農林物資の規格・品質表示「改正JAS法」4月施行で農業にどんな影響が…農民連常任委員 斉藤敏之さんに聞く四月一日から「農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律」(通称・改正JAS法)が施行されました。「国産の農産物がほしい」という圧倒的な声に押され、原産国表示をすべての農産物(米は、新食糧法との関係で一年保留)に広げることは評価できますが、反面、問題点も各方面から指摘されています。これが、国内農業に及ぼす影響や、運動するうえで重要なことなどを、農民連常任委員の斉藤敏之さんに聞きました。
ニセ「有機」輸入品が横行する恐れ「有機基準」決め方に無理がある「改正JAS法」の問題点を教えてくださいとくに農業をめぐって問題になるのが、「有機農産物の基準」です。アメリカやヨーロッパを念頭に決めたコーデックスの世界基準を、高温多湿の日本に一律に当てはめるのは、基本的に無理があります。さらに、その基準に合っているかどうかは民間の登録認証機関が行いますが、認証料は農家もち、認定されたもの以外は「有機農産物」の表示をしてはならないというのはとんでもないことです。
大半は「基準」にあてはまらないその基準に当てはまる農産物は、国内でどのくらい生産できますか?農水省が、三月六日に発表した「有機農産物の日本農林規格」によれば、「周辺から肥料、土壌改良資材又は農薬が飛来しないように明確に区分されること。また、水田にあってはその用水に、使用禁止資材の混入を防止するために必要な措置が講じられている」ほ場で、三年間、無農薬・無化学肥料を基本とする栽培をすることが基準です。 東京大田市場の東京青果個性化園芸室長は、「認定される有機農産物は、全生産量の〇・一%、よくて〇・五%」と言っています。これが、実態だと思います。 結局、今回の改正は、カッコ付き有機食品の輸入を増大させ、国内生産を縮小させることになり、これが真の狙いだと言っても過言ではないでしょう。
消費者が望む情報・表示を現場での動きはどうなっていますか?認証団体は、あまりにも基準をみたす農産物が少ないので、「準有機」「減農薬基準」なるもので、「スーパーや外食産業に売り込むから、是非うちの団体で認証を」という農家への働きかけを強めています。 消費者は、農林金融公庫の今年一月の調査によれば、有機農産物の表示がある場合、「価格に関係なく購入する」が一〇%、「あまり高くなければ購入する」が七五%です。また、米と野菜に原産国表示があれば、八割以上が国産を購入すると答えています。 この調査でもわかるように消費者は、日本のどこで、誰が、どんな思いで作っているかがわかる農産物を望んでいます。 農民連・産直協は、改正で必要となった表示(野菜や果物は、品名と都道府県名。米は、都道府県名・品種・産年・精米年月日・内容量)に加え、消費者が望む情報を伝える生産者カードと、農民連シールの添付を呼びかけています。
「多様な流通探究」方針学習を運動上大事なことは何でしょう有機農産物表示の枠内でどう対応するかでなく、「より安全でおいしい農産物をどう作るか」を基本に据えることです。農民連が新しく出した論文「農業と関連産業の危機にあたって、多様な流通を共同で探求しよう」(新聞「農民」四月十七日付)をよく学習し、もうけのための認証団体からの誘いに毅然とした対応をしましょう。 輸入農産物が激増するなか「作ることがたたかい」になっています。この方針を実践のなかでつかんで欲しいと思います。
(新聞「農民」2000.4.24付)
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[2000年4月]
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