という農家の声を聞くどころか、ウソとゴマカシで、あくまで事業を推進しようとする農水省のデタラメぶりが際立っています。

 川辺川に治水、灌漑、発電などの多目的ダム建設の計画を発表してから三十四年、当初三百五十億円だった総建設費は八倍近いに千六百五十億円にまで脹れ上がっています。

(詳しくは続報で)

(新聞「農民」2000.5.15・22付)
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2000年5月

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